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米中両国による貿易摩擦をめぐる会談は、何らの成果なく終わったようだ。中国側は、事前に米中会談の予告をするなどPRに努めていた。会談では、米中の主張が平行線を辿っただけ。中国は、株価や為替相場の下落を恐れて、不安心理抑制にこの会談を利用したことは明白だ。

 

『ウォール・ストリート・ジャーナル』(8月24日付)は、「米中通商協議が終了、に見える進展なく」と題する記事を掲載した。

 

(1)「米国と中国の両政府はワシントンでの次官級通商協議を終えた。ただ、目に見える具体的な進展はなく、貿易摩擦が早期に収束する見込みは低下しつつある。事情に詳しい複数の関係者が明らかにした。それによると、協議で両国は従来の論点を繰り返し主張することにほとんどの時間を費やした。トランプ米政権が懸念する多額の対中貿易赤字や、中国政府が米企業に対し中国企業への技術移転を強要していることについて、中国側には解決に向けた新たな提案を行う用意がなかったようだったという」

 

中国側は、ワシントンに来ても何らの提案をしなかったが、米国の怒りは倍加しているだろう。

 

(2)「ホワイトハウスは、米中が『中国の構造的問題の解決を含め、公平でバランスが取れ、相互主義的な経済関係の実現方法について意見交換した』と述べた。ただ協議の成果や今後の日程についての言及はなかった。議内容に詳しいある米政府高官は『前向きな結果を得るには』、中国側が米国から提示された問題に対処しなければならないが、『われわれはまだそれを見ていない』と述べた」

 

ここで、在日中国人エコノミストの見解を紹介したい。

 

『産経新聞 電子版』(8月23日付)中国経済が長期減速に陥る事態も」東京財団政策研究所の柯隆(か・りゅう)主席研究員 」と題する記事を掲載した。

 

(3)「米側は2千億ドル相当にも及ぶ第3弾の大規模制裁を準備しているが、これが発動されれば中国経済は相当なダメージを受ける。短期的には、輸出にブレーキがかかって業績が低迷した企業がリストラに走り、雇用環境の悪化に伴う社会不安の増大という中国側が最も恐れる状況を招く恐れがある。長期的には、多国籍企業を中心に生産能力の一部を中国外に移す可能性もあり、中国経済が長期間減速する事態に陥りかねない」

 

米国が、次に2000億ドルの関税を発動したら、中国の輸出産業は「総なめ」状態に落ち込み、信用恐慌への決定的引き金になろう。習近平氏は際どい作戦に出ている。勝算あってのことではない。決断がつかないのだろう。ここで米国へ妥協すれば、習氏がこれまで発言してきた対米超強気論が瓦解するからだ。時間稼ぎしている内に、風向きの変わるのを待つ。完全に受け身に回っている。「名誉ある撤退」という道もあるが、独裁者には不可能だ。