勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

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    中国は焦りに焦っている。昨年6月30日、香港への「国家安全法導入」で、西側諸国との関係を悪化させた。さらに、この2月1日からは海警法を施行した。海警法とは、中国が主張する海域で「違法」に活動する外国船に武器の使用を認めるとした法律である。東シナ海や南シナ海などの係争地域における武器使用の正当化を図るもの。武力行使は、国際法の下で禁止されている行為である。中国は、この国際法に逆らってまで横暴な振舞を行うと宣言したのだ。

     

    中国は、どうにも手をつけられない「夜盗国家」に成り下がったと言うほかない。違法手段によって国土を拡張する「帝国主義」手法に堕したわけで、中国国内の抱える矛楯が如何に大きくなっているかを如実に物語っている。中国ITの先端企業ファーウェイは、米国の禁輸措置を受けて高級半導体が輸入禁止となった。この結果、ファーウェイは高級スマホの生産に大きな支障を生じ、養豚事業に進出して食いつなぐという異常事態を迎えている。

     


    中国が目指してきた高度産業計画の「中国製造2025」は、ファーウェイの養豚事業が象徴するように破綻したと見られる。あっけない結果だ。こういう事態を迎えて、中国は「破れかぶれ」に突入し、海警法によって最後の領土確保に出てきたと見られる。

     

    『ロイター』(2月20日付)は、「米『中国海警法に懸念』近隣国との海洋権益争いエスカレートも」と題する記事を掲載した。

     

    米国務省は2月19日、中国で施行された海警局に外国船舶への武器使用を認める海警法に懸念を表明した。

     


    (1)「国務省のプライス報道官は定例記者会見で、同法の文言が東・南シナ海で「近隣国を脅かす目的」や「違法な海洋権益を主張するために使用される」ことを米政権は懸念していると述べた。さらに、米国は「南シナ海の大半の地域を巡る中国の海洋権益に関する主張は完全に違法」とするポンペオ前国務長官の発言を再確認するとし、日本やフィリピンとの同盟国としてのコミットメントを堅持すると強調した」

     

    米国バイデン政権は、民主主義を防衛すると宣言している。中国が違法な海警法に基づき軍事行動を行えば、米国が見過ごさないという姿勢を強調した。米国務省は、ポンペオ前国務長官が、中国の南シナ海領有は不法であり一切、認めないと宣言している。これは、米国が軍事行動を起こす予告でもあり、中国があえてこれに対抗する姿勢を見せたのであろう。

     

    中国の南シナ海領有の主張が違法であるとして、常設仲裁裁判所(1899年設立 オランダ・ハーグに本部)へ上訴したのはフィリピンである。これで勝訴(2016年)したわけだが、中国は判決を「紙切れ」と豪語し無視し居座っている。

     

    『大紀元』(1月27付)は、「比大統領府『中国の海警法が、国際法違反』と批判」と題する記事を掲載した。

     

    中国政府はこのほど、中国海警局に「中国領海」における外国船舶に対して武器使用を認める「海警法」を成立させた。フィリピン大統領府は、武力行使は国際法の下で禁止されているとし、いかなる国も南シナ海の状況を悪化させないよう警告した。

     

    (2)「フィリピンのハリー・ロケ大統領報道官は1月25日、大統領官邸で記者会見し、一般的な国際法の下では「武力の行使は通常、禁止されている」と指摘した。フィリピンのキコ・パンギリナン上院議員はこのほど、中国共産党の「海警法」は同国の経済水域を侵害する外国法であると強調したうえで、インドネシアやベトナムも中国共産党の威嚇に怯んでいない、と述べた」

     

    フィリピンは、海警法に強い衝撃を受けている。中国が、常設仲裁裁判所判決無視に続く横暴行為を宣言しただけに、米国の軍事擁護を期待している。

     


    フィリピン大学の海事・海洋法研究所の所長を務めるフィリピン大学ディリマン校法学部のジェイ・バトンバカル准教授によると、通常、沿岸警備隊は特定状況下において武力行使を含む法執行権限を有しているが、中国海警局は他国領域への侵入を繰り返しているため、この新法は問題であるとしている。

     

