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中国の長年にわたる住宅バブルは、最後の爪痕を名もない庶民の家庭にハッキリと刻印している。目の飛び出るような高い住宅を手にした庶民は、毎月の債務返済に必死である。月々の返済が精一杯で消費を切り詰める日々の生活が続いている。

 

考えてみれば、住宅バブルで最大の受益者になったのは中国政府である。地方政府に充分な財源を与えず、土地売却益(土地利用権売却益)で財源を賄わせる前近代的な財政構造である。中央政府が負うべき責任を果たさないで、地方政府に財源を押しつける清国時代の財政を彷彿とさせるのだ。中央政府は何をしてきたのか。軍備増強に励み、周辺国を威嚇することに全勢力を費やしてきた。不思議な政府である。

 

ここで取り上げるアモイ市は、これから中国全土で起こる住宅バブル後遺症がいかなるものかを典型的に示している。その意味で、アモイ市はバブル後に起こる混乱の「ショウ・ウインドウ」である。中国政府は、この状況を認識しているはずだ。昨年末から突然、「農村Uターン運動」を始めた動機が、都市への人口集中抑制=住宅高騰の抑制にあることを窺わせている。中国の経済政策が、場当たり的であると思われる点はここだ。あれだけ、人口の都市化が、中国近代化の証であると笛と太鼓で騒いできた。それが一転、「農村Uターン運動」である。大きな矛楯にぶつかっているはずである。

 

『ロイター』(7月25日付)は、「中国、厦門で消費失速、家計債務が米住宅危機直前の水準に」と題する記事を掲載した。

 

(1)「中国の住宅価格は、所得比でみると世界で最も高い部類に入っており、何百万もの世帯が抱える債務はすでに、住宅危機直前の米国に匹敵する水準に達していることが、上海財経大学の高等研究院の調査で明らかになった。米国との貿易摩擦が熱を帯びる中、こうした債務が消費に悪影響を及ぼし、内需主導の成長を目指している中国政府の障害になる、とエコノミストは警鐘を鳴らす。中原銀行(北京)首席エコノミストのワン・ジュン氏は、減速する所得の伸びと高水準の家計債務により、短期的に消費者が経済成長に寄与するレベルが限られると指摘する。『住宅ローンの重荷が、それ以外の用途に支出できる可処分所得の額に影響を及ぼしている』。特に目立っているのが、福建省の豊かな沿岸都市、厦門市だ」

 

中国沿岸部は、中国繁栄のシンボルである。林立する高層マンション群がそれを示している。だが、ここへ入居するには莫大な住宅ローンを背負わされている。家計から見れば、繁栄のシンボルでなく債務のくびきにあえぐ人々である。こうして、家計は債務返済を優先し、消費を切り詰める哀れな一群の人々に一変した。その理由は、中国の住宅価格が所得比でみると、世界で最も高い部類に入っているからだ。何百万もの世帯が抱える債務はすでに、住宅危機直前の米国に匹敵する水準に達している。この悲惨な状態が、上海財経大学の高等研究院の調査で明らかになった。

 

(2)「約400万人の厦門(アモイ)市住民は、他のどの中国都市と比べても、債務水準が最も高くなっていることが、ロイターによる中銀データの分析で明らかになった。温暖な気候と豊富な魚介類、のんびりとしたライフスタイルで知られる厦門市は、不動産価格の高さでは全国第4位だが、住宅価格が同じレベルにある他の都市と比べると、所得はかなり低い。『厦門のライフスタイルに魅せられて、他の都市から福建省に不動産投機の波が押し寄せ、不動産価格を過去最高の水準に押し上げてしまい、地元住民の間でパニック買いが生じた』と厦門大学経済学大学院のWang Yanwu准教授は語る」

 

アモイ市は、アヘン戦争で1841年にイギリス軍により占領され、翌年の南京条約によって外国人に開港された土地である。華僑発祥の地としても有名で、日本への華僑第一号はこの地域の人々とされている。開放的な雰囲気を持つ土地柄で、他の都市からの移住者も多く、これが住宅価格を押上げる要因になった。こうして、他のどの都市よりも債務水準が最も高くなっていることが、ロイターの分析で明らかにされた。このことは、アモイの住民が住宅バブルの重圧にあえぐ「貧乏くじ」を引く結果になったことを意味する。

 

(詳細は、「勝又壽良の経済時評」8月3日に掲載します)