勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

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    米国の国務長官と国防長官は3月17日、訪日に続いて訪韓することが決まった。これに伴い米韓の外務・国防の「2プラス2」会議が開催される。米韓では5年ぶりの会議になる。この席で米国は、韓国に対して明確に米同盟国側へ付くよう求めると見られる。韓国の「二股外交」の是非が、最終的に問われる局面だ。

     

    『朝鮮日報』(3月8日付)は、「韓米『2プラス2』会議が5年ぶりに復活」と題する記事を掲載した。

     

    韓国と米国の外相・国防相が、同時に会ういわゆる「2プラス2会議」は5年ぶりに復活しそうだ。米中の覇権争いが激しくなる中、中国に対抗する韓国、米国、日本の三角協力復元を目指す米国の本格的な介入と圧力が始まったとも考えられる。文在寅(ムン・ジェイン)大統領としては同盟関係復活の大義名分を得られるが、今や米中間「綱引き」の段階は過ぎ去り、「どちら側に立つか」の圧力を本格的に受け始めた形だ。

     


    (1)「米国のトニー・ブリンケン国務長官とロイド・オースチン国防長官は今月15~17日の日程で訪日し、その後17日から12日の日程で韓国にやって来る可能性が高いことが分かった。来韓が実現した場合、韓国外交部(省に相当、以下同じ)の鄭義溶(チョン・ウィヨン)長官と国防部の徐旭(ソ・ウク)長官との「2プラス2会議」が実現する見通しだ。ある外交筋は「日本と格を合わせた形の来韓に向け調整が進んでいる」と伝えた」

     

    米韓の「2プラス2」会議は、日本と格を合せることも理由という。積極的に開催しようという雰囲気ではないのだろう。ここら当たりに、韓国外交の迷走ぶりが窺える。国際情勢は、米中対立の長期化という大きな転換点に立っている。韓国には、その認識が希薄である。

     

    (2)「米国は40以上の国と軍事同盟を締結しているが、その中で2プラス2会議を開催したのはごく少数だ。トランプ前政権が同盟を軽視したときもオーストラリアや日本などとは2プラス2会議を引き続き開催した。しかし韓米による2プラス2会議は2016年10月にワシントンで開催されたのが最後で、文在寅政権発足後は一度も開催されていない。その理由について外交関係者の間では「文在寅政権が進める北朝鮮の核問題対応策や韓日関係悪化に対する米国の不満が原因」との見方が出ている」

     

    文政権になって「2プラス2」会議は開かれていないのは、米韓関係の弛緩を意味している。文氏は、よくよく国際情勢の認識がない御仁と見られる。

     


    (3)「
    今年1月に発足したバイデン政権の外交と国防のトップが、初の海外訪問先として日本と韓国を選択し、2プラス2会議の形を取る背景には、中国との本格的な対決を念頭に置いた韓米日三角協力の復活を最優先の課題と判断したためとみられる。米国務省はバイデン政権発足後、メディアを通じて複数回にわたり「韓国と日本の関係以上に重要なものはない」と訴えてきた。2015年に韓日両国に圧力を加え、慰安婦合意を引き出した人物も当時国務副長官を務めていたブリンケン長官だったという

     

    米国で、日韓慰安婦合意の仲介役に立ったのは、ブリンケン氏だったという。韓国は、日韓慰安婦合意を骨抜きにした手前、なんとも罰の悪い思いであろう。何と言い訳するのか、そちらの方も興味深い。

     

    (4)「米中間で「綱引き外交」を進めてきた韓国政府としては、同盟復元は喜ばしいことだが、米国による対中圧力に本格的に参加を求められた場合は困惑するしかない。しかも、今回の2プラス2会議の結果が中国を刺激するものだった場合、年内に予想される中国の習近平・国家主席来韓の大きな障害になる恐れもある。北朝鮮の核問題についてはバイデン政権による対北朝鮮政策の検討作業が今も進行中のため、具体的な内容よりも原則的な立場を強調する次元で終わる可能性が高い」