    前記のバトンバカル准教授は1月28日、ベトナムの新聞『VNエクスプレス・インターナショナル』紙に対して、「中国海警局による武力行使は単なる法執行措置ではなく、中国という国家による実際の武力行使である。中国が自国領土と主張する他国領域でこれを行えば、それは侵略行為または国際連合憲章に反する武力行為と見なすことができる。これはもうほとんど戦争である」と語った。以上は、『大紀元』(2月11日付)が伝えた。

     

    中国が、海警法による実力行使に出れば、「戦争行為」と見なされる危険な手法を取ってまで「一か八か」の博打に打って出てきたと言える。この瀬戸際政策で、相手国を怯ませる戦術だが、相手国が「応戦」すれば戦争になる。その場合、中国は即刻、米国から経済制裁を受けるだろう。中国はそれに耐えうる体力があるか。ファーウェイですら、あっけない落城である。中国は、自己過信に陥っていると大変な事態へ突入するはずである。習近平氏は、伸(の)るか反(そ)るかという政治生命を賭けた戦いとなろう。

     

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    国際法盾に日米が協調へ

    日韓問題の解決意欲ゼロ

    米が日韓関係是正を要求

    日米韓三ヶ国協議始める

     

    韓国政府は、日本政府へ「ラブコール」を送ったことで、膠着している日韓関係が動き出すものと誤解している。国家間の関係は、そのような甘ったれたものでない。文大統領を先頭にして、あれだけ「反日不買運動」を行いながら、時間が経てば何もなかったように振る舞う。日本社会では通用しない話である。恥を知らないのだ。

     

    韓国は、米国バイデン政権登場に期待している。日本を説得して欲しいというのが本音で、自ら解決策を用意しようとしない。これでは、永遠に日韓関係のギクシャクが続くであろう。

     

    日本は、旧徴用工賠償も旧慰安婦賠償も全て法的に解決したという立場である。旧徴用工賠償は日韓基本条約(1965年)で、旧慰安婦賠償は日韓慰安婦合意(2015年)によって、それぞれ解決したと解釈している。日韓基本条約や日韓慰安婦合意は、日韓政府間で取り交わされた条約・協定である。それを覆す韓国司法の判決は、国際法に違反したものだ。日本の企業や政府が、そういう違法判決に何ら拘束されないというのが基本的立場である。

     


    国際法盾に日米が協調へ

    日本政府が、国際法を盾にしている以上、仮にバイデン政権が日韓関係を打開させたいとしても、日本を説得するのは不可能である。バイデン政権自身も、国際法を遵守せよと中国やロシアと対峙しているからだ。米国が、日韓関係では「韓国の国際法無視を認めてやれ」と二枚舌を使えないはずである。

     

    バイデン大統領は最近、極めて象徴的な声明を日本に向けて発表した。太平洋戦争中の米国で、日系人強制収容の根拠になった大統領令署名から79年となった2月19日、改めて謝罪した。「こうした政策によって苦しんだ日系米国人への連邦政府の公式な謝罪を再確認する」と声明したのだ。共同通信が伝えた。

     

    1942年、ルーズベルト大統領が署名した大統領令により、日系米国人は「敵性外国人」と見なされ約12万人が全米各地で数年間強制収容された。88年にレーガン大統領が過ちを認めて謝罪するまで名誉回復の運動が続いた。バイデン氏は声明で、「米国史で最も恥ずべき時の一つ」と強制収容の歴史を振り返った。

     


    バイデン大統領が、レーガン大統領によって謝罪された問題を改めて持ち出し再度の謝罪をした理由は何か。それは、米国が日本を最強のパートナーとして見ている結果であろう。米国が、中国との覇権争いで最も信頼できる日本との絆をさらに一段と深めたい。そういう米国の外交戦略に基づくものである。

     

    日露戦争(1904~05年)で、日本が大国ロシア帝国に勝利できた裏には、英国と米国の強い支援があった。英国は、日英同盟(1902~23年)によって、英国関係港湾へのロシア艦隊寄港を禁止し、日本海までの遠距離航海を強いた。米国は、日露戦争の長期化が日本に不利と見て、ロシアへ早期の講和を促すという側面支援をしてくれたのである。

     

