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古代から中国と朝鮮半島は、切っても切れない関係にある。宗主国としての中国は、無条件で韓国に影響力を与えられるものと過信している。習近平政権になって、韓国への姿勢はますます露骨になった。だが、米朝の直接交渉が始まるとともに、中韓関係は微妙になりつつある。韓国はこれまで中国へご機嫌伺いの外交をしてきた。理由は、中国の影響力に期待した、北朝鮮の軍事的な暴走の抑制にあった。

 

この中国への期待は、もはや消えている。南北会談によって直接の意思疎通が可能になったことである。米朝会談が破談にならない限り、安保面における対北朝鮮問題の比重は、ぐっと下がってきたことは疑いない。

 

こうなると、韓国特有の「恨み」が頭を持ち上がってきた。「中国はけしからん」という思いが強くなっているのだ。

 

第一は、韓国がTHAAD(超高高度ミサイル網)設置によって、中国から受けた経済的な報復である。中国へ進出していたロッテのスーパー(100店余)が、消防器具の設置不備というでっち上げによって閉店を余儀なくされたこと。同じく、中国へ進出していた現代自動車が不買対象にされたこと。韓流ドラマや映画の上映禁止措置を受けたこと。中国からの訪韓旅行が止められたことなど、嫌がらせのオンパレードであった。

 

第二は、昨年の文政権が中国へ国賓として招かれながら、待遇面で酷い仕打ちを受けた。中国指導部との会食は訪中3日間で一度だけ。後は、文氏が随行団と食事をするという、国賓待遇ではあり得ないことであった。共同発表も共同記者会見もない、気の毒なほどの粗略な扱いを受けた。また、随行記者団が韓国側の雇ったガードマンに殴打され入院する騒ぎまで起こした。中国からは、謝罪もなく「韓国の雇ったガードマンゆえ中国に責任はない」という屁理屈で逃げられた。

 

第三は、韓国に冷たい仕打ちをしながら、長いこと没交渉だった北朝鮮へは、短期間に3回も首脳会談を開くなど、韓朝に対して、全く異なる対応していることである。

 

文在寅大統領就任(昨年5月)以来、文政権の「親中」姿勢はことごとく打ち砕かれた。こうして、「かわいさ余って憎さ百倍」にも近い心情が韓国に起こっているのだ。中国は、この変化を見落としている。従来、韓国は米中間にあって「コウモリ」のようなどっちつかずの姿勢だったが、中国へ背を向ける可能性も出てきた。北朝鮮も米国へ接近する事態となると、朝鮮半島は一度に中国から離れることになりかねない。その責任は習近平氏が負うことになろう。

 

『中央日報』(7月16日付)は、「韓国国民が中国を非常に偏狭な大国と見なし始めた

」と題する記事を掲載した。

 

この記事では、韓国国民が中国を非常に偏狭な大国と見なし始めたと指摘している。超高高度ミサイル網(THAAD)の韓国配備をめぐる中韓葛藤の最大の害悪は、韓国人の中国に対する認識悪化である。習氏は、韓国を甘く見過ぎたようだ。「一寸の虫にも五分の魂がある」ことを忘れた「大国ボケ」の振る舞いであった。

 

(1)「鄭在浩(チョン・ジェホ)ソウル大政治外交学部教授は、『THAAD紛争で韓中両国はともに戦略的な失敗をした』とし、『10・31合意』(注:韓国は中国の安保を損ねるような取り組みをしない)で、韓国は中国にTHAADがすべて永久解決するという希望を与えた。だが、THAADは依然として両国関係の障害であり、いつ消えるか分からない」と評価した」

 

中国は、THAADが中国の安保面で技術的な阻害要因にならぬことを充分に知り抜いていた。それにも関わらず、韓国へ執拗なまでの報復を続けたのは、韓国を属国扱いして、徹底的にいじめ抜いて「骨抜きにする」という朝貢外交路線であった。これが、次のパラグラフで取り上げられる「シャープパワー」である。主導したのが、習近平氏に他ならない。

 

(2)「鄭教授は、『中国は5年前に朴槿恵(パク・クネ)前大統領が就任すると、外交的ブルーオーシャンを見つけたと考えたが、2年半後に楽観はTHAADで崩れた』とし『朴前大統領と習近平主席の個人的な友情に過度に期待したことと、両国関係の躍動性を過度に政治化したのが誤り』と分析した。西欧は、『THAAD後の韓国に対する中国の経済報復をシャープパワー(Sharp power)と呼ぶなら、韓国人は(中国に対して)小さな大国(小気大国)と呼ぶ』と話す」

中国外交は、首脳同士の絆が重要であると解釈している。阿吽(あうん)の呼吸で物事を決められると誤解しているのだ。こうして、相手首脳に物的な贈与をして関心を引く。こういう「物量外交」が、中国の得意戦略である。鄭教授は、これが間違いだと示唆している。外交は、腹芸でなくシステマティックに展開すれば安定的な関係が築けるはず。中国は、この面が欠落した国だ。

 

中国は、腹芸外交ゆえに「シャープパワー」という強引な外交を展開する。韓国への経済報復はその典型だ。ドロドロした中国外交は、スマートな現代外交の基本から大きく離れた存在である。