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太平洋の楽園といわれるトンガ王国など8ヶ国が今、天国どころか地獄の苦しみを味わっている。中国の甘言に乗って借金したばかりに、返済で苦しんでいるのだ。中国が、この楽園に札束を持って乗り込んできたのは、台湾と外交関係を断交させる目的であった。中国と国交を結ばせる手段に、「お金も貸して工事もしてあげますよ」という猫なで声で接近したのだ。

 

中国の甘い囁きに乗らなかった国は、借金に苦しむこともなく「ラッキー」で、そのまま楽園の夢を維持している。太平洋の島嶼国は、中国と外交関係を結んで地獄へ突き落とされた国と、律儀に台湾との外交を維持し続けて、「国家安泰」という国に二分されている。

 

『ロイター』(8月18日付)は、「トンガ、中国への債務帳消し共同要請案を撤回」と題する記事を掲載した。

 

(1)「トンガのポヒバ首相は17日、トンガなど太平洋の島嶼国が共同で中国に債務の帳消しを求めることを断念した。関係筋によると、この計画をめぐり中国がトンガに抗議したという。トンガは、巨額の対中債務を抱える南太平洋の8島嶼国の1つで、中国に債務の帳消しを要請する計画について、域内の支持固めに動いて

た」

 

(2)「ポヒバ首相は16日、ロイターに対し、9月初めにナウルで開催される太平洋諸島フォーラム(PIF)首脳会議で計画を詰める見通しを示していた。しかし、17日の声明で首相は『さらなる検討の結果』フォーラムは対中債務問題を話し合うのに適切な場ではなく、各国がそれぞれ解決策を見出すべきとの見解を示した。関係筋によると、ポヒバ首相が共同で中国に債務の帳消しを求める案を提起した後まもなく、トンガ政府は中国から抗議を受けた」

 

トンガが代表格で、中国へ債務帳消しを要請しようとしたが、それを撤回したという話に過ぎない。なんの変哲もないが、中国は返済できないのを知りながら貸している点で問題はないのか。しかも、トンガだけでなくほかに7ヶ国も過剰債務国が存在するのは、「貸し主責任」もありそうな感じだ。銀行という視点から見ると、返済できない相手に貸したことは、「審査能力」に問題があったことになる。中国が、何を狙っていたのか。オーストラリアとニュージーランドは、中国の出方に警戒している。

 

トンガなどが、中国から借金した事情を『ロイター』(8月1日付)で説明しておきたい。

 

(3)「トンガは、中国からの融資が当初6500万ドル(約72億円)程度だった。現在は1億1500万ドルを超える。1年間の国内総生産(GDP)のほぼ3分の1に相当する。利子が膨らんだほか、トンガ全土の道路開発のために新たな融資を受けたためだ。元金返済計画が9月にスタートするが、トンガの年間元利払い費は約2倍に膨れ上がることになり、同国政府は対応に追われている。トンガの不安定な立場は、南太平洋の小国を直撃している広範な『負債疲れ』を示している。同地域が財政難に陥り、中国からの外交圧力にますます影響を受けやすくなるという恐怖も駆り立てている」。

 

トンガは、中国から当初6500万ドル借りた。それが現在、1億1500万ドルに膨らんでいる。年間GDPの3割だという。利子のほかに追加工事の費用を債務で賄った結果だ。中国は、明らかに返済できないことを見越していたはずである。担保に何を狙っていたのか。

この一件を見ると、借りる側も無計画だが、貸す側も胡散臭い感じがする。