    当時の日本と米英の友好関係は、こういうものであった。米国が今、日本との友好関係を最大の絆にしようとしている。英国も同様に、TPP(環太平洋経済連携協定)へ加盟申請し、西太平洋へ最新鋭空母「クイーン・エリザベス」とその打撃陣を派遣して、中国と対抗する姿勢を強めている。これらは、当時のロシアを現在の中国と置き換えてみれば、「日米英」という三角関係が鮮やかに復活するのだ。

     

    いささか、日本と米英の120年前の関係を遡ってみた。米国には現在、往時の日米親密感が蘇っているに違いない。米国が、日韓関係の修復で日本へ譲歩を迫るようなことは出来るはずがないであろう。国際法遵守という視点と対中国戦略から見て、日本と最大限の協力体制を構築しなければならないからだ。

     

    日韓問題の解決意欲ゼロ

    韓国は2月10日、鄭義溶(チョン・ウィヨン)外交部長官(外相)が就任した。就任後11日も経過したが、日韓外相の電話会談は開かれずにいる。韓国側は、早期開催を希望しているものの、日本側が応じない結果と見られている。駐日韓国大使も1月下旬に着任したが、菅首相や茂木外相はまだ面会に応じていない。理由は、韓国が国際法違反をしながら、自ら解決策を出さず、ただ電話会談や面会したい、というだけの儀礼的会談を回避しているからだ。

     

    韓国は、面会すればそれだけで「成果を上げた」という間違った認識を持っている。昨年9月の菅首相就任以来、韓国から政府特使や韓日友好議員連盟の代表数名が訪日した。だが、具体的な解決案を一切提示せず、お祭り騒ぎの訪日行事であった。韓国式のこういう無益な往来では、日韓に横たわる難問が解決しないのだ。(つづく)

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    文政権のトレードマークは、南北交流である。北朝鮮が、核開発を強行してもそれを咎めることもなく、相変わらず「人道支援」を一枚看板にした南北交流である。米国バイデン政権登場で、またアドバルーンを上げている。

     

    この南北交流案は、米国バイデン政権の対北朝鮮政策の一環として検討されるべき事案である。それを怠って、南北交流を言い募ることは極めて危険である。北朝鮮の思う壺に嵌まることになろう。先に行われた日米韓三ヶ国による北朝鮮問題討議では、三ヶ国は一致した行動を取ることで合意した。それは、北朝鮮経済制裁続行による核放棄の実現である。

     

    韓国の識者は、次のように指摘している。

    「韓国政府が、韓米同盟よりも南北関係の改善を優先する焦りを見せる場合が危険である。韓国政府が、南北首脳会談および米朝首脳会談に対する執着、北朝鮮の立場を代弁する制裁緩和要求、または南北協力事業の独自展開の誘惑に駆られれば、バイデン政権はブレーキをかける可能性が高い」(『中央日報』1月27日付コラム「韓国、バイデン氏の民主主義同盟から抜ければ失敗招く」朴チョル熙=パク・チョルヒ ソウル大教授)

     

    文政権は、こういう客観的な見方に立つべきだろう。そうでなければ、バイデン政権の外交戦略から完全にはみ出てしまうに違いない。

     

    『中央日報』(2月21日付)は、「韓国統一部長官、『北朝鮮の鉄道制裁解除を、コロナ終息したら金剛山観光から』」と題する記事を掲載した。

     

    統一部の李仁栄(イ・インヨン)長官が北朝鮮に対する国連の公共インフラ分野の制裁を解除すべきで、南北の鉄道・道路協力などをその例として挙げた。また、新型コロナウイルス状況が緩和されれば金剛山(クムガンサン)個別訪問から再開できればとの考えを明らかにした。

    (1)「李長官は、この日午前に米ハワイ大学韓国学研究所の主催で開かれたウェブセミナーに参加し、「人道主義問題は北朝鮮の政権や核開発過程とは徹底的に異なるもの。人道主義問題は対北朝鮮制裁の対象から躊躇なく除外されなければならない」と明らかにした。その上で「米国の民主党政権も人道主義問題に対しては(政治・軍事的状況と別個で扱われるべきということに)異論の余地がないだろう。制裁問題をもう少し柔軟にアプローチすることを検討できることを望む」と付け加えた」

     

    国連による制裁は、厳密に守らなければならない。北朝鮮は、経済制裁下でも核開発を続けている現状からすれば、北朝鮮国民が「気の毒」という同情論の前に、核開発中止を強く迫ることの方がはるかに現実的対応である。文政権は、その点が曖昧であり北朝鮮の代弁人と見られている理由だ。

