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韓国の大学が、日本の原発事故による被害の間違いを訂正すべく、電子ブックを発行するという。普段では考えられないことが起こっている。韓国最高峰のソウル大学が2011年、東日本大震災の津波で被災した原発事故によって、日本中にがん患者が急増した。そういう噂が、韓国中に広まっているからだ。これが、原発に対する一連の「怪談」を生み出すきっかけになっているという。

 

韓国の文政権は「反原発主議」である。原発を止めてクリーンエネルギーに転換することを政策目標に据えている。日本でも小泉元首相が「反原発運動」の先頭に立っている。クリーンエネルギーは理想だが、コストがべらぼうに高くつくのも事実だ。標語の持つ重みは、日本のように原発事故が起こった国では一層大きいものがある。だが、科学技術発展という日本の立場では、リスクの少ない技術開発も捨てがたいであろう。原発は危険だから止める。これでは、技術の発展があり得ない。

 

韓国では、「反原発論」の普及を急ぐ市民団体によって、日本の原発事故の被害が針小棒大に伝えられている。韓国が、日本の海産物輸入を禁止してきた背景も、この間違った「原発被害論」が何ら訂正もされずに闊歩してきた結果だ。

 

『中央日報』(7月16日付)は、「ソウル大学が反論文書、日本原発事故でがん急増? 脱核教材は怪談レベル」と題する記事を掲載した」

 

ソウル大学は、原発事故に関わるウソ垂れ流しの現状を見逃がさず、「反論」に立ち上がった。ソウル大学原子力政策センターが7月17日、電子ブック『脱核教材を再考してみること』を出版するもの。全羅北道教育庁が2015年に製作した補助教材『脱核で描くエネルギーの未来』(以下、脱核教材)に一つ一つ反論する内容が含まれているという。実態を正しく把握できない「怪談」レベルの教材では、青少年に原子力に関する誤った認識を持たせる可能性があると懸念したという。環境運動家の教師らが執筆したこの脱核教材は、昨年10月、国会国政監査の時にも偏向性問題が取り沙汰された曰く付きの補助教材である。

 

(1)福島乳児の死亡率が増加?
「脱核教材には、『2011年の福島原発事故以降、がんと白血病による死亡者が増え、乳児死亡率が急増した』と記述されている。原子力政策センターは、原子放射線の影響に関する国連科学委員会(UNSCEAR)および国際原子力機関(IAEA)による調査の結果、日本で原発事故以降に放射線にさらされて死亡したり急性疾患を患ったりした人は一人もいないと強調した」

 

(2)日本全域がセシウムで汚染?

「脱核教材は、『原発事故後、東京さえも高濃度汚染地域になった。日本国土のほとんどがセシウムで汚染されたというのが専門家の推定』と主張した。これは事実に反するというのがセンターの説明だ。日本政府が事故当時に避難指示を与えた地域は計1150平方キロメートルで、日本全体の0.3%だった。東京は含まれていなかった。今年3月3日基準の東京の放射線量率は0.066ミリシーベルトで、むしろソウル(0.153)の半分以下だ。現在の危険地域は日本全体の0.09%に過ぎない」

(3)弱い放射線でもDNA損傷?

「脱核教材は、『弱い放射線でもDNAを損傷させて不妊や奇形児の出産、がんなどを誘発する』と強調した。センターは、『成人男性の体内には7000ベクレルの放射能があり、年間約0.3ミリシーベルトほど内部被爆する』と説明した。韓国の自然放射線被爆線量も1~3ミリシーベルトに達する。UNSCEARによると、人体に影響を及ぼし始める放射線有効線量は約100ミリシーベルトだ」


(4)原発周辺の人々に甲状腺がんが急増?

「脱核教材は、『韓国内でも原発周辺住民の甲状腺がんの発病率がその他地域と比べて2~3倍高いという調査結果が発表された』と紹介した。これも科学的根拠が不足しているというのがセンターの説明だ。2016年がん発生地図によると、甲状腺がん発病はむしろ大都市に集中していた。検査率が高いほど発病率が上がるためだ」


(5)原発は経済的ではない?

「脱核教材は、『事故のリスクおよび解体費用を欧州並に反映させると、原発は経済的ではない』と主張している。一方、センターは『韓国は事故1件当たりの損害賠償措置額を4700億ウォン(約468億円)、解体費用を6400億ウォンで計算している』とし、『先進国より高い水準』と明らかにした」

 

韓国でも、この経済性の問題が議論されている。次の記事は、原発と太陽光発電を比較したケースである。

 

太陽光はエネルギー効率の低さが問題とされている。原発と比較した場合、同じ電力を生み出すのに太陽光は60倍の敷地が必要になるという。釜山市北部の新古里原発56号機と同じだけの電力を生み出すには、500万以上の世帯が3キロワット容量の太陽光パネルを屋根に設置しなければならないそうだ。そのため今後も太陽光パネルの設置を進めるとなれば、今以上に山を削っていくしか方法はないだろう」(『朝鮮日報』6月24日付コラム「山を削って設置した太陽光パネルの発電効率」)

 

原発の是非をめぐる問題は、合理的に検討すべきものだ。韓国で行なわれている、ウソに基づく感情的な反対論でなく、冷静な議論を望みたいものだ。