     

    文政権は、習近平氏と金正恩氏の訪韓が最大の外交イベントと考えるほど偏っている。米韓同盟というしっかりした絆がありながら、その関係を深めずに米国と対立する国との関係深化を図るという「裏切り外交」を意図している。これは、韓国の国益を損ねるものだ。余にも八方美人的な振舞である。これでは、日米が韓国を信用しないはずだ。

     

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    かつて中国は、日本が防衛費を増やすとすぐにクレームをつけてきた国である。防衛費のGNP1%の枠は、中国のクレームによる副産物である。その中国は現在、日本の防衛費の4倍を支出して涼しい顔である。他国にイチャモンをつけるが、自国には優しい国なのだ。

     

    防衛費は、何も生産しないから中国の財政負担は大きくなるばかりだ。中国経済の先行きが怪しくなっている時に、空母を3隻体制にするなど「金食い虫」が増えている。一方で、人口高齢化に伴う財政負担が急増する。この点が、米国経済と根本的に異なる。中国の防衛費負担増が、中国経済に重荷となる時期は目前に来ている。

     


    『日本経済新聞』(3月6日付)は、「中国、国防費6.8%増で軍拡堅持」と題する記事を掲載した。

     

    中国の軍拡の勢いが止まらない。中国国務院(政府)の5日の発表によると、2021年の国防費予算(中央政府分)は前年比6.%増の1兆3553億元(約22兆6000億円)だった。伸び率は18年以来、3年ぶりに拡大した。インドやフィリピンなど周辺国や米国との緊張が高まる恐れがある。

     

    (1)「国防費の伸び率は20年(6.%)を上回った。日本円に換算すると前年より約1兆5000億円の増額になる。日本の防衛予算の4倍ある。国防費は名目値のため、物価変動を考慮した実質で示す経済成長率の目標とは単純に比較できないものの、成長率目標(%以上)を上回った。軍事費拡大の一つの背景に海軍の増強がある。米海軍は20年に「米中が保有する艦船数の差がますます広がる」との試算を公表した。中国人民解放軍の艦船数は20年の360隻から30年に420隻になる一方、米国は約300隻から34年までに355隻に増えるにとどまる」

     

    G7のGDPが、2025年に世界で占めるシェアは一説によると4割といわれる。中国のGDPシェアはせいぜい2割だ。防衛費は、相対的にどちらが重いか。無論、中国である。G7は米国の同盟国であるので、共同防衛である。片や、中国はロシアや北朝鮮、イランの協力を仰げない立場だ。

     

    旧ソ連邦が1991年に崩壊した。中国が、米国に接近して裏切った結果である。百戦錬磨のプーチンは、土壇場で米国へ接近し中国を裏切る可能性が大である。敵討ち打ちである。こういう複雑な構造を考えると、中国は最後に孤立する気配が濃厚だ。中国は米国相手の戦いにおいて、勝ち目がないことに気付くべきだ。

     

    習氏のことだ。自己の永久国家主席を守るために、あえて米国と事を構えているのかも知れない。中国国内を引締める手段として米中対立を「演出」して見せている。そういう可能性も否定できないのだ。

     

    (2)「習指導部は、ウクライナから購入し改修した空母「遼寧」や初の国産空母「山東」に続き、上海で建造中の第3の空母を年内に進水させる可能性がある。空母が3隻になれば、実戦配備、整備、訓練に1隻ずつ割り振ることができ、東・南シナ海に常時展開しやすくなる。遼寧や山東はすでに台湾海峡周辺の軍事訓練に参加している」

     

    中国の空母と言っても、実戦経験ゼロの海軍が動かしているのだ。艦載機が、着艦する上で最大のリスクは死亡事故という。米海軍は、これまで1000件以上の貴重な体験を積み重ねており、世界最強海軍となった。その点、中国はまだまだヨチヨチ歩き。実戦でどれだけ有効か、経験値がゼロの海軍なのだ。いくら空母が3隻になっても、実戦能力が不明という中国海軍が、米国を相手に戦うのは余にも無謀と言うほかない。調子に乗ると大火傷は必至である。