     


    (2)「李長官は、南北の鉄道・道路協力を例に挙げ、「保健医療協力と民生協力がある程度活性化すれば、いまは国連が制裁を適用している非商業用公共インフラ領域程度は制裁を解除することに国際社会が共感を形成したら良いだろう」とした。また、金剛山観光問題についても、「団体観光ではなく個別訪問形態ならば人道主義に合致したり、制裁対象とは次元が異なる問題だろう。新型コロナウイルス状況が緩和されれば金剛山に対する個別訪問から再開できることを希望する」と付け加えた」

     

    文政権は、北朝鮮に非核化の実現を迫るよりも、同情論で抜け穴を用意するという「利敵行為」を推奨している。金剛山観光問題も経済的な利益は北朝鮮に還元される。団体旅行も個人力の集まりである。そういう詭弁が通るはずがない。

     


    (3)「李長官は北朝鮮との音楽・映画・放送などの「文化交流」について、「積極的に賛成する」としながら、「文化と放送が共有される過程で国際社会が北朝鮮政権を崩壊させる意図がないことを長い間認識させるならば北側も変化があるだろう」と主張した。その上で対北朝鮮政策を策定している米バイデン政権に対しては「トランプ政権とどのように変るのか注目している」としながらも、「(政策策定に)とても長い時間がかかり、その間に北側で他の反発の変数が起きないことを期待する」と話した」

     

    現在の北朝鮮は、韓流ドラマを持込めば死刑、見ただけで15年の懲役刑と言われている。ここまで国民を縛り上げている北朝鮮が、「文化交流」を認めるわけがない。韓国統一部は、夢のようなことばかり唱えている。現実を直視して、米国バイデン政権の北朝鮮政策に協力して、北の早期核放棄実現の手段を模索すべきなのだ。

     

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    テイカカズラ
       


    欧州では、一斉に中国の存在に警戒の目を向け始めた。中国は、EU(欧州連合)分断を狙って中東欧17ヶ国へ接近し、中国との定期会合「17+1」を開催するまでになった。だが、今年の首脳会談では17ヶ国のうち6ヶ国が出席せず、閣僚が代理出席する事態を招いている。理由は、中国が約束した経済支援もなく、中東欧諸国からの輸出も増えないためだ。中国の大風呂敷が破綻した結果と言える。

     

    こうした背景の中、エストニアの対外情報機関が年次報告を発表し、中国を厳しく批判する内容で注目されている。それによると、中国共産党は世界支配を目論んでいるというもの。中国はこれに抗議して、内容の変更を求めたが拒否された。欧州に広がる中国警戒論の一端を示している。

     


    『大紀元』(2月20日付)は、「『北京主導の声なき世界』エストニア報告書が警告 中国の変更要求を拒否」と題する記事を掲載した。

     

    エストニアの対外情報機関が、2月12日発表の年次報告書によると、中国共産党(中共)が経済的利益の誘惑やスパイ活動、エリートとの関係構築などで海外への影響力を高めていると指摘している。欧米との対立が激化する中、中共は欧米を分断する戦略を立てているという。

     

    (1)「報告書は、中共の指導部が世界を中国の技術に依存させるという明確な目標を持っているとし、中共が投資や5Gネットワーク技術などを通じてエストニアに浸透していると警告している。特に中国通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)と中国版の衛星測位システム・北斗について言及した。エストニアは、トランプ前米政権主導の「5Gクリーンネットワーク」に参加し、華為技術などの中国サプライヤーを排除している」

     

    ファーウェイの「5G」は、米国からの禁輸措置で大きな打撃を受けている。だが、中国版の衛星測位システム「北斗」を使って、世界支配を目論んでいることは疑いない。エストニアは、早くから中国の意図を見抜いてきた国である。

     


    (2)「報告書は、中共の外交政策が提唱するいわゆる「人類運命共同体」の実現は

    「北京主導の声なき世界」につながると警鐘を鳴らした。駐エストニア中国大使館は14日、「強い反対」の声明を発表し、「エストニア人民に対する中国人民の感情を傷つけた」とし、エストニア当局に報告書の内容変更を求めた。エストニアのウルマス・リンサル外相は、この要求を拒否した」

