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トランプ大統領の大型減税は、レーガン政権が実施した1986年以来、約30年ぶりの抜本改革となった。これによって、消費面から米国経済を支え、米中貿易戦争を乗切る体制が確立した。

 

具体的な内容は、次のようなものだ。

 

企業の税負担が10年間で6500億ドル(約73兆円)減り、個人は1兆ドルを超える。企業や個人を潤して活力を高め、企業の投資を呼び込む。米国を豊かにする好循環をつくるというのだ。この段階で、米中が貿易戦争へ突入する。中国は、不動産バブルによる過剰債務が、企業と家計を襲っている。不況抵抗力は極端に低下した。片や、米国はトランプ減税がうなりを上げて始動し始めた。中国に歩があるとは思えない。習氏は玉砕覚悟だろうか。

 

次に掲げる記事は最近、米国の家計貯蓄率調査において、これまでの常識を覆す結果が出てきたことを報じたもの。これによって、「米国経済強し」という印象を一層、高めるのだ。米国家計が、浪費好きというこれまでのメ-ジから一変し、家計に堅実性が戻って来た。また、「資産効果」と言って、株価が上昇すれば個人消費が増えて、貯蓄率が下がるという仮説が否定された意味も大きい。米国家計が、プロテスタント的なものに変化した点は、今後の米国経済を見る上で大きな要因となろう。

 

『ウォール・ストリート・ジャーナル』(8月21日付)は、」米国経済、家計貯蓄が意外な防波堤に」と題する記事を掲載した。

 

(4)「米国経済が直近2回のリセッション(景気後退)に陥る前、家計は無防備だった。数年にわたり株式や持ち家など資産価値の上昇が続き、雇用見通しが改善する中、貯蓄はあまり必要ないと消費者は考えていた。そのため2001年と07年からの2回のリセッション時に失業率が上がり、資産価値が下がると、消費者は支出を厳しく引き締め、経済は収縮した。数週間前まで、一部のエコノミストは歴史が繰り返されることを警戒していた」

 

これまでの「浪費好き米国家計」のイメージが変わった。具体的には、次のパラグラフで指摘されているが、堅実型に変わったのだ。そのきっかけが、2001年と07年のリセッションで塗炭の苦しみを味わい、貯蓄を取り崩してまでの消費を控えるようになった。これは、地味ながら底堅い個人消費の流れをつくっていく期待を持たせる。

 

(5)「商務省経済分析局(BEA)が7月発表した貯蓄データの改定値で、家計が数年にわたり、はるかに多くの貯蓄をため込んでいたことが分かった。米国の世帯は、以前考えられていたよりはるかに多くを貯蓄に回しているようだ。今年1~3月期だけをとって見ても、BEAは個人貯蓄率の推計を従来の3.3%から7.2%へと倍以上に引き上げた。この数字は1990年代の平均貯蓄率である6.4%を上回る。直近の底である05年の2.5%に比べると3倍近い。1~3月期分の上方修正だけでも、年率にすると貯蓄が6135億ドル(約67兆7400億円)増えたことになる。今回の個人貯蓄率の見直しは少なくとも2002年以来の大幅修正となった」

 

家計貯蓄データの見直しが行なわれた。その結果、家計が予想よりもはるかに多くの貯蓄をしていたことが判明した。今年1~3月期だけ見ても、BEAは個人貯蓄率の推計を従来の3.3%から7.2%へと倍以上に引き上げた。これだけの貯蓄率を維持し、生活をエンジョイする中で米国経済の好循環が続いているのだ。

 

(6)「エコノミストらは、07〜09年のリセッションで痛手を負った消費者が貯蓄を決意した可能性が高いとみている。リセッションは数百万人の失業を招き、住宅の価値は決して下がらないという信念を覆した。この仮説を支えるのは、失業率が半分に下がり、株価が跳ね上がったにもかかわらず、修正された貯蓄率が13年からほぼ変わっていないという事実だ。この点について、JPモルガンの首席米国エコノミスト、マイケル・フェローリ氏は「マクロ経済のより確かな規則だと考えられてきた」資産効果に逆行すると指摘する。家計の資産が増えると消費が増え、貯蓄は減るというのが資産効果の理論だ」

 

07〜09年のリセッションで痛手を負った消費者が、貯蓄の重要性を決意した可能性が高いと見られる。人間一度、痛い目に遭えば、二度とそれを繰り返したくない気持ちになる。今後とも、無駄を省きながら堅実な消費生活を続ける可能性が強い。ここへ、さらにトランプ大型減税で10年間に1兆ドル以上の減税が寄与する。米国経済が、個人消費面からも支えられる構造が強化されたと言えよう。