     


    (3)「
    中国国防省は1日、ホームページで尖閣諸島周辺への領海侵入を「常態化する」と公表した。日本政府関係者によると、領海侵入をくり返す中国海警局の中国公船の背後には不測の事態に備えて中国海軍が常時控える」

     

    中国は、海警船を使って尖閣諸島を侵略しようと狙っている。中国海軍は、海警船にトラブルを起こさせ、その機に乗じようという浅ましい戦術を立てているのだ。日本は、こういう国の国家主席を国賓として招くことは、感情的にも割り切れない話である。

     

    (4)「もう一つの背景が士気向上を狙った軍人の待遇改善だ。複数の軍関係者によると、今回の国防費には新疆ウイグル自治区やチベット自治区など辺境地域を守る軍人の給料を4割上げ、ほかの地域の軍人も2割増やす措置が盛り込まれた。チベットのインド国境付近では20年、インド軍との衝突で中国側にも死傷者が出た。解放軍は20年末に6年がかりの組織改革を終えた。中国の軍事専門家は「習氏が主導した改革が完成し、軍を鼓舞する狙いがある」と解説する」

     

    兵士の給与を大幅に引上げるのは、兵士の謀反を恐れていることが背景にある。孫文が、1911年の辛亥革命を起こした際、兵士を買収して反乱させた事実があるからだ。今回、新疆ウイグル自治区やチベット自治区など辺境地域の兵士が、現地で弾圧することに疑念をもって反乱を起こさせない予防措置であろう。金銭で兵士の反乱を防ぐ方法は、孫文の逆を行くものである。現地の雰囲気は、ここまで悪化しているのだ。「共産革命」と言っても盤石ではなさそうである。

     

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    韓国は、日本が海外で注目されることにジェラシイを感じている。未だに日本を「戦犯国」と言って憚らない国である。韓国の日本に対する劣等感が、どれだけ強いか良く表わしている。気の毒にも思うが、つける薬はない。この際、大いに焼き餅を焼いて貰い、外交とは何かという重要なことを学んで欲しいものだ。日本が、米英からどれだけ高い評価を受けているか、韓国メディアが認めている。

     

    『中央日報』(3月7日付)は、「『ウイグル集団レイプ』中国叩く英国、日本と近づく理由」と題する記事を掲載した。

     

    1902年、2つの島国が手を握りました。産業革命の先頭走者で強大な海軍力を基に全世界を令した大英帝国、そして英国のように帝国になることを夢見た日本が同盟を結んだのです。20世紀の北東アジアの地図を揺るがし、韓半島(朝鮮半島)の運命にも決定的な影響を及ぼした日英同盟です。



    (1)「この両国の最近の動きが尋常でありません。米国を輪に密着する姿はあたかも120年前の状況が再現されているようだという話も出ています。20世紀初めに覇権国の英国が日本と手を握ったのは、ロシアの膨張を警戒してのものでした。最近の密着もやはり覇権国の米国が中国の崛起を防ぐために同盟間の結束を強化する過程で起きています」

     

    日本が、英米と外交的に協調するのは、世界情勢の変化によるものだ。世界覇権へ挑戦する国が新たに現れれば、主義主張を同じくする国が同盟を結んで対抗するのは当然のことである。日本が、そういう歴史の流れに沿って動いているだけである。

     

    (2)「日米同盟は、第2次大戦以降続いた北東アジアの地政学の定数でした。ここに早くに日本との同盟関係を清算した英国まで、どんどん日本に視線を転じている姿は注目されます。2015年の英国のEU離脱決定前から英国は日本をアジアで最も近い安保協力国と指し示しておりその後だんだん密着してきました」

     

