勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    テイカカズラ
       

    韓国社会の本質を掴むには、現在が絶好の機会である。あらゆることで、序列を気にする社会である。韓国のワクチン接種は、26日から始まる。世界で102番目と低開発国並みと嘆いているのだ。このように遅れた責任が、文政権にあるという結論である。

     

    もう一つのワクチン接種を巡る話題は、第1号接種者は文大統領であるべきという社説まで登場していることである。日本では、医療従事者優先で誰が第1号接種者になったかも分からないほど。ここでも、ワクチン接種の順番が話題になる社会である。日本と大いに異なり、目を丸くする社会現象である。

     

    『朝鮮日報』(2月25日付)は、」世界で102番目にワクチン接種、韓国はこんな国だったのか」と題する記事を掲載した。

     

    韓国初の新型コロナワクチンが24日に出荷された。最初の接種は26日に行われる予定だ。ところが、英オックスフォード大学の国際統計情報サイト「アワー・ワールド・イン・データ」によると、韓国は全世界で102番目以降に新型コロナワクチンを接種する国になるという。22日の時点で既に101カ国においてワクチン接種が開始しされているためだ。

     

    (1)「まだ接種が始まっていない国にはタイ、ベトナム、ラオス、フィリピンなどの東南アジア諸国、カザフスタン、ウズベキスタン、アフガニスタン、ウクライナ、ベネズエラ、モンゴル、北朝鮮、そしてアフリカの国々がある。経済協力開発機構(OECD)加盟37カ国の中で、韓国を除いて未接種の国はない。韓国はなぜ、アフリカや東南アジア諸国と同じ水準でワクチン接種をしなければならなくなったのだろうか」

     

    韓国は、GDPで世界10~12位にあるという自負がある。その韓国が、ワクチン接種序列で世界102番目では、「理屈に合わない」という怒りが底流にある。これほどまでに「序列」が重視される社会だ。この延長に「学歴社会」がある。受験=成績の序列に繋がる。

     

    (2)「ワクチンの早期確保に成功したイスラエルは、全人口の51.5%が1回目の接種を終え、33%は2回目の接種も終えている状況だ。ワクチンこそが新型コロナ問題を終わらせる根本的な解決策であり、日常生活回復へ近道だということが、接種国では繰り返し確認されている。韓国人はなぜこのようにワクチン確保が遅れたのかという理由も明確には知らずにいる。現政権は「K防疫」の宣伝にばかり熱を上げ、「今、ワクチンは十分な速さで導入されている」として、他国に比べてもワクチン接種時期はそれほど遅れていないと言い張っているからだ」

     

    文政権は、「自慢と言い訳」を得意とする。自慢は、序列の高いことを意味する。言い訳は、結果の低いことを取り繕うことである。ともかく、韓国政界のやり取りは、「自慢と言い訳」を巡る攻防戦だ。

     

    (3)「ワクチン確保は複数の部処(省庁)との関連がある上、リスクを抱え込まなければならない問題なので、大統領の関心と決断が何よりも重要だ。ほかの国々はすべて、こうした関心と決断を経てワクチンを確保した。ところが、文在寅(ムン・ジェイン)大統領は韓国が102番目のワクチン接種国になるようにしておきながらも謝罪していない。それどころか接種遅延の懸念などに対しても、「事実ではない」という言葉ばかり繰り返している。世界で102番目が接種遅延でないというなら、接種遅延というのはいったいどういうケースのことを言うつもりなのだろうか」

     

    「自慢と言い訳」を得意とする社会では、最終的に「謝罪」でしか収拾されない。文政権は、滅多に謝罪をしない政権である。あくまでも取り繕って責任回避することに汲汲としているのだ。これが、騒ぎをさらに大きくしている。

     


    『中央日報』(2月24日付)は、「ワクチン第1号接種、指導層の率先垂範を期待する」と題する社説を掲載した。

     

    韓国初のワクチン接種が26日に近づいたが、ワクチンの安全性と有効性に対する不安・不信が収まっておらず対策が必要だ。特に、韓国で一番初めて接種するアストラゼネカ(AZ)のワクチンの有効性をめぐる論議のためなのか、ある世論調査で回答者の52.8%が接種延期、または拒否の意向を明らかにした。

