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歴史は繰り返すという。経済現象については、それが当てはまる。景気循環こそ、歴史の繰り返しである。世界の銀行時価総額で、中国の銀行が上位4位を独占した。これは、強さの証明か。来たるべき金融危機の前兆なのか。

 

1988年、世界の銀行の時価総額ランキング上位10行中9行が日本の銀行だった。あのときの記憶は、強烈に残っている。私は金融担当記者だった。「日本経済もここまで来たか」という思いがした。その3年後、91年に始まったバブル崩壊により日本の金融システムと銀行は大きな打撃を受けた。中国の銀行4行が、銀行の時価総額で上位4位を独占したことは、危機の前兆と読み対応を急ぐことが賢明だろう。

 

『ブルームバーグ』(9月3日付は)、「与信依存、危うい中国銀の台頭、時価総額世界ランク上位4位独占」と題する記事を掲載した。

 

(1)「30年前(1998年)にトップ10入りした日本の銀行9行は現在までに4行に統合され、そのうち1行だけが今年のランキング10位内に残っている。2007年のトップ10は米英銀が独占。1年後にサブプライム危機が米国を直撃、その後、債務危機が欧州を襲った。07年の上位10行のうち4行が、公的救済を受けることとなった。この時、救済されていなければ恐らく4行とも現在まで生き延びられていないと思われる」

 

1998年の上位10行のうち、日本の銀行が9行を占めた。現在もトップ10に残るのは三菱UFJ銀行のみ。2007年の上位10行は米英の銀行が独占。このうち4行公的支援を受けた。この現実は、金融の歴史として重いものがある。

 

(2)「18年のトップ10は再びアジア勢が席巻。今回は4位までを中国の銀行が独占した。だからといって、今度は中国が金融危機に見舞われるとは限らないが、最近の例を考えると、心配の種ではある。ある国・地域の銀行セクターの並外れた成長は、信用拡大ペースが他の国・地域を上回っていることを示す兆候だ。企業や消費者の借り入れが銀行資産の大半を占める」

 

銀行の与信規模の拡大は、株価を押上げる要因である。だが、ある地域の銀行が飛び抜けて、大きなウエイトを持つことは、その経済的な背景に異常なことが起こっていると疑って見るべきだ。中国には、不動産バブルというとてつもないマグマがうごめいている。

 

(3)「中国は08年の金融危機以降、経済の好調持続を与信の高い伸びに依存してきた。中国の成長維持に借り入れが寄与したことに誰も異論を唱えないが、中国が1990年代前半の日本や2008年の米国が見舞われたような危機に陥ることはないといった声は、中国政府を含め多く聞かれる」。

 

中国の上位銀行は、国有銀行である。政府とはツーカーの関係である。不良貸出債権は、政府の指導で相手企業に社債を発行させて切り離した。現在、社債のデフォルトが多発しているのは、この影響である。これら上位行は「信用収縮」を行い、秘かに「貸し渋り・貸し剥がし」をやっており、株価は政府のテコ入れによるものだ。こう見ると、決して安泰ではない。中国経済そのものが衰退すれば、株価は道連れになるものだ。