    日英が友好関係を結んでいるのは、日本の皇室と英国王室の関係、日本の政治制度が議員内閣制で英国から導入したという関係もある。皇室と王室が長い流れで結ばれていることが、日英関係を落ち着かせるのであろう。

     


    (3)「先月初めに英国と日本は外務・防衛閣僚会合(2+2)を開き、今年インド太平洋地域で日米英3カ国合同演習をすることにしました。英国はこの演習に向け2017年に建造した最新鋭空母で英国海軍最大級艦艇の「クイーンエリザベス」(全長280メートル・満載トン数6万5000トン)を日本近海に長期派遣することにしました」

     

    英国は、EUを離脱して成長発展力のあるアジアを基盤にして新たな貿易関係を発展させる決意だ。それが、TPP(環太平洋経済連携協定)への加盟である。年内には加盟が実現する見込みである。こういう背景の下に、安全保障でも日英一体化を目指している。英国は、かつてのアジア植民地を失ったものの、TPPと安全保障で再飛躍を目指している。

     

    (4)「英国の空母が北東アジア近海で長期間任務を遂行するのは異例です。これまでこの地域には米国と周辺国以外の国の空母が長期間とどまったことがないためです。国立外交院のチョン・ヘウォン教授は「四方を海に囲まれた英国がアジアに目を向ける時に日本と密着しなければならない理由の中には、日本の地政学的な位置、すなわち空母を長期間派遣する時に停泊と支援が容易だという要素もある」と説明しました。

    英国が、アジアとりわけ日本と密接な関係を築くことは、日英両国のプラスである。英国は欧州で、独仏と並ぶ三大国家である。NATO(北大西洋条約機構)では、大きな発言権を持っている。将来、「アジア版NATO」を結成する場合、大きな役割を果たしてくれるという期待が日本側にある。日本は、先の先まで読んでいる。

     


    (5)「興味深いのは、こうした様相がいわゆる「アングロスフィア」復活の動きとともに進んでいるということです。アングロスフィアは英語を使い似た文化的価値観を共有する圏域を称します。英国、米国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドなどです。情報機密を共有するいわゆる「ファイブ・アイズ」を構成する国々です。これらの国をひとつにまとめさせる契機は中国の浮上です。覇権国の米国が新興覇権を夢見る中国を牽制するのは別の見方をすれば当然に見えます。ここに英国もEU離脱後にアジアに目を向け対中牽制の先鋒に乗り出しています」

     

    日本が、「アングロスフィア」に迎えられようとしている。この背景には、英国が日本を推薦していることが挙げられる。日英は、既述のとおり皇室と議員内閣制の二点で共通項を持っている。皇室尊重では保守的だが、議院内閣制では民意を即刻反映する政治システムである。伝統的だが、新しいことに即応するというダイナミズムを持つ点で、日英は似通った面があるのだろう。

     

    (6)「アングロスフィア諸国が約束でもしたかのように日本と密着しています。北東アジアで中国と対立点を立てられる国であるためです。あたかも120年前に英国がロシアを牽制する馬を探している時に日本がすでにロシアとの戦争を準備していたという状況を連想させます。国立外交院のキム・ハングォン教授は「中国に積極的に対抗してきた前歴も反中戦線を構築しようとする米国と英国に『信頼感』を与える要因だろう」と評価しました」

     

    日本には、「脱亜入欧」という背伸びをした時期もある。これは、日本が開国に当たり欧米から不利な条件で条約を押し付けられたことへの反発である。欧米と同じ土俵に立つべく採用したのが、「脱亜入欧」なのだ。以来、これが日本近代化のバックボーンになった。「アングロスフィア諸国」と、同じ価値観を持つようになった理由である。明治維新以来、実に153年の歳月を経て、「アングロスフィア諸国」の仲間として認められるようになった。感無量である。



