勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

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    米中の貿易摩擦をめぐる交渉は、8月23~24日にわたりワシントンで開かれる。この会談にかける米中の姿勢に差がある。トランプ大統領は、「期待していない。交渉は長期になる」と発言する一方、中国側は「期待する」としている。この差は、米中貿易戦争における力関係の違いを示している。

     

    米国は、持久戦に持ち込めば有利と見ている。中国に進出している外資系企業は、高い関税を回避すべく中国を脱出するからだ。それによって、中国経済を弱体化に追い込めると見ている。

     

    先ず、トランプ大統領のインタビュー記事をみておきたい。

     

    『ロイター』(8月20日付)は、「トランプ氏、米中通商協議に多くは期待せず」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「トランプ米大統領は20日、ロイターとのインタビューで、今週ワシントンで行われる中国との通商協議で多くの進展が得られるとはみていないと述べた。大統領は、中国との貿易摩擦の解消に『期限はない』とし、『中国と同様に、私は長期的な視野を持っている』と述べた。その上で、中国の代表団はまもなく到着する予定だが、協議に『多くは期待していない』と語った。大統領は、対中貿易摩擦の解消には時間を要すると指摘。『中国は余りにも長い間、余りにも好調だった。中国はわがままになった』との見方を示した」

     

    トランプ氏の発言を要約すると次のようになる。

       中国との貿易摩擦の解消に「期限はない」。

       中国と同様に、私は長期的な視野を持っている。

       中国は余りにも長い間、余りにも好調だった。中国はわがままになった。

     

    上記の3点から浮かび上がるトランプ氏の「対中攻略法」は、米国が2008年のリーマンショック後、経済再建に没頭していたことへの反省がある。その間に、中国は南シナ海へ進出する。米国の技術窃取を好き勝手にやって、米国の国益を侵害する。国際秩序を中国流に塗り替える動きをみせている。これら全てをご破算にして、振り出しに戻させたい。トランプ氏は、こういう強い決意を秘めていると見るべきだろう。「米国第一」とは、米国覇権が揺るぎないものであることを宣言したと思われる。

     

    米中貿易戦争は、ビジネスだけの問題ではない。覇権がかかっている。それだけに、貿易赤字が減ったとか増えたとかいう問題の域を超えている。米国は、腰を据えて中国を追い詰める戦略に出るに違いない。後顧の憂いないように、中国経済の骨抜きを図るだろう。米国が、日本占領で見せたあの凄みの再現だ。米国の怖さはここにある。「ヤンキー魂」であろう。

     

    具体的には、中国経済の封じ込めである。日欧米の三極は、手を結んで共同市場をつくり中国を排除する。こうなると、中国は工業製品をつくっても売り先がない状態になろう。時間が経てば否が応でも、中国は国有企業中心の経済構造を捨てて、WTOルールに合わせた行動に従うだろう。それが、いつ実現するのか、誰にも分らない点が、長期持久戦の意味である。

     

    中国を封じ込めるとすれば、外資系企業は中国に進出する意味がなくなる。中国では、人件費が上昇し、電気代や地代が米国を上回っている。その上、外資系企業にまで共産党委員会が組織化されて、同居する異常な時代である。外資系企業が中国を捨てる時期は、今回の米中貿易戦争によって早まる。

     

    (2)「中国外務省の陸慷報道官は北京で開かれた定例会見でトランプ大統領の発言に関して質問され、中国は協議が『良い結果』に至ることを期待しているとコメント。『双方が静かに落ち着いて腰を下ろし、平等と同等、信頼に基づき、良い結果を出すことに専念するようわれわれは期待している』と語った」

     

    中国が、焦っていることは疑いない。株価や人民元相場の不安定さから見て、市場心理を落ち着かせなければならない。それには、米中が交渉しているという「事実」が必要なのだ。それにしても、中国の対応は随分とおとなしくなってきた。これまで、米国と対等だと力で見せたが、誰もそうは見ていない。自らの実力のほどを自覚して行動することが、事態の解決に必要である。

     

    米中貿易戦争は、生産基地としての中国の魅力を失わせている。25%もの関税をかけられたら、ほとんどの製品が競争力を失う。トランプ氏が、中国との貿易摩擦の解消に「期限はない」としている。25%の関税を長期にかければ、外資系企業は中国を脱出せざるを得まい。それが、中国経済を弱体化させる最大のテコだ。中国が、窮地に追い込まれれば、WTO規則の「完全遵守」宣言を出すかもしれない。そうなれば大団円だが、習氏の責任問題が発生する。習氏は、自らの首がかかっていることを知るべきだ。