    (4)「政府がまもなくワクチン第1号接種者を公開する予定だが、誰にするのかをめぐって依然として騒ぎとなっている。結論から言えば、ワクチンに不信がある中で国民の信頼を高めるためには指導層の中で誰か率先するのが一つの方法だ。政界では文在寅(ムン・ジェイン)大統領が最初に接種すべきだという声が提起された。もちろん、個人の選択であるだけに強要する問題ではないが、文大統領としては優れたリーダーシップと政務的感覚を表わす良い機会だ。医者出身である国民の党の安哲秀(アン・チョルス)代表は先に打つ意向をすでに明らかにした状態だ」

    誰が、第1号接種者になるか。これは、コロナワクチンへの潜在的不安が引き起している問題である。韓国は、原子力発電所にかかわる妄想的被害で大騒ぎする社会である。最近の「トリチウム」騒動がその典型であった。トリチウムは、自然界に存在し人間の食物に多数含まれ、食物として摂取後に体外へ排出され無害なのだ。

     

    こういう科学知識がなく、与党のトップや政権支持メディアの『ハンギョレ新聞』まで騒ぐ記事を書いたほど。非科学的気風の強い土壌だけに、ワクチンも風評に左右されているのだ。これを収めるには、文大統領が第1号接種者になるべしという話だ。文氏は、沈黙したままである。文氏も風評に惑わされているのだろう。

     

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    崩れた韓国の天動説的外交観

    米マジノ線は朝鮮半島離れる

    韓国は親藩から転落して外様

     

    日韓関係で、これまでにない大きな潮流変化が起こっている。米国が、日韓双方へ向ける視角が変わったことだ。韓国は、そのことに気付かずにいる。米国が、いずれ日韓紛争を仲介してくれるだろうと安易な期待をつないでいるのだ。もはや、そういう子どもじみた考えは通用しなくなった。それは、日韓を取り巻く国際情勢の変化に基づくのである。

     

    比喩的に言えば、韓国が地図で眺めているのは日本列島であろう。日本は、海洋国家として、世界地図を俯瞰せざるを得ない地政学的位置にある。それだけに、世界の情勢変化に敏感である。韓国は、過去だけに関心を持っている。日本は、未来を展望している。そういう差が最近、如実に現れてきたのだ。日韓の違いを、次に述べる天動説と地動説に喩えたい。

     

    崩れた韓国の天動説的外交観

    16世紀半ばに、従来の天動説に代わって地動説が登場した。精密な天体観測の結果である。これを最初に唱えた人物がコペルニクスであったことから、天動説から地動説への認識変化は、「コペルニクス的転回」と呼ばれている。

     

    日韓関係で韓国は、このコペルニクス的転回が起こっていることを認識すべきだ。現実には、それができずに右往左往している。ワシントン外交界のインナーサークルでは、日本が西側諸国へ分類されているという。もはや、アジアの枠を越えたのだ。外交上における日韓のウエイトは、日本9割に対して韓国1割と圧倒的な差がついている。これは、キム・ドンソク米州韓国人有権者連帯代表が、韓国政権支持メディア『ハンギョレ新聞』(2月23日付)で述べていることだ。韓国人同胞が、韓国紙に語った率直な声である。

     

    韓国は、これまで一貫して「天道説」に立ってきた。米国は、必ず韓国の味方になり日本を「制裁」してくれると信じてきたのである。その最大の根拠は、植民地問題と元慰安婦の人権問題である。次に指摘するように、客観情勢は天動説に不利な状況をもたらしている。

     


    世界情勢が激変してきたのだ。中国の軍事的台頭で、米中対立の長期化が引き金になって、西側では、「インド太平洋戦略」で民主主義政体を守る「体制安保」が緊急の課題になっている。さらに、元慰安婦問題は2015年、日韓慰安婦合意という政府間協定が成立したことで、日韓に関わる過去問題は消えたはずである。こうなると、天動説が自然消滅し、地動説=日本優位の外交状況に代わったのだ。

     

    米国の目指すインド太平洋戦略は、民主主義国を横断する世界戦略である。重ねて言えば、自由と人権を守る体制安保である。日本は、インド太平洋戦略概念の最初の提示国だ。これに参加するのは当然だが、韓国は大きな悩みに直面している。米中対立を象徴するインド太平洋戦略に参加すれば、中国や北朝鮮との対決姿勢を鮮明にするので具合が悪いという「朝鮮半島」的な視点である。

     