     

    一端、発表された報告書が、中国の抗議で内容を変更するはずがない。こういう点が、傲慢な証拠である。

     

    (3)「同外相はエストニア公共放送(ERR)に対し、報告書は「専門知識に基づいた安全性評価である。それは決して、中国との二国間協力を全く進めないということではない。両国の安全保障に役立つ場合はそうすることもある」と述べた。そして、「欧州連合(EU)と北大西洋条約機構(NATO)は、世界における中国(共産党)の影響力の増大について議論している。(中略)エストニア政府は独自の対中政策を採用している」と付け加えた」

     

    下線部は、事実である。NATOは、中国の軍事的脅威を除去するために2030年までに新たな戦略概念を発表することになった。「中国包囲」は、こうして世界規模で始まっている。

     


    (4)「欧州の小国エストニアは、ソ連から独立した国の一つ。エストニアは長い間、隣国ロシアに神経を尖らせていたが、近年、中共の対外浸透への言及が増えているという。エストニア対外情報機関は年次報告書の中で、欧米との対立が強まる中で、「中国(共産党)の主な目的は、欧米を分断し、弱体化させることだ。中国(共産党)は、分断された欧州が弱い相手となり、米国のような強い抵抗力を持たなくなることを十分に認識している」と述べている」

     

    下線のような発想法は、2010年代後半から起こったもの。この背景には、「一帯一路」計画がある。だが、中国経済の先細りが明確になるとともに、経済支援が滞っている。中東欧諸国は、次第に中国を見限った動きを始めている。

     

    (5)「外国情報機関の責任者ミク・マラン氏は報告書の序文で、「中国(共産党)の活動は年々新たな安全保障上の懸念を高めている」とし、「中露協力は緊密化しており、関係の主導権は北京が握っている」と指摘した。北京は2012年から、中国と中東欧17カ国の経済協力の枠組み「17+1」を推進するなど、欧州の後背地で積極的に活動している。エストニアなど6カ国は2月9日、北京が召集したオンラインの「17+1」首脳会議に閣僚だけを派遣し、中共を意図的に冷遇したと見られている」

     

    金の切れ目は縁の切れ目である。中東欧と中国では、地理的にも離れている。これまで、特別の結びつきもない中東欧が、中国と関係を持つのは金銭だけである。その金銭が切れれば、元の木阿弥となって当然であろう。

     

    (6)「ルーマニア・アジア太平洋研究所(RISAP)のアンドレア・ブリンザ副主席は、米『VOA』に対して、中東欧諸国の中国への冷遇は欧州連合と米国、そして自国民へのアピールだと述べた。「『17+1』枠組みがゾンビ化しており、約束された投資が履行されず、輸入も増えていない。これに失望した一部の加盟国は脱退を考えている」と同副主席は指摘した」

     

    中東欧と中国の「17+1」枠組は、ゾンビ化している。脱退を考える国もあるというから、中国も手を広げすぎて収拾がつかなくなってきた。自業自得の面が大きい。

     

    (7)「米エンタープライズ研究所(AEI)研究員のゲーリー・シュミット氏も、『VOA』に対して「欧州各国を分断させようとする中国(共産党)の戦略はある程度の効果はあるが、中国の振る舞いに対する国際社会の反感を増幅させている」と述べた」

     

    中国の狙った中東欧と欧州の分断戦術は、見事に失敗の様相が濃くなっている。こういう流れが強まると、中国には大きな逆風になる。中国は、明らかに窮地に立たされている。

     

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    中国習近平氏の強硬策は、先進国の反発と警戒心を一斉に高めている。中国に対して「寛容」な国はなくなった。唯一、ドイツのメルケル首相は中国へ親近感を持っているが、今秋に引退予定である。こうなると、もはや一国も中国を受入れる国はなくなる。

     

    NATO(北大西洋条約機構)は2月17日、バイデン米政権の発足後、NATOとして初の閣僚会合となる国防相理事会を開いた。この席で、米欧同盟の修復へ2030年に向けた新しい改革構想の検討に入った。年内に開く首脳会議で採択をめざすという。主要課題のひとつが欧州やサイバー空間、北極圏でも存在感を増す中国との対峙である。

     

