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中国共産党中央政治局会議は7月31日、今年下半期の経済政策について話し合いが行われた。その結果、緩和的な金融政策と積極的な財政政策を実施する方針を示した。一方、当局は、債務圧縮政策を継続し、「住宅価格の上昇」を断固として阻止していくとの姿勢を示した。

 

この政策転換に対して、中国株式市場は失望を呼び株価は8月1~3日まで大幅な下落となった。欧米メディアは、逆にこの政策転換を評価して中国経済は時間を置いて立ち直るのでないか。そうなると、トランプ政権による「中国圧力」効果が薄れると懸念する報道が出てきた。

 

株価の上海総合指数は8月1日に前日比1.8%安。2日は、同2%安をつけた。3日は、同1%安の2744ポイントに終わった。現在の上海市場は個人投資家よりも機関投資家の参加率が高いとされている。機関投資家は、総合経済対策が打たれても中国経済の先行きに、米中貿易戦争の影響が待っている。そう強く見ている証明であろう。

 

中国経済は、輸出が経済成長率に大きく寄与していると誤解されている。輸出から輸入を差し引いた純輸出のGDP寄与度はマイナスの時期が多いという意外な結果が出ている。

次に、その実績を示したい。

2011年 -0.8%ポイント

  12年  0.2%ポイント

  13年 -0.1%ポイント

  14年  0.3%ポイント

  15年 -0.1%ポイント

  16年 -0.6%ポイント

  17年  0.6%ポイント

  18年 -0.7%ポイント(1~6月)

 

上記のデータを見れば、輸出が中国のGDPを引っ張り上げる力は弱い。加工貿易構造になっているために、付加価値率が低い産業構造である。ここから、「中国製造2025」というハイテク産業計画が登場した理由である。だが、先進国の技術窃取という「技術泥棒」による産業構造高度化計画は許されるものでない。中国は、この辺が見境なく、手当たり次第やるので米国を初め先進国から反発を受けている。

 

本格的な米中貿易戦争に突入すれば、中国輸出はますます減る。純輸出のGDP寄与度は一段とマイナス幅を拡大させるはずだ。この中で、インフラ投資依存というこれまで使い古した方法を引っ張り出しても効果は薄いはずだ。インフラ投資を行なった時点ではGDPを押上げるが、リターンの少ないインフラ投資では収益性が低く、利益による債務返済は不可能だ。インフラ投資をやればやるほど、債務が膨らむ悪循環にはまる。これまで、中国が過剰債務を抱えた理由は、全てここにある。

 

共産党中央政治局会議が7月31日に決めたことは、過去の繰り返しで債務によるインフラ投資の継続・拡大である。債務削減を一時的に中止し、先へ繰り延べるという決定に過ぎないのだ。西側メディアは、この借金漬けインフラ投資の効果が大きいと見ているが、それは誤解だ。インフラ投資に効果があれば、債務拡大という悪循環は起こるはずがなかった。中国のインフラ投資は、極めつけの「非効率投資」であることは間違いない。何ら、評価にも値しない代物である。

 

金融政策も「窓口指導」の復活をするという。日本の高度経済成長時代、資金不足のために、日銀が市中銀行ごとに貸出枠を指示した制度である。中国人民銀行は、この「窓口指導」を利用するが主旨は全く異なる。主要銀行ごとに「貸出増加枠」を決めて実行させるのだ。日銀は、「貸出抑制枠」に使った。同じ「窓口指導」でも中身は180度異なる。

 

中国人民銀行が、ここまでやって貸出を増やそうとする理由は、銀行が貸出しに慎重であるからだ。確実に回収できるか分らない相手企業に融資するはずがない。すでに、「信用収縮」が起こっている。放っておけば新規融資は減るばかりだ。末端の信用状態は、ここまで悪化している。そこで、銀行に新規融資の「割り当て」をして貸出を増やせ、と言っているもの。この辺りの事情が分れば、中国経済が政策転換で蘇る期待は限りなくゼロに近いはずだ。

 

上海総合株価指数が3日連続で安値を更新した事情は、こういうものであったはずだ。ブルームバーグの集計データによると、中国株は8月2日の下落で時価総額が6兆900億ドル(約680兆円)に目減りした。これに対して日本株は6兆1700億ドルで、ついに日本が時価総額で中国を抜いて、再び世界2位の座に立ち戻った。これは、象徴的な話であろう。中国が、時価総額2位の座を滑り落ちた。日本が復活したのだ。