    韓国は、体制安保に関する重要性への認識が欠けている。中朝が仮に、韓国を侵略する場合、目的は共産主義化である。それは、体制安保の危機なのだ。韓国は、朝鮮戦争(1950~53年)が共産化にあることを忘れている。つまり、第二次朝鮮戦争が起こるとすれば、目的は共産化以外にない。文政権は、親中朝であるので共産主義に親愛感すら持っている。こういう安保認識では、バイデン政権の唱える体制安保に合流するはずもなかろう。韓国が、文政権の下で潜在的な安保危機を抱えている理由である。

     


    米マジノ線は朝鮮半島離れる

    朝鮮戦争後、米国は在韓駐留米軍によって韓国防衛に当っている。第二次世界大戦後は、朝鮮半島が「発火点」として危惧されてきたからだ。米国は現在、朝鮮半島を超えてインド太平洋という大きな海域で、中国と対峙せざるを得ない局面になった。こうなると、米国の主力防衛線は利害共通国の多さと体制安保という視点から、インド太平洋戦略に置かざるを得なくなっている。

     

    この際、朝鮮半島防衛を広いインド太平洋戦略に包含すれば、米国は極めて効率的な兵力展開が可能だろう。その場合、韓国はインド太平洋戦略に加わる意思を示すことが前提である。文政権は、インド太平洋戦略に加われば、中国敵視を公然と認めることで不都合が起こる、としている。その理由として、経済面(輸出)を強調している。

     

    インド太平洋戦略に参加するクアッド(日米豪印)も、中国と高い経済関係を維持している。しかし、安全保障は国家存立の基盤である。それを損ねるリスクを抱え、経済関係を維持しようとするのは本末転倒である。韓国は、この錯誤した意識に囚われている。(つづく)

     

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    欧州各国は、安全保障面の懸念と入札後の工事結果が芳しくないこともあり、入札から中国企業を締め出すケースが増えている。中国政府は、中東欧各国へ「一帯一路」と絡んで積極的な売り込み工作を行なってきた。それが、欧州の安全保障と危うくするリスクを抱えることに気付いて、ブレーキを掛けている。中国が、中東欧17ヶ国を束ねた「17+1」の首脳会議では、6ヶ国が示し合せて欠席するというサボタージュまで起こっている。

     

    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(2月24日付)は、「『中国離れ』欧州でじわり浸透、入札排除の動きも」と題する記事を掲載した。

     

    欧州一部で、中国による経済への関与を阻止する動きが目立ってきた。地政学的な影響力を強める中国に対する警戒感が高まる中、米国が唱える対中戦略と歩調を合わせつつある。バルト海からアドリア海に抜ける地域の欧州諸国では、政府が中国国有企業が落札するとみられていた公共事業の入札を中止するか、中国勢による入札参加や投資を禁じる動きが相次いでいる。

     


    (1)「決定に関与した当局者らは、国家安全保障上の懸念に加え、過去に入札に競り勝った中国業者が期待に添わなかったことへの失望感が中国排除の決定につながったと説明する。中止となった案件には、中国の巨大経済圏構想「一帯一路」に関連するものも複数含まれる。一帯一路を巡っては、一部の参加国から落胆の声が上がっていた。こうした「中国離れ」は主に欧州の小規模な国々で起きており、中国と緊密な経済関係を維持したい欧州連合(EU)主要国との間で域内の緊張を高める要因にもなっている」

     

    EU内では、主要国と小規模国との間に対中国企業の姿勢に明確な違いが起こっている。小規模国は、中国ビジネスに期待しただけに、それに添わない結果に落胆している。これが、中国企業締出しという強硬策を招いている。

     

    (2)「ルーマニアとリトアニアは一部の政府調達について、中国企業を幅広い分野で排除する措置を講じた。より的を絞って中国を締め出す国もある。スロベニア、クロアチア、チェコ共和国、ルーマニアは、中国企業が関与する原発、高速道路、鉄道網、保安検査機器、コンテナ船ターミナルの政府入札を中止した。ルーマニア・アジア太平洋研究所のアンドレーア・ブリンザ副所長は、冷戦時代にロシアの支配下に置かれた欧州の国々は、中国に対しても戦略上の懸念が根強い。そのほとんどが、安全保障を米国に頼っていることから、米中の貿易摩擦問題で自国がどちらの側に付くか、明確な姿勢を示したいと考えているという」

     

    中東欧各国は、ソ連占領によって共産主義へのアレルギーを持っている。それが今、中国企業にも向けられている。安全保障をNATO(北大西洋条約機構)に依存しているので、米国へ明確な姿勢を見せたいという心理も働いている。

     

    韓国は、米国の安全保障の傘に入りながら、中国へ秋波を送っている。中東欧各国の義理堅さを学ぶべきだろう。

     