     

     


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    中国がいかに大国風を吹かせているか。それを証明する話が、また出てきた。南太平洋の夢の国パラオが、中国との国交を拒否したことを理由に、中国人旅行客の渡航禁止命令を出したのだ。大国中国が、人口2万1000人の小国に対する仕打ちとして、度量を疑われる行動だ。中国がいくら美辞麗句を並べ、近隣諸国と融和に務め、中国式社会主義を目標にすると言い募っても、この「パラオ虐め」を見れば、全てウソであることがわかる。

     

    『朝鮮日報』(8月21日付)は、「中国、団体旅行禁止で小国パラオに外交圧力」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「昨年、『台湾と断交しろ』という中国の要求をきっぱりと拒否したことで注目を集めた太平洋の島国パラオが中国の報復に苦しんでいる。中国がパラオへの団体観光を禁止し、パラオを代表する産業である観光業が枯渇しているからだ」

     

    中国は、台湾の外交的孤立を進めている。8月21日、南米のエルサルバドルは台湾と断交し、中国と国交を結んだ。台湾外務省の声明では、エルサルバドルは、台湾に巨額の支援(港湾開発)を求めたが、採算性に問題があるとして断ったところ台湾と断交し、中国と国交を結んだ。明らかに、中国の札束外国の結果だ。

     

    パラオは、エルサルバドルのような道を選ばなかった。台湾との信義を守ったのだ。中国は、その報復としてパラオへの旅行禁止措置という仕打ちをしてきたもの。なんとも、えげつないことをやるものだ。こういう事例からみると、台湾断交の切り札は、全て「カネ」であろう。トンガ初め8ヶ国が、中国の「借金漬け」にされ後悔している。中国の甘言に乗ったら国を失う覚悟をすることだ。

     

    (2)「パラオの人口2万1000人の約6倍に当たる12万2000人の外国人観光客が押し寄せていた。そのパラオは最近、ホテルの客室やレストランに閑古鳥が鳴き、観光遊覧船が港に停泊したままとなっている。旅行会社の廃業も相次いでいる。観光客の半数近く(5万5000人)を占める中国人観光客が途絶えたからだ。台湾と外交関係を持つ1つであるパラオは昨年、中国に台湾との断交を迫られたが拒否した。中国はパラオを自国民が行くことができない『不法観光地』に指定することで報復した」

     

    パラオの1人当たり名目GDPは、1万7096ドル(2017年)、191ヶ国中47位である。中国は同8643ドル(2017年)、75位である。これか見ると、パラオの民度が上、とも言えそうだ。中国の行動は、このGDP尺度に現れている。

     

    パラオの大統領は毅然として、中国の圧迫に屈しない姿勢で、次のように語っている。

     

    トミー・レメンゲサウ大統領は、ロイターとのインタビューで、観光規制について中国から公式な通知は受けていないと説明。また、集団での観光は環境に被害をもたらしているとし、パラオはより多くを支出する観光客に焦点を合わせることで中国人観光客の減少に適応していると述べた。2017年には、観光名所のひとつだった塩水湖ジェリーフィッシュ・レイク(クラゲ湖)がクラゲの減少から閉鎖されたが、これも大勢の観光客が原因のひとつとされる」(『ロイター』8月21日付)。

     

    集団旅行客を迎えるよりも、パラオの自然環境を心から楽しんで貰える質の高い観光客を迎えたいという。世界のエコロジストが集える「最後の楽園」であって欲しい。同時に、自由と民主主義を守った土地として語り継がれることを望みたい。


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    マレーシアのマハティール首相が20日、北京での中国李首相との共同記者会見で意味深発言をした。「植民地主義の新たなバージョンがあるような状況は望ましくない」と言い切った。この「植民地主義」批判こそ、中国の「一帯一路」政策に向けられたものである。貧しい国へ多額の資金を貸し付けて債務漬けにする。返済不可能を承知で行なう中国の振る舞いは、かつての植民地主義とどこが違うのか。

     

    毛沢東はこの植民地主義に反対したが、現在の中国は臆面もなく植民地主義を実行している。マハティール首相の「新植民地批判」は、同席した李首相の胸にどれだけ響いただろうか。

     

    戦前の植民地経営では、宗主国が相当の利益を得られた。現在の中国は、「一帯一路」で資金を貸し付けても返済できない国が続出している。中国の政治的影響力を高める目的であるが、皮肉にも中国の経常収支黒字を減少させる要因になった。中国は、「一帯一路」に深入りして、自らの国力を消耗していることに気付くべきなのだ。

