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鉄の団結を誇る中国共産党の内部がざわついている。習近平国家主席への個人崇拝に反対する動きが表面化しているからだ。毛沢東に対する個人崇拝が、10年にわたる文化大革命という騒乱をもたらした。この反省に立って、個人崇拝を止めたはずである。だが、習氏の無期限「国家主席」への道が開かれた途端に、再び習氏への個人崇拝の動きが出始めたもの。

 

党内で、個人崇拝を阻止しようという動きがあることは、習氏の統治が万全でないことを物語っている。この背景には、米中対立問題が蔭を落としていることは言うまでもない。「中国製造2025」は習氏が音頭を取って始めた事業だ。米国がここへ狙いを付けて、貿易戦争を仕掛けてきた。中国は有効な対応ができず、右往左往している。

 

習氏は当初、「米国に殴られたら殴り返す」と威勢いのいい啖呵を切っていたが、7月に入って方向転換した。「米国と争うな」と言う始末である。米国への報復関税を科す前に、党内では闘わずに妥協の道を選べという意見が公然と出ていたほど。それを一蹴しておきなら、トランプ氏が「5000億ドルの製品に10%の追加関税」と発言した途端、方向転換を言い出したことへの批判だろう。

 

米中対立の始まりは、習氏の演説である。昨年秋の党大会で、2050年ごろに米国の覇権に対抗する経済力と軍事力を保持すると言い放った。これが、米国トランプ大統領の怒りに火を付けた可能性がある。「米国第一」は「世界第一」の宣言であったとも読める。習氏は、米国を甘く見て「放言」したのだ。

 

以上の習氏を取り巻く事態の変化を頭に入れて、次の記事を見て頂きたい。

 

『共同』(7月15日付)は、「習主席統治に不満噴出か、党内に異変相次ぐ」と題する記事を掲載した。

 

中国共産党内で、権力集中を進める習近平国家主席の統治手法に不満が噴出しているとの見方が出ている。国営メディアが習氏への個人崇拝批判を示唆、習氏の名前を冠した思想教育も突然中止されるなどの異変が相次いでいるためだ。米国の対中攻勢に手を焼く習氏の求心力に陰りが出ている可能性も指摘される。『習近平同志の写真やポスターを全て撤去せよ』。12日、習氏の宣伝用物品を職場などに飾ることを禁じる公安当局の緊急通知の写真が出回った。通知の真偽は不明だが、写真は会員制交流サイト(SNS)などで一気に拡散された。同時期に国営通信の新華社(電子版)は、毛沢東の後継者として党主席に就任した故華国鋒氏が個人崇拝を進めたとして党内で批判を受けた経緯を詳述する記事を伝えた。党が80年に『今後20~30年、現職指導者の肖像は飾らない』と決定したことにも触れた。記事はすぐ削除されたが、習氏を暗に非難したと受け止められた」

 

習近平氏は、どんなに力んでみても毛沢東にはなれない。そういう限界を教えているのかも知れない。毛沢東が率いた中国社会と、習近平が率いる中国社会では質的に異なっている。それに、毛沢東は共産党「創業者」である。習近平は雇われ社長に過ぎない。習氏は、この違いを自覚して行動しないと、永久政権は空手形に終わる可能性が強い。党員と国民を畏れる。そういう謙虚な姿勢が求められているように見える。