中国が、外貨準備高で3兆ドル台を維持している理由は、発展途上国への見栄である。中国が、有り余る資金を持っているという幻想を与えて、中国の言うことを聞かせる手段に使っている。もともと海外で資金をバラマクには、国際収支で有り余るほどの経常黒字を必要とする。
中国は、その経常黒字が先細りになっている。国際収支構造が、次第に弱体化している結果だ。この理由については、このブログで耳にたこができるほど繰り返し説明してきた。所得収支とサービス収支の赤字拡大が原因だ。海外で投資という名目で資金をばらまいているが、これもリターンを度外視しているから所得収支の赤字幅を広げている。今年の経常黒字は1000億ドル、来年は500億ドル以下に落込む見通しだ。
『共同通信』(9月3日付)は、「中国、アフリカに6兆円超、巨額支援で運命共同体、米国をけん制」と題する記事を掲載した。
(4)「中国とアフリカ各国が参加する『中国アフリカ協力フォーラム』首脳会合が3日、北京の人民大会堂で始まった。習近平国家主席が開幕式で演説し、アフリカとの『運命共同体』を構築し、アフリカの経済発展のため総額600億ドル(約6兆6600億円)規模を拠出すると表明した。『保護主義や単独主義に反対する』とも述べ、保護主義的な通商政策をとるトランプ米政権をけん制した」
アフリカの経済発展のため総額600億ドルの拠出をすると大見得を切っている。空手形に終わらないだろうか。来年の経常黒字は500億ドルを切りそうな見込みである。無論、アフリカへ一度に600億ドル融資するはずがないが、その「原資」は細っている。「大法螺」を吹いていると中国の信用を落とすだけだ。
すでに、エチオピアで中国の「空手形」が始まっている。エチオピアは、「一帯一路」の「モデル国家」として称賛されているが、過剰債務で首が回らなくなってきた。中国政府は一帯一路全体に1260億ドル(約14兆円)を投資して、自国とユーラシア、アフリカ大陸をつなぐ鉄道、道路、海路の構築を目指している。
エチオピアは2000年以降、中国国有の政策銀行から121億ドル以上の融資を受けている。だが、債務返済で苦境に立たされており、同国の主な債権者である中国が、一部のインフラ計画の収益性に懸念を強めて融資を鈍化させる兆しが見えている。「出資者は、エチオピアのGDPの59%に及ぶ債務の返済リスクが非常に高まっていることを懸念している」と、中国代表団は7月、エチオピアの首都アディスアベバのアフリカ連合(AU)本部へのウェブサイトで表明した(『ロイター』9月3日付「『一帯一路』鉄道計画がエチオピアで頓挫、中国融資減速」)。中国は、大風呂敷を広げていると、エチオピアのような債務返済国を増やすことになる。
(5)「天然資源や巨大市場を抱えるアフリカ諸国と連携を強める姿勢を示した。習指導部が提唱する現代版シルクロード経済圏構想『一帯一路』の枠組みで経済協力を進め、アフリカ発展を中国の成長に取り込む。また、貿易摩擦で対立する米国を念頭に『自国を閉ざされた孤島に押し込めても前途はない』と述べた。会合にはアフリカの53カ国が参加。4日まで開かれ、中国とアフリカの関係緊密化や経済連携の具体策をまとめた『北京宣言』と2019年から21年までの行動計画を採択する予定」
アフリカが将来、有望市場になることは分かっている。中国が、そこへ先行投資する意義も理解する。ただその狙いが、米国への対抗にあるというのは噴飯物だ。中国が逆立ちしても敵わない相手が米国である。基軸通貨国・国際金融システムを把握・科学技術の最先端・自由と民主主義で開かれた国家。中国は、この総合力を持つ米国とどうやって覇を競うのか。もっと、現実感覚を持たなければ国を滅ぼすであろう。これが、国粋主義者の最大の欠陥である。習近平と東条英機の共通点は、現実認識が希薄で覇権に酔う甘さである。
『産経新聞』(9月3日付)は、「太平洋諸島フォーラム開幕、中国巨額援助の債務の罠に危機感」と題する記事を掲載した。
オセアニアの地域協力機構『太平洋諸島フォーラム(PIF)』の年次総会が3日、太平洋の島国ナウルで始まった。太平洋諸国は中国からの巨大経済圏構想『一帯一路』などを通じた巨額の援助で『債務のわな』に陥る危険性が指摘されており、4日の首脳会合では債務放棄要請が議題となる可能性があるという。
(6)「オーストラリアのローウィ国際政策研究所によると、中国が2011年以降、太平洋諸国に援助した総額は低利融資を含め約12億6千万ドル(約1400億円)。豪州に次ぐ2位で、ニュージーランドを上回る。公約ベースでは59億ドル(約6500億円)に上り、地域全体への援助公約額の3分の1を占める。ロイター通信によると、トンガでは対外債務の約60%、バヌアツでは約半分が中国融資に基づく。世界銀行の幹部は同通信に、太平洋諸国の債務は『継続的に返済できる限界に近づいている』と指摘している」
中国が、オセアニア諸国を「債務漬け」にしようとしている狙いは、この地域を中国支持の基盤にすることだ。将来は軍港をつくり、太平洋から直接、米本土へミサイル攻撃する準備と見られる。アフリカに支持基盤を広げる目的は、国連で米国と争う際の票集め。中国経済がフラフラしている中で、こんな夢を見ている習近平氏とは何者か。秦の始皇帝になったつもりであろう。
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