     

    『ブルームバーグ』(8月20日付)は、「中国訪問中のマレーシア首相、新植民地主義に警告発する」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「マレーシアのマハティール首相が北京での20日の記者会見で貿易に関して発したメッセージは、恐らく中国の李克強首相が予想していたものとは違った。李首相が貿易を巡る見解を尋ねた際、マハティール首相は公平である限りにおいて自由貿易を支持すると言明、各国が発展の異なる段階にあることを誰もが思い出す必要があると主張した」

     

    マハティール氏は、自由貿易の前提は公平であると言っている。中国は、「一帯一路」で不公平な行為をしていると示唆するのだ。

     

    (2)「マハティール首相は、『植民地主義の新たなバージョンがあるような状況は望ましくない。オープンで自由な貿易というだけでは、貧しい国々は豊かな国々と競争することができない』と述べ、『公平な貿易であることも必要だ。そうであれば私は李首相と共に自由貿易を支持する。これは世界全体が進むべき方向だと考えているからだ』と語った」

     

    中国が、自らの経済力の優越性を笠に着て、貧しい国に対して不公平な条件を押しつけている。マハティール首相が批判する点だ。「中国よ、謙虚になれ」。90歳を超えた老首相が、大国の首相を諭している。歴史的な記者会見であろう。


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    大豆は、中国の対米報復制裁で最大の「武器」とみられている。米国では、大豆の対中輸出が落ち込めばアイオワ州など、トランプ米大統領を支持する農業生産の盛んな州を直撃するためだ。米国の昨年の中国向け大豆輸出は120億ドル相当で、対中農産物輸出では最大の品目になっている。中国は世界で取引される大豆の約60%を輸入し、主に家畜飼料用の大豆ミールに加工している。

     

    この事実を見れば、中国が米国産大豆の関税を引上げれば、生産地であるトランプ氏支持基盤の農村を直撃することが分りきっている。そうなれば、さすがのトランプ氏も矛を収めるだろう。中国の狙いはこれで、米中貿易戦争にまで拡大しまいと見ていた節がある。というのも、例年10月~2月は季節の関係でブラジル産大豆が収穫できず、どうしても米国産に依存しなければならないからだ。秋になるまでに、米中関係の正常化を狙っていたのだろうが、米国が強気の対応に出てきた。不正貿易慣行の是正が行なわれなければ、矛を収めないという姿勢を貫いている。

     

    米政府は、大豆農家など中国の関税引き上げで受ける損害を財政で補助する態勢をとっている。農家の収入安定を目的に1933年に創設された商品金融公社(CCC)は、活動の資金として300億ドルもの資金を財務省から借りることができる。CCCを使えばトランプ政権は既存プログラムを活用することになり、議会の承認が必要なプログラムを新たに作らずに済む(『ウォール・ストリート・ジャーナル』4月12日付)。こういう経緯から、困るのは中国でないか。そういう見方ができるのだ。

     

    『日本経済新聞』(8月14日付電子版)は、「大豆巡る摩擦、米国より中国に不都合な事情」と題する記事を掲載した。

     

    (4)「中国は米産大豆の輸入減を補うため、ブラジル産などの輸入を増やしつつある。しかし、中国にとっては不都合な要因が既に顕在化している。まず、ブラジル産の現物を取引する際、シカゴ先物相場に加算するプレミアム(割増金)が上昇している点だ。シカゴ先物が過去2カ月ほど1ブッシェル9ドルを下回る水準で推移する一方、中国の需要増観測を映し、ブラジル産のプレミアムは7月中旬に前年同期の3倍近い1ブッシェル2.7ドルに達したもよう。南米産などの調達を増やそうとする中国には痛手だ」

     

    中国は、米国産大豆に自ら高い関税をかけたのでブラジル産大豆を買わざるを得なくなっている。自ら購入先を限定しているから、ブラジル産の現物を取引する際、シカゴ先物相場に加算するプレミアム(割増金)が上昇している。このプレミアムを払わなければ、ブラジル産大豆の購入ができないのだ。そのプレミアムは、7月中旬に前年同期の3倍近い1ブッシェル2.7ドルまで達したという。完全な売り方相場である。1ブッシェル9ドルを下回る相場に、このプレミアム分2.7ドルが加算される。30%の割増になる。中国は、自分で売った喧嘩だからどうにもならない。

     

    感情論を抜きにすれば、安い米国産大豆に25%の関税をかけて輸入した方が割安という珍現象が起こっている。意地の張り合いで始まった関税引き上げ合戦だが、大豆で一番儲けているのはブラジル農家である。