    (7)「これらの国の結束はまず「情報同盟」として現れる可能性があります。「ファイブ・アイズ」に日本を参加させるべきという声が出ているためです。昨年12月に米戦略国際問題研究所(CSIS)は日本が含まれた「シックス・アイズ」の構築に向けワシントンと東京が真剣に努力を傾けるべき時だと提言する報告書を発表しました。別の見方をすれば、「血縁同盟」と見ることもできるアングロサクソン族を基盤とする国の会合に日本が公式参加する可能性を排除することはできない雰囲気ということでしょう」

     

    日本が、「血縁同盟」と見られるアングロサクソン族を基盤とする「ファイブ・アイズ」に、公式参加する可能性が高まっていることは、極めて名誉なことである。日本の安全保障の基盤がそれだけ固まっていることを証明している。この信頼をインド太平洋戦略に生かしていくべきだろう。

     

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    経済回復力は米英下回る

    中期見通し立たない理由

    厄介者の国営企業が主役

    働き手が減る経済の悲劇

     

    中国は、3月5日に全国人民代表大会(全人代、国会に相当)を開幕した。李首相の報告した政府活動報告は、今後の中国経済を占う意味で3つの点において、興味深いものだった。

     

    第一は、2021年の経済成長率目標が事前予想の「8%以上」を下回って、「6%以上」に止めたこと。

    第二は、第14次五カ年計画(2021~25年)の経済成長率目標を掲げなかったこと。

    第三は、2021~35年の長期目標では「中等先進国並みにする」(1人当たり名目GDP)こと。

     

    李首相は、政府活動報告で「経済回復の基盤はいまだ固まっていない」と述べ、雇用回復の遅れや個人消費の伸び悩みを課題に挙げた。これまで、コロナ禍からいち早く回復したと宣伝してきたことを否定する内容だ。

     


    経済回復力は米英下回る

    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(3月3日付)は、すでに中国経済の回復が遅れていることを報じていた。ワクチン接種が、全国民に行き渡っていないことも理由の一つに挙げている。その結果、今年のGDP成長率は米英の後塵を拝するというものだ。米英は、ワクチン接種が順調に進んでいるので、経済活動が早まるとしている。

     

       四半期GDPの増減率(前年同期比:%)

       21年1Q  2Q   3Q  4Q

    中国   17.3  6.6  5.4  5.

    英国 (-)6.7 20.1  7.0  7.

    米国        13.0  7.3  7.

    (ゴールドマン・サックス調査)

     

    中国の経済成長率予測が、21年に「6%以上」と控え目にしたのは、コロナの後遺症だけではない。最大の問題は、不動産バブルの崩壊を懸念していることだ。今年1月1日、住宅ローンと不動産企業への融資は、抑制状態に入っている。昨年の金融緩和で、潤沢な資金が不動産に流れ込んでいるためだ。不動産バブルがさらに膨らめば、「バブル崩壊」不可避となる。それを恐れたのだ。

     

    不動産バブルで利益を得ているのは、不動産企業だけでない。土地国有制を利用して、地方政府が「土地売却益」で潤っていることだ。昨年の地方政府財政では、歳入の5割が「土地売却益」であった。それゆえ、中央政府が高目の経済成長率目標を掲げれば、地方政府がこれに合わせて売却地価を引上げ、住宅価格を押し上げるという悪循環に陥るのだ。このように、中国経済は不動産バブルが支える最悪事態に嵌り込んでいる。

     


    地方政府が、資金調達のために設立した投資会社による債務不履行(デフォルト)は、国内市場に「連鎖反応」をもたらすと警告されているほどだ。これに加えて、さらなる高い経済成長目標を掲げるのは、デフォルトを拡大する事態となろう。

     

    世界の調査機関は、こういう実態を知らないで中国のGDP成長率を単純に将来へ引き延ばした予測をしている。中国が2028年に、GDPで米国を抜くという予測は、不動産バブルの実態を無視した、「数字遊び」としか言いようがない。

     

