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日本は、今年10月から1年間の最低賃金を「26円」の引上げに決めた。「1円」の引上げ幅をめぐって10時間も議論を重ね、25日午前0時40分に決着をみた。『韓国経済新聞』は、日本のこの慎重審議に比べ、自国の審議状況に疑問を呈している。

 

「(日本の)審議時間が10時間を超えたのは3年ぶりだ。難航していた理由はわずか『1円』をめぐり労使政間の溝を埋めるのが容易でなかったためだ。前年と同じく25円(2.9%)上げるのか、過去最大規模となる26円(3.1%)上げるのかをめぐるかけひきが続いたのだ。(韓国は)昨年、最低賃金を一気に1060ウォン(16.4%)上げたのに続き、今年も労使間の十分な協議もなく820ウォン(10.9%)引き上げた韓国と非常に対照的だ」(『韓国経済新聞』7月26日付)

韓国の来年の最低賃金8350ウォン(約825円)である。全国一律である。実際の支給時には週休1日分が加算されるので、実質最低賃金は1万20ウォン(990円)である。この事実は意外に知られていない。日本の労働運動関係者ですら、「韓国の最賃引上は素晴らしい、日本も見倣え」と言った調子である。

 

日本の最賃は、地域ごとの事情を勘案して決められる。来年からは次のようになる。

 

「東京(985円)、大阪(936円)、名古屋(898円)、京都(882円)、横浜(870円)など一部大都市圏を除くと最低賃金絶対額の側面でも日本のほとんどの地域を圧倒する。47都道府県のうち15位水準だ。福岡県(814円)、奈良県(811円)、福井県(803円)、沖縄県(760円)など日本の中堅都市と観光中心地の水準を大きく上回る」(前出の『韓国経済新聞』)

 

韓国の実質最低賃金は、前述の通り990円である。日本の最高の最賃に位置する東京を「5円」上回る計算だ。日韓の所得水準格差を考えれば、韓国の実質最賃は支払う側にとって、極めてハードルが高くなっている。韓国の最賃は違反には罰則を伴うだけに、支払い不能=従業員解雇という最悪ケースにつながっている。

 

韓国文政権は、労働者の生活改善という視点から最賃を引上げている。だが、生産性を上回る引き上げを強制している事実を忘れている。日本の最賃引き上げでは、「1円」の幅をめぐって10時間も議論を重ねた。無論、批判しようと思えば可能だが、最賃引上によって解雇者が出るという本末転倒なことを防がなければならない。

 

ソウルの「江南」(カンナム)と言えば、韓国を代表する大企業の本社ビルが集まり、高層ビルが多い街として知られている。江南駅周辺は各種のレストランやショップが集まる超一等地だ。このブランド商店街の店舗権利金が、これまでは2000万円から3000万円もしていた。それが今、「権利金なし」へと変わったというのは、見過ごせない重大事である。それだけ、集客力が落ちている証拠だ。韓国の消費景気が、いかに冷却化してきたかを物語る。商店主は、急激に上がる最低賃金を支払えないのだ。韓国の最賃は、労働者を苦しめる制度になってきた。