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韓国主要メディアは連日、経済の逼迫化を取り上げている。例の最低賃金の大幅引上げが、零細企業の人件費を押上げ経営を圧迫している問題だ。これが、アルバイトなど非正規雇用者の解雇を引き起こしている。良かれと思って行なった最低賃金大幅引き上げが、アルバイトの解雇をもたらすという「意図せざる結果」を招いたのだ。

 

韓国文政権が、経済全体の仕組みを理解せず引き起こした問題だが、日本はどうだったのか。アベノミクスが、米欧の行なった異次元金融緩和政策を導入して、経済は急速に好転した。失業率は2%台まで低下し、大学3年生まで「青田刈り」が始まるご時世だ。韓国の大学生が大挙して日本企業へ就職する時代になった。韓国メディアが、「反日論調」を捨てて、日本羨望論を書くまでになった理由である。

 

『中央日報』(7月27日付)は、「隣国の日本は慶事を迎えているが」と題するコラムを掲載した。筆者は、同紙のナム・ユンホ東京総局長である。今年、東京へ再赴任したベテラン記者だ。

 

(1)「アベノミクス景気は続いている。期間は1965年10月~1970年7月の『いざなぎ景気』、2002年1月~2008年2月の『いざなみ景気』を超えた。もちろん経済が大きく成長したというわけではない。先進国で高度成長は望めない。経済が長期間の結氷状態から抜け出し、一定の体温を維持して定速走行をしていることが重要だ。安倍晋三首相は経済学に精通しているわけではない。デフレ脱却という方向を確実に定めただけだ。その方向性が国民の支持を基礎に実務陣の政策と結合し、国家の意志として貫徹されたのだ」

 

日本では、安倍政権支持率が「モリ・カケ」問題で大きく下がった。だが、一定の線で留まり底割れを防いだ。これは、若者たちの支持が高かった理由とされている。この世代は、新聞よりもスマホから得た情報を重視する。だから、新聞・テレビの既成メディアがいくら安倍批判をしても、安倍退陣にならなかったと説明されている。

 

現象面では、この通りである。ただ、就職率は良く転職も自由という現在の日本経済は、大袈裟に言えば「有史以来」である。今の年配者が就職試験を受けるとき、これほどの「売り手市場」の到来を想像しただろうか。若者がアベノミクスを率直に評価するのは、「勉強不足だ」「新聞を読まないからだ」と批判するのは正しいだろうか。若者は、働く場所を自由に選べる時代に生きている。確かに「慶事」であろう。

 

(2)「韓国政府の経済政策も方向性は確固たるものだった。誤った方向で、だ。このため実務陣(注:官僚)は収拾することが多い。韓国の官僚は本当に忙しい。後遺症・副作用の解決策を考えるのに余念がない。ちょっとした処方はすぐに作り出す。経済という船の船長を引き受けた人も航海戦略について悩むより、水が漏れるところをふさぐのに忙しい。問題の根本原因には背を向けている」

韓国経済の失策は、アベノミクスと逆のことを行なったからだ。「所得主導成長」と称して、最低賃金を引上げれば、個人消費を刺激して経済は上手く循環すると見ていた。これは、

正しい政策に思えるがそうではない。賃金にはそれに見合った、あるいはそれ以上の利益(生産性)が上がらなければ、賃金を払えない仕組みである。

 

利益を上げるには、企業が活発な設備投資をして生産性を引上げることが前提になる。設備投資は、韓国経済の未来が明るい展望を描けて初めて踏み切れる。現在の韓国政府は、「反企業主議」である。これでは、絶望しか待っていない。事実、この4~6月の設備投資はGDP統計によると、前期比-6.6%、9四半期ぶりの大きな落ち込みである。これでは、大幅な最賃引上げは困難であろう。韓国の若者は、文政権を支持していない。就職率悪化が原因であろう。