    中期見通し立たない理由

    中国が、GDPで2028年に米国を抜くという予測に信憑性があるとすれば、第14次五カ年計画(2021~25年)の経済成長率目標を掲げて当然であろう。中国政府は、今回それができないほど先行き不透明感に襲われているに違いない。

     

    1)不動産バブルの収束見通しが立たない。

    2) 米中対立の長期化で、中国が受け身に立たされている。

     

    1)は、中国不動産業界の雄として知られる中国恒大集団が今や、資金調達に窮していることである。そこで考え出した妙手は、子会社に時代の寵児であるEV(電気自動車)事業を始めるという触れ込みで、資金調達させたことである。その子会社の主要資金運用が、不動産でありEVでないという、笑うに笑えない事態に陥っている。創業者の許家印は、2019年に世界3位の富豪にランクされたほど。中国不動産事業が、いかに高収益であったかを物語っている。これも全て、不動産バルルのもたらした「飛沫」である。

    2)は、この米中対立の長期化がこの先どれだけ続くか分からない点である。米国は、同盟国を巻き込んで「民主主義体制の護持」という価値観擁護を前面に立てている。中国の価値観は、共産主義で人権弾圧という非人間的な位置づけになるので、米同盟国が結束して中国を封じ込める大義名分を与えてしまった。これからは、中国にとって極めて不利な「戦い」を強いられることになる。

     

    中国の仲間といえば、ロシア、北朝鮮、イランである。こういう相手国から支援を受けられる保証はゼロである。米同盟国が、中国を技術封鎖した上に貿易面においてデカップリング(分断)で共同歩調を取られたら、中国はどう対応するのか。「一帯一路」で仲間に入れた新興国も、中国の経済支援を当てにした国々である。中東欧17ヶ国のうち、すでに6ヶ国は反旗を翻している。「以下同文」である。「金の切れ目が縁の切れ目」で、中国の元を去って行く運命だ。(つづく)

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    韓国人ジャーナリストで、日本の歴史と現状を細大漏らさず研究しているのは、『朝鮮日報』副編集局長・鮮于鉦(ソンウ・ジョン)氏である。日本特派員を経験し豊かな学殖に裏付けられたコラムは秀逸である。私は、鮮氏の書くコラムにいつも最大の関心を持って読んできたが今回、取り挙げるテーマも素晴らしい。

     

    『朝鮮日報』(3月7日付)は、「外交で滅んだ国の外交行動」と題するコラムを掲載した。筆者は、前記の鮮于鉦氏である。

     

    (1)「日本で征韓論問題が起きたのは1873年のことだ。韓国史の教科書は、日本がこのとき韓国併呑まで目標を定めて武力を通して一直線に押していったかのように記述する。結果は正しいが、内容は違う。征韓論問題は内戦(西南戦争)まで経る中で、武士の旧勢力の退場と外交を重視する新勢力の台頭に帰結した。日本の国際化に強い動力を提供した事件だ。韓国の記述は、日本の新勢力がその後、巨大な国際外交の舞台においてどのような手法で韓国を飲み込んでいったかを教えることができない」

     

    この場面は、NHKの大河ドラマでも描かれている。西郷隆盛は、朝鮮半島の日本人を保護すべく、外交交渉のために朝鮮へ単身でも行くと主張するシーンである。韓国では、西郷を征韓論の頭目と誤解している。このパラグラフは、これを指摘しているのだ。

     


    (2)「日露戦争の初期、フランス紙『ル・プチ・パリジャン』に載った有名な漫評がある。ちっぽけな日本人と体格が3倍くらいあるロシア人がリングで向き合っている。リングの床には北東アジアの地図が描かれている。ロシア人は満州と韓半島北部、日本選手は韓半島南部を踏んでいる。観客席の前列には大柄な英国人、次の列にはフランス人とドイツ人が座っている。さらにその次の列には米国人が立っている。競技場に入ることもできず、テントの上からのぞき込む中国人の様子が哀れだ」

     

