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習近平氏は、側近の中央政治局常務委の王滬寧氏(党内ランク5位)が、対米強硬発言を政府系メディアで流させた責任を問われた一件が悔しいらしい。「北戴河」会議で、米中貿易戦争が話題になり、「徹底抗戦論」が批判の矢面に立たされたからだ。この裏に、王氏がいると見られ詰め腹を切らされた。中国の元老は、米中貿易戦争に反対である。

 

今回の「北戴河」会議の結論が、習氏を意外な方向へ引っ張り込む懸念も出てきた。これまで、「習一強」で、これを阻む者はいないと見られてきた。だが、習氏は毛沢東と違って党をつくった人間でないことだ。いわば、「雇われマダム」である。元老を中心とするOBの声は無視できない。それが今回、王氏の責任追及となったのであろう。こうなると、米中貿易戦争で、中国経済が左前になれば、習氏の首に関わる話に発展することだ。

 

習氏が、未練たらしく「対外宣伝活動は全て正しい」と弁解せざるを得ない辺り、相当なショックを受けている証拠だろう。

 

『ロイター』(8月22日付)は、「中国の習主席、『対外宣伝活動は完全に正しい』と強調」と題する記事を掲載した。

 

(1)「中国の習近平国家主席は、対外宣伝担当の政府高官が開いた会議で、同国のこれまでの宣伝活動は『完全に正しい』との認識を示した。国内には、米国との貿易摩擦を巡り情報発信の問題を指摘する声があるが、これに反論した格好となった」

 

今、この時点でこういう発言をすること自体、王氏が宣伝担当を外れたことの悔しさをぶちまけたものだろう。習氏は、王氏の宣伝担当任務を外したくなかったのだ。

 

(2)「関係筋がこれまでロイターに明らかにしたところによると、共産党内部では、過度に国家主義的な中国の姿勢が米国の態度硬化を招いた可能性があるとの批判が出ており、党内に亀裂が生じているという。ただ、習主席は会議で、2012年に開かれた中国共産党全国代表大会以降、対外宣伝活動は成功しており、大きな前進を遂げていると強調した。国営メディアが22日遅くに発言の内容を伝えた」

 

共産党内部では、「過度に国家主義的な中国の姿勢が、米国の態度硬化を招いた可能性があるとの批判が出ており、党内に亀裂が生じているという」。王氏の国粋主義が習氏を鼓舞してきたのだ。米国覇権への挑戦論は、どう見ても国家主義そのもの。社会主義国の看板を掲げる中国が言ってはならない禁句なのだ。それを平然と言ってのけたところに王氏の国粋主義ぶりが窺える。習ー王ラインは、同じ穴の狢(むじな)である。だから、習氏が未練たっぷりに発言しているのだ。

 

(3)「習主席は、『優れた伝統文化が広く宣伝され、中心的な世論は引き続き統制され、強化されている。文化的な自信が強調され、国内の文化的ソフトパワーや中国の文化的影響が大幅に強まった』と指摘。その上で、『宣伝・イデオロジー担当の党機関による政策作りが完全に正しく、宣伝・イデオロギー担当の当局者は完全に信頼できることが実際に証明されてきた』と述べた。特定の問題には言及しなかった」

 

習氏は、問題をすり替えている。王氏の発言は、「米国衰退・中国発展」という非科学的なものだ。それが、国営メディアに反映して米国を怒らせた。トランプ氏が、徹底的に中国潰しに入っていることは明らかである。今後の推移いかんでは、習氏の責任が問われることもある。事態は、そこまで深刻化していることを認識すべきであろう。王氏は、米国へ留学しているが、米国の本質を何も知らずに帰国している。無駄な留学であった。この王氏による「米国衰退論」に踊らされた習氏が悪いのだ。