a0800_001085_m

中国政府が8月3日、600億ドル分の米国製品に追加関税をかける対抗措置を発表した。米国は怒り心頭である。中国自らが、技術窃取し企業に補助金を与える。WTO(世界貿易機関)ルールに反する禁じ手を使っているからだ。それにも関わらず「反撃」してきたという捉え方である。カドロー米国家経済会議(NEC)委員長は、「トランプ大統領を過小評価すべきでない」と警告するほど。米国は次なる報復として、すでに「2000億ドル25%関税」案を臭わせている。

 

米国は、中国の米国覇権に挑戦する姿勢を許しがたい振る舞いと見ている。民主主議を否定する中国が、世界覇権を握りたいとする野望は、世界中を奈落の底へ突き落とすに等しいことだ。米国と利害関係を異にする民主主義国にとっても、聞き捨てならぬ話だ。人権と民主主議を守るには、米国を中心にいかに結束するか。米国は、それを示そうとしている。

 

米国は、EU(欧州連合)との貿易協定締結に向けて積極的だ。前記のカドロー米国家経済会議(NEC)委員長によれば、「30日程度の間に成案を得る」としている。米欧が一体化した市場になれば、もはや中国の出番は減る。日本は、このEUと来年になれば日欧EPAが発効する。EU市場を核として、日欧米という世界3極経済が水平統合する歴史的な動きである。さらに来年には、日本をコアにする新TPP(環太平洋経済連携協定)が発効の運びだ。

 

こうした自由貿易協定が全て軌道に乗れば、中国経済は「包囲」される形になる。この拡大市場から、中国が「放逐」されることに何らの危機感もないとすれば、「能天気」国家と呼ばざるを得ない。中国経済の危機は、そこまで迫っている。それにも関わらず、「国民の尊厳と利益」という普段は考えたこともない枕詞を並べ報復措置に出た。自殺行為に見えるのだ。

 

中国は、この程度の認識ゆえに「世界覇権論」について軽々な発言をしているのかも知れない。どう考えても、中国一国が世界を相手に闘いを挑む構図は漫画そのもの。ただ、専制国家というものは、往々にしてこういう幻想に基づいて行動する。中国は、それだけ危険性が高い国だ。中国による妄想実行を阻止するにはどうするか。中国の経済力を削ぐ一方、安全保障政策確立を急ぐことである。

 

中国政府に合理的判断をする人々がいれば、自らの非(技術窃取)を棚にあげて、米国へ報復するリスクを考慮する行動に切り替えるだろう。

 

『日本経済新聞』(8月5日付)は、「中国、貿易戦争で手詰まり感」と題する記事を掲載した。

 

中国国内の政情は、必ずしも「習一強」体制が固まったとは言えない。習側近は、「習崇拝」運動を起こして、支持基盤を盤石なものにしたい。そういう思惑を覗かせている。だが、「毛沢東崇拝」で大混乱した歴史を考えれば、「習崇拝」は恰好の習批判に結びつく危険性がある。今回の米中貿易戦争は、中国国内での「習批判」に結びついている。折から、8月初めは、恒例の党長老らによる「北戴河会議」が開催される時期だ。「習批判」を事前に封じるべく、今回の中国政府による「制裁600億ドル最大関税25%」案が発表されたと見られている。これが、北戴河会議」でどういう反応を引き出すかは不明である。

 

「中国政府が3日、600億ドル(約6兆7千億円)分の米国製品に追加関税をかける新たな対抗措置を発表し、米中の貿易戦争は報復の応酬が激しさを増している。中国側には新たな対抗策を打ち出す余力がなくなりつつあり、トランプ米政権をこれ以上、刺激したくないという本音ものぞき始めた」

 

中国政府による8月3日の報復案は、600億ドルとはいえ米国の激しい反発を招いている、有り体に言えば、「技術泥棒」(中国)が警察官(米国)を襲ったような不祥事である。中国が天に誓って、そのような知財権侵害をやらなかったと言えるはずがない。それを今になって、きれいごとを言い米国へ報復するとはとんでもない振る舞いである。

 

日本でも、鋳物企業で中国の技能生を受け入れたところ、技術を盗まれて中国からの発注はゼロとなって倒産。そういう例は数え切れないほどある。日本は善意で受け入れ、中国の悪意で倒産させられたのだ。