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7月6日からの対米関税引き上げをめぐって、中国国内では通関に遅れたために、特別関税を掛けられる「不運」が起こっている。同じ荷主で9個のコンテナで3個は「フリーパス」、残りの6個には引上げ関税が掛けられたという妙なニュースが報じられた。

 

『ブルームバーグ』(7月9日付)によると、カリフォルニアから上海税関を通じて食肉を輸入しようとしていた中国の大手食肉輸入業者、蘇州華東食品は極めて高コストの米国産ステーキを何とかしてさばかなければならなくなった。新たな関税導入前に税関を通過できたのは冷凍の牛プライムリブや豚ロースなどを積んだ3個のコンテナだけ。残り6個には、1個当たり最大50万元(約830万円)の関税が課された。いかにも中国で起こりそうな嫌がらせである。輸入業者には何の落ち度もないのだ。

 

コンテナ1個分の食肉の関税が830万円とは驚く。食肉輸入業者は「米牧場からの食肉購入を大幅に減らすことは確実だ」と語ったという。この嫌がらせには裏があって、商務省は米国以外からの輸入を促進させる手段に利用している節が窺える。

 

今回の米中貿易戦争は、「中国の敗色」濃厚である。中国は、メンツのため負け戦を覚悟で臨んでいる。その対策が始まっているのだ。引上げられた関税収入を、米国での関税引き上げで採算困難になった企業の救済に当てるというもの。中国商務省が7月9日に発表した。

 

中国は、米国への報復で大豆に25%の関税を掛けると発表している。輸入季節の関係で、米国産大豆に依存せざるを得ない事情がある。そこで編み出された手が、「国家備蓄用の大豆には引き上関税分を還付する」という方針である。中国特有の「上に政策あれば下に対策あり」という抜け穴が準備されているように思える。

 

『ブルームバーグ』(7月9日付)は、「米国産大豆の輸入関税、国家備蓄分は業者に払い戻しへ」と題する記事を掲載した。

 

「中国は米国からの大豆輸入について、国家備蓄用の購入を対象に25%の関税負担分を輸入業者に払い戻す方針だ。事情に詳しい複数の関係者が明らかにした。関係者らによると、現時点で海上輸送中の米国産大豆のうち、少なくとも貨物1隻が国家備蓄用に購入されたものという」

 

先の食肉業者の例から言えば、同じ輸入貨物でも7月5日の時間ぎりぎりで通関したものと、暦の上で6日になって通関したのは荷主の責任でない。通関業務を担当している側の責任である。この場合は、関税引き上げ前の税率を適用すべきもの。一方、国家備蓄用の大豆については、海上輸送中で通関どころの話でない。明らかに7月6日を過ぎている。それにも関わらず、関税を還付するという特別待遇を行なうのは不公平な扱いである。

 

先の食肉業者が法的に訴えることが可能であれば、中国政府のこの矛楯した対応の是非が明らかになろう。と言っても、中国では政府が絶対権力の保持者である。食肉業者が訴えてももみ消されるか、後から酷い報復されるに決まっている。中国は、法があっても無きに等しい国である。泣き寝入りするほかないのだろう。