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パキスタン新政権が間もなく発足する。「親中」傾向の強い政権と見られている。問題は、パキスタンが中国から融資された債務を、IMFからの融資で肩代わりさせるのでないか。米国が早くも釘を刺している。

 

中国は、「高利貸し」である。6%台の高い金利を付けて融資し、その資金で中国建設業に工事を請け負わせている。金利で稼ぎ、工事受注で稼ぐという「ダブル・インカム」である。口では立派なことを仰せだが、やることは徹底的に相手国を搾取する「現代の帝国主義国家」である。この実態が分らなくて有り難がる指導者が後を絶たないのは、たっぷりと賄賂を渡して、目を曇らせる戦術をとっているからだ。

 

パキスタンは、間もなく財政破綻に落込むと見られている。今秋のIMF融資は不可避とされている。IMF資金を融資するとなれば、IMF最大出資国の米国が、目を光らせていることはいうまでもない。その、前哨戦が始まった。

 

『ロイター』(7月30日付)は、「IMFのパキスタン支援、中国への返済充当は認めず=米国務長官」と題する記事を掲載した。

 

(1)「ポンペオ米国務長官は7月30日、パキスタンの新政府に対し国際通貨基金(IMF)が緊急援助を行う場合、その資金は中国からの融資返済に充てられるべきではないと警告した。パキスタンでは25日に実施された総選挙で、クリケットの元スター選手イムラン・カーン氏の率いる野党・パキスタン正義運動(PTI)が勝利。今後、新政権が成立する見通しだ」

 

パキスタン新政権を率いるのは、親中派のカーン氏である。カーン氏は、当選に当たり中国への猛烈な傾倒ぶりを見せた。これが当然、米国を刺激しているはずだ。パキスタンが、IMFから緊急融資を仰がざるを得ない事情から、米国がパキスタンで行なっている「一帯一路」プロジェクトに関与する姿勢を見せている。中国が、高い金利をとって中国建設企業に請け負わせている「裏事情」を暴く意向である。

 

(2)「ポンペオ氏はCNBCとのインタビューで、米国として新政府と連携したいとの意向を示したが、中国からパキスタンへの融資の返済にIMFの援助が使用されることには『論理的根拠がない』と主張。『間違えてはならない。米国はIMFの措置を監視していく』と述べ、『IMFの出資金と、IMFの資金の一部を構成するわが国からの出資が、中国の債権者や中国そのものの救済に使用される論理的根拠はない』と話した」

 

米国は、中国をけん制する絶好の機会ができたと身構えているはずだ。「一帯一路」のカラクリを明らかにして、中国がどれだけ利益を吸い上げているか。それを世界に公表する構えである。IMF資金は、米国の出資金も含まれている。米国の利益を害する形の融資に米国資金が使われることに断固反対姿勢である。それ故、「一帯一路」資金で中国から借り入れた債務を、IMF資金で返済させることに「絶対反対」を貫くであろう。

 

(3)「英『フィナンシャル・タイムズ』(FT)紙は29日、パキスタンの財務関連の政府高官らがカーン氏に対し、IMFへ最大120億ドルの支援を要請するよう提案したと報じていた。同国では通貨危機の回避が課題となっており、カーン氏にとって政権樹立後の最初の問題となる見込みだ。多くのアナリストらは5年間で2度目の緊急援助が必要になると分析。インフラ計画へ充当するため、中国政府や銀行からはすでに約50億ドルの融資を受けている。パキスタンは1980年以降、IMFから14回の資金援助を受けた」

 

パキスタン財務当局は、IMFへ最大120億ドルの支援を要請するように新政権へ提案していると報じられている。この資金で、中国から借り入れた約50億ドルを返済させるのでないか疑われているもの。中国が、パキスタン新政権へ甘言で接近し、「一度、中国へ全額返済してくれれば、今後の融資について便宜を図る」というやり取りが想像できるのだ。