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マレーシアのマハティール首相が20日、北京での中国李首相との共同記者会見で意味深発言をした。「植民地主義の新たなバージョンがあるような状況は望ましくない」と言い切った。この「植民地主義」批判こそ、中国の「一帯一路」政策に向けられたものである。貧しい国へ多額の資金を貸し付けて債務漬けにする。返済不可能を承知で行なう中国の振る舞いは、かつての植民地主義とどこが違うのか。

 

毛沢東はこの植民地主義に反対したが、現在の中国は臆面もなく植民地主義を実行している。マハティール首相の「新植民地批判」は、同席した李首相の胸にどれだけ響いただろうか。

 

戦前の植民地経営では、宗主国が相当の利益を得られた。現在の中国は、「一帯一路」で資金を貸し付けても返済できない国が続出している。中国の政治的影響力を高める目的であるが、皮肉にも中国の経常収支黒字を減少させる要因になった。中国は、「一帯一路」に深入りして、自らの国力を消耗していることに気付くべきなのだ。

 

『ブルームバーグ』(8月20日付)は、「中国訪問中のマレーシア首相、新植民地主義に警告発する」と題する記事を掲載した。

 

(1)「マレーシアのマハティール首相が北京での20日の記者会見で貿易に関して発したメッセージは、恐らく中国の李克強首相が予想していたものとは違った。李首相が貿易を巡る見解を尋ねた際、マハティール首相は公平である限りにおいて自由貿易を支持すると言明、各国が発展の異なる段階にあることを誰もが思い出す必要があると主張した」

 

マハティール氏は、自由貿易の前提は公平であると言っている。中国は、「一帯一路」で不公平な行為をしていると示唆するのだ。

 

(2)「マハティール首相は、『植民地主義の新たなバージョンがあるような状況は望ましくない。オープンで自由な貿易というだけでは、貧しい国々は豊かな国々と競争することができない』と述べ、『公平な貿易であることも必要だ。そうであれば私は李首相と共に自由貿易を支持する。これは世界全体が進むべき方向だと考えているからだ』と語った」

 

中国が、自らの経済力の優越性を笠に着て、貧しい国に対して不公平な条件を押しつけている。マハティール首相が批判する点だ。「中国よ、謙虚になれ」。90歳を超えた老首相が、大国の首相を諭している。歴史的な記者会見であろう。