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韓国も猛暑である。この暑さで頭がおかしくなったのでないか。そう思われる事件が仁川で起こった。

 

仁川と聞けば、若い人たちには「仁川空港」がイメージされる。年配者には、「朝鮮戦争でマッカーサー元帥が立案し大成功を収めた、仁川奇襲作戦」であろうか。韓国軍は、北朝鮮軍の侵略で釜山まで追い詰められ絶体絶命の危機を迎ええていた。李承晩大統領(当時)は、日本の山口県に韓国政府を移転させる案まで立てたという。その韓国を救ったのが、仁川奇襲作戦である。韓国が共産主義の支配下に屈しなかった歴史的な軍事作戦である。

 

こういう歴史的な意味のある「マッカーサー元帥像」が、左派系牧師らによって深夜、放火される事件が起こった。マルクス主義者が放火したというならば、韓国の赤化を妨害した「犯罪人」として反発したと思われる。だが、心の自由を説き、イエスキリストの道を諭す牧師の犯罪だけに驚く。同時に、韓国にある屈折した「親北・反米」の根強さを象徴する事件であるようだ。

 

『朝鮮日報』(7月28日付)は、次のように報じた。

 

(1)「仁川中部警察署は27日、仁川市中区の自由公園にあるマッカーサー将軍像に火をつけた疑いでイ・ジョク牧師(61)、アン・ミョンジュン牧師(60)ら反米団体『平和協定運動本部』メンバー3人を取り調べている」

 

文在寅大統領もクリスチャンである。こういう過激なグループと関係はないだろうが、心底では通じるものがあるはずだ。文氏の「親中朝・反米」の基本スタンスは、この過激な牧師らによる後掲の「犯行声明」に頷く部分があると見る。

 

(2)「3人は同日午前2時ごろ、はしごを使って高さ4メートルの銅像台座に登り、『私は大韓民国の牧師として民族分断の悲劇をもたらした戦争詐欺師マッカーサーの偶像をもう容赦できない』と叫んで像の足元に布団を巻き付け、火をつけた。また、『占領軍偶像撤去! 世界非核化! 米軍を追放せよ!』と書いた垂れ幕を出して台座の上でスローガンを叫び、降りた」

 

マッカーサーを「戦争詐欺師」と呼び、民族分断の悲劇をもたらした張本人と位置づけている。マッカーサーが、仁川奇襲作戦さえ行なわなかったら、北朝鮮の勝利に終わったはずだというニュアンスである。朝鮮半島は、全て共産主議で統一されたと悔しがっているのだ。これが、心の自由を説いている牧師の本音である。北朝鮮の現状を見ればわかるように、人権が抑圧されている。韓国国民を、この状態にしようというのは、牧師として失格であろう。

 

(3)「3人は一部メディアに送った文で、『共産化を防ぐことを名分に軍隊を永久駐留させ、戦争侵略演習をする米国は、韓国を支配しようとする戦争収奪国の帝国主義者に過ぎない』と主張した。また、『マッカーサーは南北を分断させた元凶であり、満州と我々の土地に核爆弾使用まで計画していた張本人であるのにもかかわらず、我々には共産化を阻んだ偶像としてあがめられている』と主張した。この放火により像の左脚の一部がやや焦げたが、大きな被害はなかった」

 

南北の分断は、マッカーサーの決定ではない。彼は、第二次世界大戦の戦後処理を決めたヤルタ会談と米ソの話合いに従ったまでなのだ。米国の「文民統制の原則」(シビリアン・コントロール)によって、軍人が政治に介入できないシステムになっている。マッカーサーが、米大統領のトルーマン(当時)に解任された理由は、朝鮮戦争で原爆投下を進言して逆鱗に触れ、国連軍総司令官の座を追われた。ここにも、「文民統制の原則」が生きている。