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韓国政治の左派は、条件を問わずに南北統一ができれば、それで良しとする単純な民族主義思考が強い。ただ、この考えは年配者に多く、20代や30代とは異なっている。

 

南北は、同じ民族であるからそれが一緒になろうというのは、ごく自然の動きである。それ自体を批判するのはナンセンスである。だが、北は「金ファミリー」の支配する国家という現実認識を欠かせない。これを忘れて、「南北統一」という動きは危険である。

 

文政権は、単純な民族主義思考である。自らの政治的な実績にしたいという思惑が先行している。この文政権の偽らざる本心は、最近の左派の発言に見られる。

 

『朝鮮日報』(8月12日付け)は、「北朝鮮の核は民族の資産だという幻想」というコラムを掲載した。筆者は、同紙の池海範(チ・ヘボム)記者である。

 

(1)「最近ある会合で左派陣営の出席者がこんな発言をした。『統一後を考えれば、北朝鮮の完全な非核化よりは、一部の核を残しておいた方がよいかもしれない。わが民族が大国の横暴をけん制する上で核を持った方がはるかに有利だ』『南の経済力と北の核が合わされば、この世に恐れるものはない。我々の世代で偉業を成し遂げよう』。南北が平和的に共存、協力する時代になれば、北朝鮮の核は南北共同、すなわち民族の資産になるという論理だ。ゆえに、北朝鮮の非核化にこだわり過ぎず、大きな枠組みで交流、協力を強化すべきだというものだ。彼の発言には出席者数人がうなずいた」

 

左派の人たちは、「空想」に生きる集団である。現実認識が希薄でナイーブな集団とも言える。言葉を換えれば、一度教え込まれた認識から脱却できず、それに拘束されて生きている人々のように思えるのだ。変化する現実を見ようとしない。だから硬直的な政治になる。文政権の最低賃金政策を見ていて、「これが左派政治の本質か」と納得した。

 

北の核への理解も韓国左派の弱点を露わにしている。北を理想化しているので、北の核も容認する姿勢だ。文政権の本音もそこにあるように思える。多少の核はあってもいい。南北融和が進めば、韓国に核を落とすことはない。この程度の認識であるとすれば、日本は深刻にならざるを得ない。

 

(2)「『北朝鮮の核が民族の核』という論理をつくり上げて宣伝してきたのは平壌の政権だ。今年125日、北朝鮮の統一戦線部が発表した「内外の朝鮮民族全体への訴え」はこう主張する。『わが民族が握る核の宝剣は米国の核戦争挑発索道を制圧し、朝鮮民族全体の運命と千万年の未来を固く担保する。民族の核、正義の核の宝剣を北南関係の障害物として売り渡そうとするあらゆる詭弁や企てを断固粉砕しよう』。ここで言う『民族の核』『核の宝剣』とはすなわち、『南の経済力と北の核を合わせれば、世の中に恐れるものはない』という主張に等しい」

 

前のパラグラフで、左派の人々の主張は、北の主張と同一であることが分る。北の主張は、「金ファミリー」を守る主張である。北の専制君主を守る主張に同意することは、韓国人として民主主議の否定につがっている。左派の人たちは、口を開けば「人権を守れ」「労働者を守れ」と言い続けている。この人たちが、国民や人権の全てと踏みにじる北の主張に同意する。なんとも不思議な光景である。

 

韓国左派の主張は、現在の若者によって否定されている。賞味期限は長くない。若者は、金ファミリーの存在そのものを拒否する。彼らにとって、同世代の人間が国民を人間扱いしない政治に絶望している。左派の年配者よりもはるかに健全な思考と見える。