    NATOは1949年、欧州防衛が目的で結成された。主として、旧ソ連の進出を警戒した軍事同盟である。だが、中国の軍事進出という新たな危機を迎えて、全世界的な警戒網設立へ動き出しそうだ。中国にとって、まさかNATOまで敵に回すとは想像外の事態だろう。

     


    『日本経済新聞 電子版』(2月18日付)は、「NATO、中国の『脅威』対抗 2030年へ新構想」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「NATO理事会では、ストルテンベルグ事務総長が「NATO2030イニシアチブ」と題した30年までの改革構想を加盟国の国防相に提案した。米新政権の発足を機に新たなNATO像をまとめ、トランプ前政権時代に深まった同盟の亀裂修復につなげたい考えだ。「欧州と北米の関係の新しい章を開くまたとない機会だ」。ストルテンベルグ氏は17日、理事会初日の協議終了後の記者会見で力を込めた。欧州防衛を軽視するかのような言動を繰り返したトランプ前政権時代に冷え切った米欧関係の改善に期待を寄せた」。

     

    NATOは2030年までに、「NATO2030イニシアチブ」をまとめることになった。新たな脅威となった中国へのNATO戦略構想をまとめる。NATOにとっても中国の軍事進出が、ついに脅威として受け取られることになった。

     


    (2)「ストルテンベルグ氏は理事会で、20年12月に公表した専門家グループの報告書に基づき、加盟国の国防相にNATOが対処すべき課題と、対応の方向性を提示した。ロシアと並列する形で中国の脅威への対抗を前面に打ち出したのが特徴だ。17日の記者会見では「世界中の民主主義の同志国との協力強化」で「ロシアや中国のように価値を共有できない国々に傷つけられているルールに基づく秩序を守ることができる」と強調。具体的な提案内容は説明しなかったが、報告書が提言した日本やオーストラリアとの連携強化などが盛り込まれたもようだ

     

    NATOは、日本や豪州との連携強化を視野に入れているという。北大西洋条約機構理事会はすでに2018年7月、ブリュッセルの在ベルギー日本大使館へ、「NATO日本政府代表部」を開設すること認め、開設済みであるという手際の良さだ。日本政府が、安全保障政策で万全の構えをしていることについて、それなりの評価をすべきだろう。

     


    「NATO2030イニシアチブ」では、日本やオーストラリアとの連携強化が盛り込まれる方向のようだ。米国は、「クワッド」(日米豪印)プラスαで「アジア版NATO」を模索している。NATOが、このアジア版NATO結成に協力することになれば、アジア各国も参加するだろう。とりわけ、南シナ海で中国に島嶼を奪われたフィリピン、ベトナムなども有力候補に挙がってくる。

     

    そういう事態になれば、中国は一挙に劣勢に追込まれる。中国は、莫大な軍事費を投入して周辺国を威嚇してきたが、もはやその効果がないと分かった時、国内はどういう状況になるだろうか。現在は、「中華再興」と国威発揚に燃えているが、急速な高齢化と社会福祉費増大の中で、軍事負担に耐えられないことを認識したとき、中国は「第二のソ連化」する可能性がある。

     

    『ロイター』(2月20日付)は、「中国台頭は『決定的問題』、NATO事務総長が危機感」と題する記事を掲載した。

     

    (3)「北大西洋条約機構(NATO)のストルテンベルグ事務総長は19日に開かれたミュンヘン安全保障会議で、欧州や米国、カナダに対し国際的ルールに基づく秩序の維持を訴え、中国の台頭はNATOにとって問題だという認識を表明した。「中国とロシアは自らの利益のためにルールを書き換えようとしている」とした上で、「中国の台頭は大西洋を挟む社会にとって決定的な問題であり、われわれの安全保障、繁栄、生活に影響をもたらす可能性がある」と述べた。NATOは依然としてロシアを主な敵国と見なしているが、中国の軍事的影響力拡大に対応するため、同盟の主要方針である「戦略概念」に中国を含めることを検討している

     

    下線部分は、極めて重要である。中国をNATOの「戦略概念」に含めることを検討しているとした。これは、ロシアと並んで新たに中国を自由と民主主義の「敵」と位置づけることだ。私はこれまで本欄で、アジアの安全保障政策としてNATOとの協力が不可欠と主張してきた。これが現実化すれば、世界の安全保障体制は大きく変わるだろう。

     

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