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中国の口車に乗せられて、モリディブ・スリランカ・パキスタンの三カ国は身丈に合わない過大なインフラ投資を実行し、首が回らなくなった。マレーシアは、ナジブ前首相が中国の言いなりで、膨大な債務を押しつけられ、根本的な見直しに動いている。ミャンマーも財政危機を察知して、計画の大幅縮小に着手。大騒ぎした「一帯一路」は、もぬけの殻になってきた。

 

マレーシアはマハティール首相の再登場でほぼ、ご破算になりつつたる。中国にとっては、なんともバツの悪い話になってきた。いかに、あくどいビジネスを行なっていたかが、明らかにされている。こういう中国が、周辺国から信頼を失うことは当然である。

 

『大紀元』(8月15日付)は、「マハティール首相がまもなく訪中、『一帯一路事業を諦めた意』、中国と交渉へ」と題する記事を掲載した。

 

(1)「マレーシアのマハティール首相は、817日から5日間の日程で訪中して、習近平国家主席らと会談を行う。首相は13日にAP通信のインタビューを受け、訪中の際、前政権が中国と調印した『一帯一路』インフラ事業の中止に関する協議を行うと表明した。中国訪問は5月の首相就任後、初めとなる。AP通信のインタビューでは、マハティール首相は中国との友好的な協力関係も保ちたいと明言しながらも、『マレーシアにとって、中国の支援プロジェクトが経済的恩恵をもたらさないと判断した場合、できるなら、これらのインフラ事業をあきらめたい』と示した」

 

90歳を過ぎたマハティール首相が再登場したのは、自分の後継者のナジブ前首相が、中国と組んで汚職まみれになった政治の一掃である。それだけに、中国に乗せられて財政的な難題を背負うことに拒否感が強い。「一帯一路」は今や、中国が自国の利益だけを求める歴史的「スキャンダラス」プロジェクトに成り下がった。

 

ナジブ前首相が、中国と結んだ契約総額は200億ドル超である。国家財政を圧迫することは明らかである。マハティール首相は、財政問題に敏感に反応するタイプだ。マレーシアの対GDP比の政府債務残高は、1990年に75%と高かった。それが、1997年には30%まで改善した。

 

マハティール首相の前政権担当時は1981~2003年である。マハティール氏が必死になって財政再建に取り組んだ結果であろう。その後は再び増加に転じており、2017年には54%まで膨らんでいる。この段階で、「一帯一路」プロジェクトで20億ドル超を抱えたらどうなるか。マハティール首相の危機感がよく分かるのだ。マハティール首相は訪中で、継続事業について不公平な工事契約、ローンの見直しなどを行なうという。

 

『ウォールストリートジャーナル』(8月16日付)は、「中国マネーに警戒感、ミャンマー港湾開発縮小へ」と題する記事を掲載した。

 

ミャンマーは、中国が「一帯一路」で弱小国を食いものにしている現状に、強い警戒心を持っている。中国の甘言に乗せられまい、と計画の見直しに着手した。中国のイメージは急落である。これから中国は、いくら立派なことを言っても、必ず裏があると見透かされるはず。愚かなことをやったものだ。

 

(2)「ミャンマー政府は目下、ベンガル湾における中国支援の港湾建設プロジェクトの大幅縮小を目指している。持続不可能な債務を背負いかねないとの危機感が当局者の間で広がっているためだ。関係筋によると、ミャンマー当局は現在、プロジェクトの規模を当初予定の73億ドル(約8100億円)から13億ドル程度まで縮小する方向で、中国中信集団(CITICグループ)が主導するコンソーシアム(企業連合)と協議を進めている」。

 

ミャンマー当局は現在、プロジェクトの規模を当初予定の73億ドル(約8100億円)から13億ドル程度まで縮小する方向で検討を進めている。5分の1以下に圧縮するものだ。中国は、きっと舌打ちしているに違いない。「カモ」と見ていたミャンマーが突然、目覚めてソロバンを弾き始めたからだ。

 

中国の毒牙にかかる国は、一国でも少なくしなければならない。財政再建が困難になれば、IMFの緊急融資で凌がざるを得ない。すでに、パキスタンが、その窮地に追い込まれている。IMFの支援下に入れば、厳しい財政緊縮が求められる。中国のもうけ仕事のために、パキスタン国民にしわ寄せが行く。なんとも不合理な話だ。