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米国は、トランプ氏の1期目の大統領任期中に、北朝鮮の核放棄を目指す姿勢を堅持している。北は、先に朝鮮戦争で死亡した米兵の遺骨を送還して善意を見せた。これを材料に使い、朝鮮戦争の「終戦宣言に応じろ」と要求している。

 

北にとっては、「終戦宣言」は錦の御旗である。これさえ手にすれば、もはや米国の軍事攻撃は不可能になる。現状は、「休戦」に過ぎないから、いつ米軍の攻撃が再開されるか分らない。だが、米国はこの「証文」を渡してしまったら後の祭りになる。

 

これまでも、北はのらりくらりとして約束を反故にし、逃げ回って核開発を続けてきた前歴がある。現に最近、核物質の生産を続けていることが判明している。名うてのトランプ氏は、最後の詰めの段階で、北に一杯食わされたら「末代までの恥辱」になる。これまで、歴代米大統領を批判してきただけに、慎重の上にも慎重になっているようだ。

 

「朝鮮日報」(7月30日付)は、「米、核リスト出さないなら終戦宣言応じない」と題する記事を掲載した。

 

(1)「北朝鮮は米兵の遺骨55柱を返還したのをきっかけに韓国戦争(朝鮮戦争)の『終戦宣言』を強く求めているが、米国は北朝鮮が『核申告リスト』を提出しなければ終戦宣言論議に応じられないという見解を北朝鮮側に伝えたことが29日、分かった。非核化の本質にかかわる直接的な措置がなければ、北朝鮮の体制を保証する論議は始められないということだ」

 

北の魂胆は分っている。米兵の遺骨を送還した見返りを求めている。それが、「終戦宣言」である。「取引条件」としては、北が圧倒的に有利なものだ。米国は、これを飲むはずがない。北は、頻りと「信用しろ」と言っている。過去が過去だけに、「ハイ、そうですか」と承知するはずがない。このくらいのことは分かりそうなことだ。

 

(2)「外交消息筋は同日、『米国務省はまず、本格的な非核化に関する前提条件が満たされることを要求している。北朝鮮の核・弾道ミサイル所在地を含む核計画全体のリストを最優先で提出するよう、北朝鮮に圧力を加えている』と語った。マイク・ポンペオ米国務長官も7月初めの訪朝時、『まず終戦宣言を』と要求とする北朝鮮側に対し、『核リスト提出が先だ』との見解を明らかにしたという。韓国政府筋は『米国は北朝鮮が先に核を申告しなければ非核化に対する真摯(しんし)さが分からないことや、“北朝鮮にだまされた”という米の官民の批判をある程度鎮められないと判断している』と述べた。米メディアで最近、軍や情報当局の話として、『北朝鮮は米朝首脳会談後も核・ミサイル能力を隠ぺいしている』という報道が相次いだのも、北朝鮮に申告させようと圧力を加えるためのものと受け止められている」

 

北は、「終戦宣言」の意味を軽く見ている。文字通り、国際法上の「朝鮮戦争終結」宣言である。一切の戦闘行為を永遠に終わらせることだから、北朝鮮にとってこれほど好都合な話はない。今も、隠れて核物質の生産を継続している。核放棄の意思がないことを宣言しているに等しい。米国が、これを見逃すはずがあるまい。

 

北は、戦略を間違えているように見える。あの不倶戴天の米朝首脳会談が、開くまでになったことは成功である。北の国民にも大きな希望を与えた。金正恩氏は、「経済復興」第一を宣言したが、現状では経済制裁の解除見通しは立たないのだ。いずれ、ジレンマに立たされる。

 

金氏は、心から「核放棄」する気持ちになっていないのでないか。まだ、「核未練」を残している。彼は、この迷いを払拭しない限り、自縄自縛に陥る危険性が高い。ここまで米朝交渉が進んできたのは、トランプ勝利と言える。米国は、北に何も与えていないからだ。ただ、核放棄後の「目録」だけは見せている。欲しかったら、核を捨てな、というスタンスである。