    (3)「EUは昨年、異例の安価で落札を狙う域外企業からの入札参加を排除する指針を公表。外国政府の補助金が欧州に与える影響について調査を開始しており、これには政府調達や企業買収などの分野が含まれている。EUでは、外資による加盟国への投資ついて安全保障上の影響を審査する新たな規則が昨年10月に発効しており、多くの加盟国が国内でも同様の規定を整備している。EUで最大の経済規模を誇る仏独は中国との経済関係強化を唱えているものの、域内では東・南欧諸国を中心に中国企業への警戒が高まっている」

     

    中・東欧諸国は、巨大なインフラ需要が見込まれるので、中国企業にとって格好の標的となっている。しかも、欧州の競合勢をはるかに下回る価格を入札で提示することが多い。安値で受注を勝ち取った中国企業の多くは実績を出せずに終わっていると、地元の政治家は指摘する。中国企業は、こういう無責任なことをするのだから、締め出されるのは当然である。

     

    (4)「アンゲラ・メルケル独首相とエマニュエル・マクロン仏大統領は、EUが2013年から中国と交渉してきた投資協定について、昨年12月の大筋合意を全面的に推進していた。大筋合意に対してポーランドが反対を表明。ジェイク・サリバン米大統領補佐官(国家安全保障担当)も、正式に就任する前から、中国問題でEUと米国の連携強化を求めてきた。投資協定の発効にはなお正式承認が必要で、実現しても来年以降になるとみられ、欧州議会からも反発が強まっている」

     

    仏独の両首脳は、中国との投資協定の大筋合意を歓迎しているが、ポーランドが反対を表明している。中東欧各国にも同調の動きがある。投資協定を審議し批准する欧州議会が、反対意向が強いとされており、波乱含みである。

     


    (5)
    「トランプ前米政権が、「クリーンネットワーク」と呼ばれる取り組みを通じて中国排除を働きかけたことを受け、複数のEU諸国は昨年、安全保障に関する基準で米国に追随。次世代通信規格「5G(第5世代)」インフラ整備で華為技術(ファーウェイ)を含む中国企業の参加を事実上禁止あるいは制限する国内法を制定した。ファーウェイは9月、EU当局に対し、米国を踏襲したポーランドやルーマニアの5G関連法案はEUの競争法に違反している可能性があるとして不服を申し立てた」

     

    トランプ前米国大統領に反発していたEUが昨年、複数国で安全保障に関する基準で米国に追随した。ポーランドやルーマニアがそれで、ファーウェイから不服を申し立てられている。だが、安全保障が理由となれば却下されることになろう。

     

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    米バイデン政権の対中国経済戦略は、トランプ前政権が行った高関税率を維持しつつ、米中生産デカップリング(分断)に向けて拍車を掛けている。バイデン大統領が、先端技術分野から中国を排除する産業供給網構築のため、行政命令に近く署名する見通しだ。

     

    『日本経済新聞』(2月24日付)は、「米、同盟国と供給網整備 半導体やEV電池 中国に対抗」と題する記事を掲載した。

     

    バイデン米政権は半導体や電池など重要部材のサプライチェーン(供給網)づくりで同盟国や地域と連携する。この動きを加速させる大統領令に月内にも署名する。日本などアジア各国・地域との協力を念頭に、安定して調達できる体制を整備する。対立する中国に依存する供給網からの脱却を目指すものだ。

     

    (1)「バイデン大統領は供給網の国家戦略をつくるよう命じる大統領令に署名する。日本経済新聞が入手した原案によると、半導体のほか、電気自動車(EV)用の電池、レアアース(希土類)、医療品を中心に、供給網の強化策づくりに乗り出す。大統領令は「同盟国との協力が強靱な供給網につながる」と指摘。敵対国の制裁や災害など有事に影響を受けにくい体制を築くよう命じる見通しだ。半導体は友好関係にある台湾をはじめ、日本や韓国と連携するとみられる。レアアースでは有力企業を持つオーストラリアなど、アジア各国・地域との協力を視野に入れる」

     

    米国バイデン大統領は、供給網の国家戦略をつくるよう命じる大統領令に署名する。大統領令は、「連邦政府の運営を管理するための命令」である。米議会の承認を経ずに行える点が特色だ。政策効果の浸透上において、スピードを上げられる。半導体のほか、電気自動車(EV)用の電池、レアアース(希土類)、医療品を中心に、供給網の強化策づくりに乗り出す。