    日本はロシアと対決するとき、外交戦術で英国、フランス、ドイツ、米国を味方に引入れていたことを指摘している。

     

    (3)「日本が英国と同盟を結んだのは1902年だ。実権を握っていた井上馨は「拾い物」だと言った。日本には、地球の反対側でチョウが羽ばたくのを鋭く読み取る卓越した外交官(注:井上馨)がいた。国際外交の力学変化を神業のごとくつかみ取り、敏速に反応した。日英同盟でロシアを孤立させた後、戦争に突入した。日本海軍は韓国の鎮海基地でロシアを待ち構えた。作家の司馬遼太郎の著書『街道をゆく』には、李舜臣(イ・スンシン)鎮魂祭を開く日本海軍の様子が出てくる。戦場へ向かう軍人らが李舜臣に向かって礼を尽くしたという記録もある。かつての敵将に対し礼儀を備えることで、戦勝を祈願した。征韓論問題もモロッコ危機も知らない韓国は、李舜臣の価値すら日本よりも理解していなかったのだ」

     

    日本は、日露戦争で欧米への外交的根回しを十分に行なっていた。太平洋戦争では、全く異なる行動に出た。軍部が外交権を支配したからだ。日本でも外交の巧拙が、こういう差を生むことを立証している。

     


    (4)「外交史で見れば、韓国は1907年のハーグ会談(第2回万国平和会議)まで息も絶え絶えだった。韓国史の教科書は、ハーグ密使事件を高宗の反日抵抗と独立外交の出発点と見なしている。ロシアは韓国独立を議題に上げ、日本を圧迫しようとした。ロシアは韓国カードを途中で諦めた。ロシア革命で、再び戦争を起こす余力を失ったからだ。韓国は撤回の事実も知らなかった。ロシアは英国と協商体制を構築し、日本とは満州の利権を分割する協約を結んだ。英国とロシアが繰り広げた「グレートゲーム」は、英仏ロ日の4カ国協商体制という形でけりがついた。韓国の味方は消えた。韓国は外交で滅んだのだ

     

    朝鮮は、ロシア一ヶ国に外交の主眼を置いていた。これが失敗して、日本の支配に道を開く結果になった。そのロシアとも、十分な意思疎通を行なっていなかったのである。下線のように、朝鮮の味方が消えたのである。

     

    (5)「今、北東アジアのリング上では中国選手と日本選手が向かい合っている。米国のバイデン大統領の視線で見れば、「専制政治」対「民主主義同盟」の対決だ。最前列に米国人が、その後ろにはオーストラリア人とインド人が座っている。英国人がドアを開けて入ってこようとしている。韓国はどこにいるのだろうか? 重要なのは、米中が繰り広げる「グレートゲーム」に日本が加わり、中心的な役割を果たしているという事実だ。さらに重要なのは、韓国は日本が何をしているのか知らないだけでなく、知る価値も感じていないということだ」

     

    現在の国際情勢に目をやれば、北東アジアで日本と中国が向き合っている。日本の味方には、米国、豪州、印度がおり、新たに英国が加わろうとしている。韓国の姿はどこにも見えないのだ。韓国は、こうした情勢変化に無頓着である。

     

    (6)「安倍政権の韓国政策には逆説的な部分があった。政権8年の間、終始関係が良くなかった韓国に外務省のエリートを集中的に配置したという点だ。親韓・嫌韓とは別に、自国の利益を重視する有能な外交官という印象を受けた。駐米日本大使をはじめ、この外交官らが各所で何か新しい枠組みをつくっていることだろう。気になりもするし、やや怖くもある」

     

    安倍首相は、韓国への交渉でエリート外交官を当てた。これは、日本でも知られている事実である。外交交渉で日韓の障害を取り除く努力をしたのである。文政権は、朴政権で対日交渉に加わった外交官をすべて「追放」した。対日交渉では「素人」を当てたのである。これでは、まとまる話もまとまらない。文政権は、李朝の外交的失敗をそのまま繰返している。

     

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