     

    (5)「大豆の輸入価格上昇が、中国の家畜飼料の大豆ミールに波及するリスクも大きい。中国人にとって豚肉は食卓に不可欠な食材。飼料が高騰すれば豚肉価格に波及し、国民の不満を招きかねない。豚肉そのものの輸入を増やせば飼料需要を抑えられるが、中国はその豚肉も制裁関税の対象としている」

     

    ブラジル産大豆の輸入には、プレミアムを支払うことになった。その影響は、中国の消費者が全て被ることになる。大豆を家畜飼料に使うから豚肉価格がその分、上乗せになるからだ。米中貿易戦争が直接、中国の食卓を直撃する。中国の家庭では豚肉が最大のご馳走である。それが、値上がりしたのでは政府批判に飛び火しよう。米国を困らせる積もりだった大豆関税引き上げが、中国を困らせるという「漫画」になったのだ。

     

    (6)「旺盛な需要を賄えるのかという不安もある。中国は世界の大豆輸入量の6割強を占める。同国の輸入元シェアで米国は4割弱を占め、最大のブラジル産と合わせると両国で8割強に達する。アルゼンチン、パラグアイといった国からの輸入で補うのは限界がある。市場関係者の間では、自ら切った輸入関税というカードがもたらす副作用に耐えられるのか――。市場関係者は緊張とともにその答えを見守っている」

     

    冒頭に指摘したように、ブラジルでも一年中、大豆が獲れる訳でない。端境期(はざかいき)がある。10月~2月までがその時期に当る。こうなると、どうしても米国産に依存せざるを得ない。どこかの「ダミー商社」を使って輸入するのだろうか。得意の「噓情報」で米国産がブラジル産に化けたら、世界中から笑い物にされるだろう。




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    パキスタンは、過剰債務を抱えて財政難に陥っている。IMF(国際通貨基金)から緊急融資を受ける話が出るほどの窮迫ぶりだ。ところが、中国から「待った」を掛けられているのでないかと報じられている。パキスタンがIMFに駆け込むと、中国は一帯一路がらみで融資した内容が公表されて困るから、とされている。金利、担保など、中国のえげつない高利貸しの実態が漏れるので、それを避けたいことが理由である。

     

    中国は、こういう不良債権をかなり抱えている。いずれも一帯一路の建設工事で貸し付けたものだ。問題は、貸付資金から利息を得られれば良いが、「利息の延滞」が山をなしている。このことから、中国の「担保狙いの融資」という乗っ取りが非難されている。

     

    こうしたあくどい高利貸しは、経常収支の黒字を減らしている。利息が入らないから「所得収支」が減って、経常収支黒字減少をもたらしている。

     

    中国の不調とは対照的に、日本とドイツの経常黒字は堅調である。

     

    『ロイター』(8月20日付)は、「ドイツ経常黒字、今年も世界最大となる見通し、2位は日本」と題する記事を掲載した。

     

    ドイツのIFO経済研究所は20日、同国の経常黒字が今年も世界最大規模になるとの見通しを示した。IFOは、2018年の独経常黒字は2990億ドルと、3年連続で世界最大になるとの推計を発表した。日本の経常黒字は2000億ドルと、ドイツに次いで大きな規模になる見通し」

     

    この記事では、中国に触れていないが、別のニュースソースは次のように報じた。

     

    「エコノミストは中国について、2018年通年で1000億ドル程度の経常黒字になるとの見方を変えていない。ただ、これだけの黒字を計上したとしても、国内総生産(GDP)に対する比率は1%弱で、1995年以来の低水準となる。2019年には0.5%へ落ち込むとモルガン・スタンレーやスタンダード・チャータードなどは予想している」(『ウォール・ストリート・ジャーナル』7月31日付)

     

    ここで、前記の記事を元に、日中独3ヶ国の3年間にわたる経常黒字推移を示したい。単位は億ドル

     

       2018年     2017年     2016年 

    1位 ドイツ 2990  ドイツ 2965  ドイツ 2889

    2位 日本  2000  日本  1954  中国  1963

    3位 中国  1000  中国  1648  日本  1872

     

    前記のWSJによれば、中国は2018年の対GDPの経常黒字比率が1%と見ている。19年には、0.5%に低下するとしている。今年が1000億ドルの経常黒字とすれば、来年は300~400億ドルまで低下するのであろう。

     

    中国の経常黒字がここまで急減するとなれば、相当に深刻な事態と見るほかない。対外的な中国経済の「稼得力」は問題含みという判定が下されよう。習氏は苦しい立場に追い込まれる。


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