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中国が、笛や太鼓で威勢を付けてきた「一帯一路」計画は、大きな曲がり角に立たされている。中国によって、「債務トリップ」という穴が仕組まれていることが分ったからだ。その犠牲国は、モリディブ・スリランカ・パキスタンである。中国の甘言に乗って、インフラ投資を行なったばかりに財政危機に直面している。

 

これを見て愕いた、マレーシアやミャンマーが「一帯一路」計画の縮小をめぐり、中国政府と話合いを始めている。中国は、この報復のためマレーシアでスパイ活動を始めたという恐ろしい話が出てきた。どこまでも腹黒い中国である。

 

『フィナンシャルタイムズ』(8月16日付)は、「中国が一帯一路をスパイ活動に利用と報告書指摘」と題する記事を掲載した。

 

(1)「広域経済圏構想『一帯一路』に関係した中国のサイバースパイ活動が増えている。中国政府は巨大インフラ整備事業を企業や国に対するスパイ活動や異論の抑え込みに利用していると、専門家は警鐘を鳴らしている。米サイバーセキュリティー会社ファイア・アイの報告書によると、中国はベラルーシやモルディブ、カンボジア、欧州諸国の外務省や非政府組織(NGO)を標的にしている。『中国にとって巨額のお金がかかっている国や、今後の事業に影響を及ぼす政策が立案されつつある国に関心を向けているようだ』と、ファイア・アイのサンドラ・ジョイス副社長は言う」

 

共産主義とスパイは双子の関係にある。中国は、旧ソ連のKGB(ソ連国家保安院会:スパイ機関)ほどの悪辣なことはまだ行っていないにしても、ついにこの悪の道に入ってきた。口では立派な「平和希求」などと言うが、やっていることは他国を陥れる策略をめぐらし始めている。

 

(2)「マレーシアのマハティール首相が中国は『不公平な』取引をしていると主張するなど、『一帯一路』はすでに批判派から矛先を向けられている。そこにサイバースパイ活動の脅威も指摘される事態となり、『一帯一路』の事業の入札過程と中国の動機にさらなる疑問が浮上した。英シンクタンク国際戦略研究所(IISS)の調査コンサルタント、サマンサ・ホフマン氏は、巨大事業の監視や情報収集だけでなく、中国は収集した情報を異論の抑え込みにも利用しようとしているはずだと指摘する。『安全保障と外交に具体的な影響が生じる国々において、議論や考え方をコントロールしようとするものでもあるはずだ』と、ホフマン氏は言う」

 

中国が、各国でこれはと思われる人物に接近して金品をばらまく手法はよく知られている。大手メディアに登場させて、中国に有利な意見を言わせるもの。日本では、そういう疑わしい発言をすると、ネットメディアが批判するから効果は薄い。ただ、中国メディアに登場して日本批判をする日本人がいる。中国「御用達」という感じだ。

 

(3)「ホフマン氏はこう書いている。電子商取引のプラットフォームや孔子学院、通信ネットワーク、運輸会社、ホテル、金融決済機関、物流会社といった外国の『データ収集拠点』はバックエンド経由で中国の中央分析センターに情報を送る。中国の組織と市民は国家情報法により、国家の保護の下で情報の収集と『国の情報活動』の維持に協力することを求められているからだ」

 

「一帯一路」で拡大される中国経済圏では、電子商取引のプラットフォーム、孔子学院、通信ネットワーク、運輸会社、ホテル、金融決済機関、物流会社などから得られる情報が、通信機に秘かに組み込まれている「バックエンド」で、自動的に北京に送られている。「一帯一路」はインフラ事業をやるだけでなく、スパイ活動にも利用しているのだ。

 

米国が、中国製通信機の販売を禁止した背景は、このバックエンドによって米国の情報が中国へ筒抜けになることの防止である。すでに米中関係は事実上、「コールドウオー」(冷戦)に入っている。

 

(4)「ファイア・アイは、マレーシアは5月の総選挙に勝利したマハティール氏が中国批判に出たことで、『サイバースパイ活動のリスクが高まった』と警告している。『事態の進展を見極めようとする目的で、マレーシアの組織に対するスパイ活動が高まると我々はみている』と、ジョイス氏は話した。ファイア・アイは、すでに中国のハッカー集団『TEMP.Toucan』がマレーシアの政府・民間組織への侵入を試みたと指摘している」

 

マレーシアのマハティール首相は、「一帯一路」の見直しを表明した。中国はこれを受けて、サイバースパイ活動の準備に入っていると言う。こういう話を聞くと一瞬、「生意気なことをしているな」と思うが、自称「大国」となると大国ぶったスパイ活動をするのだろう。一説では、日本国内でも5万人の中国人スパイがウロウロしているとか。日本も機密情報を守らなければならない。特に、潜水艦情報が狙われている。