     


    これには同盟国・地域の協力がなければ不可能である。米国は昨秋から台湾や日本、オーストラリアなど特に技術や資源に強い国・地域に対し、中国に依存しない供給網の構築を連携してつくるよう呼び掛けてきた。特に米台間の動きは早く、すでに昨年11月、ワシントンで高官協議を行い、半導体や高速通信規格「5G」など7項目の技術連携で覚書(MOU)を結び、脱・中国を志向した新たな供給網の早期構築で一致したほど。
     

    日本側も米台連携の動きに同調し、昨年から経済産業省が主導する形で米国と同様に、台湾積体電路製造(TSMC)の誘致に力を注いできた。誘致に成功すれば「日米台」でより強固な供給網ができ、日本も将来にわたって先端の半導体を確保しやすくなる。そのためすでに総額2000億円の予算を設け、日本企業との連携を視野にしたTSMCの受け入れ準備を着々と整えている。

     

    このように、中国に依存しないで戦略品の製造体制を固めようというもの。こうなると、米国は「TPP」(環太平洋経済連携協定)へ復帰すべきだろう。戦略品だけでなく一般品でも、米国の巨大な市場を同盟国に提供するべく、TPP復帰を真剣に検討する時期である。同盟国に、こういう経済的な恩典を与えれば、戦略品の製造も順調に進むはずだ。

     


    (2)「具体的には、重要製品の供給網に関する情報を同盟国と共有する。生産品目で互いに補完するほか、非常時に速やかに融通し合える仕組みを検討する。余剰能力や備蓄品の確保も協議する。中国との取引を減らすよう要請する可能性もある。年明けから表面化した半導体不足は米自動車メーカーなどを直撃し、供給網の見直しは、その意味でも急務だ。ボストン・コンサルティング・グループによると、半導体工場立地別の2020年の生産能力シェアは米国が12%。世界最大の22%を占める台湾に増産を求めたが、フル稼働中だ。短期的には打つ手が乏しい」

     

    米国は、同盟国企業に対して中国との取引を減らすよう要請する可能性もある。具体的には、半導体禁輸であろう。バイデン米大統領は2月16日、米国中西部ウィスコンシン州で開いた市民集会で中国の人権侵害を批判した。「中国は報いを受ける」と強調したのである。対中国政策で、人権を重視する立場を改めて鮮明にした発言だ。デカップリングは、中国の違法行為への「報い」という位置づけである。

     

    (3)「中国の半導体の生産能力は30年に24%と世界最大になる可能性がある。供給網で中国に依存すれば、貿易規制を通じて圧力をかけられる恐れがある。中国は過去、尖閣諸島を巡り対立した日本へのレアアース輸出を規制したことがある。実際、米国はレアアースの約80%を中国から輸入している。医療品も最大9割を対中輸入に頼っており、予断は許さない。特に半導体の有力メーカーは世界でも限られ、米国と歩調を合わせるかは企業の判断による。米国と足並みをそろえるには各国政府の協力も不可欠だ。新たな供給網構築は今後、多くの時間を要する可能性も高い。

     

    中国の半導体の生産能力は、30年に世界シェア24%と最大になるという。これは、汎用品半導体である。だが、TSMCが日本や米国で本格的な増産に入れば中国が世界シェアの4分の1を占めることは不可能であろう。

     

    韓国は、半導体でどういう立場に立つのか。中国からは輸出継続を懇請されている。韓国政府にまで手を回していることは疑いない。こういう事情を察知している米国は、先手を打って中国への輸出禁止要請を出ないとも限らないのだ。こうなると、韓国の中国への二股外交は破綻する。韓国は、経済を理由に二股外交を正統化してきたが、その逃げ道を封じられる可能性が出てきたのだ。

     

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    文政権は、北朝鮮を「主敵」の地位から外した。これが、韓国軍の士気低下を招いている。38度線の向こうに、韓国を侵略した北朝鮮軍が大量の武器で今なお存在しながら、これを主敵と見ないと言うのだ。こういう「言い逃れ」が、韓国軍の北朝鮮軍への警戒心を弛緩させている。

     

    具体的には、従来になく脱北者が38度線を簡単に越えていることだ。脱北者が、北朝鮮軍であったならば、ゾッとする思いであろう。韓国軍の士気低下が著しく進んでいる証拠であろう。文大統領は就任後、国民に対して良いことを何もしない大統領である。

     

    『朝鮮日報』(2月24日付)は、「現在韓国軍は内部崩壊の状態にある」と題する社説を掲載した。

     

    今月16日にある北朝鮮男性が東海岸を通じて帰順したが、これはほぼ崩壊状態にある韓国軍の実情を赤裸々に示す出来事だった。韓国軍合同参謀本部が23日に発表した内容によると、この北朝鮮男性が韓国側の海岸を歩いて南に移動する際、監視カメラに10回も撮影されていたが、韓国軍はその8回目まで事態を全く把握できていなかった。前方の監視カメラでは2回にわたり警告灯と警告音が作動したが、監視兵は特に理由もなく風が原因の誤作動と勝手に判断してこれを無視した。幹部は電話中だった。最初から警戒をしていなかったのだ。任務を遂行しない部隊はここだけだろうか。決してそんなことはないだろう。

     


    問題の北朝鮮男性は5~6キロの距離を3時間以上かけて歩き、民間人統制ライン付近まで南下したが、最初に識別されてから師団長に報告されるまで34分もかかった。武装した敵軍が侵入していればどうなっていただろう。北朝鮮男性は海岸に設置されている鉄柵下の排水路に入り込んだ。ところが現場の部隊はこの排水路の存在そのものをこれまで知らなかったという。

     

    (1)「地形や地雷の危険性などから把握が難しかったと言い訳している。兵士が自ら担当する地域の中で、「行きにくくて危険」という理由で行ったことがない場所があるというのだ。昨年7月にはある脱北民が西海の鉄柵下にある排水路を通って越北したが、この時も合同参謀本部は現場の部隊全体に排水路の確認を指示した。ところが今回問題となった師団は問題の排水路を確認もせず、「問題なし」と報告していた。合同参謀本部の命令さえ聞き流しているのだ。これではもはや軍隊とは言えない」

     

    このパラグラフで印されている事実は、韓国軍がサラリーマン化している証拠である。文政権は、北朝鮮が主敵でないと宣言している以上、敵でない北朝鮮へ鋭敏に対応するはずがない。問題の根源は、文政権にある。

     

    (2)「合同参謀本部は「事態を深刻に認識している」とした上で「根本的な対策にあたる」と約束した。古いレコードが回っているような感覚だ。昨年の脱北民越北事件でも合同参謀本部議長は国会で「事態を深刻に認識している」として「根本的な対策にあたる」と誓った。「厳正な対処」「厳しい調査」「責任を痛感」などの言葉も、問題が発生するたびにオウムのように繰り返されているが、これらがわずか1回でも守られたことはない。今やこの種の言葉を聞くと国民はもちろん、兵士たちでさえ内心苦笑いをしていることだろう」

     

    北朝鮮軍が主敵でない以上、警戒心が弛緩するのは当然のこと。間違いの元は、北朝鮮に対する主敵の看板を降ろしたことにある。

     

    (3)「このように初歩的な警戒さえできない軍隊が、戦時作戦統制権(注:統帥権)の移管を急いでいる。核兵器を保有する北朝鮮と全面戦争が起こった場合、核抑止力を全く持たない韓国軍が核抑止力を持つ米軍を指揮するというのだ。これに米国が同意するだろうか。このようなナンセンスについては驚くべきことに韓国軍が先頭に立っている。軍人でありながら国を守ることをせず、国内の政治宣伝に没頭する大統領にこびを売っているのだ」

     

    精神的に言えば、韓国軍は北朝鮮軍に対して「腑抜け」状態になっている。こういう軍隊は、「インド太平洋戦略」のクアッド(日米豪印)に加えても、足手まといになるだけだろう。在韓米軍が韓国軍に統帥権を与えても、機能しないことは明白である。むしろ、弊害だけが出てきて、北朝鮮軍に敗北する最悪状態を招くに違いない。

     


    (4)「最も重要な韓米合同軍事演習は、すでにコンピュータ・ゲームのように変わってしまった。政権が行う南北ショーと平和ショーにより、韓国軍は事実上、精神的な武装解除に向かっており、今では「軍事力ではなく対話で国を守る」「韓米訓練については北と協議する」とまで言い出した。元在韓米軍司令官は現状について「このままでは北朝鮮に服属する」と指摘したが、この警告を誰が聞き流せるだろうか」

     

    文政権の国防意識は、ゼロ以下であろう。「軍事力ではなく対話で国を守る」などという話は、童話の世界である。自衛権は、国家存立の基本概念である。それさえ捨てて、北朝鮮と統一したいという文政権の存在に嘆息するほかない。

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