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中国の未来は、「中国製造2025」の実現にかかっている。先進国からどれだけ非難されても、技術窃取は止められない。まさに、「生活がかかっている」からだ。カンヌ国際映画祭で最高賞に輝いた「万引き家族」になぞらえれば、中国は、悪を承知でやっている、この「ヤマ」を越せば、製造強国としての位置を固め、米国へ対抗できると信じているのだろう。そんなに上手くことは運ぶだろうか。

 

日本経済新聞の名物コラム「大機小機」で、次のような記事が目についた。

 

(1)「中国企業の技術力の進歩によって、中国はコピーする側からされる側(知財大国)に変貌しつつある。米国が非難する、デジタル分野の知的財産権侵害を続ける必要性は薄れている。世界一のデジタル国家を目指す『中国製造2025』も、自力での達成のメドをつけたといわれている。以上を勘案すれば、中国は今秋にも習近平(シー・ジンピン)国家主席がデジタル分野や通商上で思い切った妥協案を出すことが考えられる。ディール(取引)の短期完結がモットーのトランプ大統領がこれをのみ、休戦が実現する可能性も十分ある。これへの備えも重要だろう」(8月29日付「米中貿易戦争、収束に備えを」筆名:逗子)

 

中国が「中国製造2025」にメドを付けたという内容である。今秋にも、米中は取引するだろうとしている。この記事を読んで以来、何が根拠で中国は技術開発にメドを付けたと判断したのか。関心を持ってきた。この前提で考えると、ZTE(中興通訊)は、あれほどの屈辱的な条件をのまされず、もう少し上手く立ち回れたのでないか。そう思うと、中国でハイテク技術の開発にメドを付けたという根拠が、薄くなる印象であった。

 

私の印象を裏付ける記事が登場した。

 

『日本経済新聞 電子版』(9月3日付)は、「中国ハイテク銘柄が苦戦、『製造強国』道半ば」と題する記事を掲載した。

 

(2)「中国のハイテク銘柄の業績が伸び悩んでいる。2018年1~6月期は監視カメラ大手の純利益が前年同期比で2ケタ増えたものの、鳴り物入りで上場した台湾・鴻海(ホンハイ)精密工業の中核子会社は小幅な増益。車載電池や液晶パネル最大手は大幅減益で、産業振興策『中国製造2025』はまだ収益力につながっていない。鴻海子会社で、6月に上海証券取引所に上場したフォックスコン・インダストリアル・インターネット(FII)の1~6月期は純利益が54億元と2%増にとどまった。売上高は16%伸びたが、主力のスマートフォン(スマホ)受託生産で人件費高騰が重荷となった」

 

ハイテク上場企業の上期決算発表が行なわれているが、増益率が微々たるものである。これは、競争力が十分でないことの証明であろう。


(3)「17年にパナソニックを抜き、世界最大の車載電池メーカーとなった寧徳時代新能源科技(CATL)。6月の上場後、初の決算発表となる1~6月期は純利益が5割近く減少した。株式売却によるかさ上げがなくなったのが主因だが、中国政府による電気自動車(EV)の補助金政策の変更も響いた。補助金に頼らない収益構造づくりが急務だ」

 

パナソニックを抜いて、売上シェアで世界一になったEV電池メーカーのCATLは、純利益が5割近くも減った。政府の補助金が削減も響いている。このCATLが、急速に売上を伸した裏に、中国政府の保護政策があった。韓国のサムスンなどに補助金を出さず差別したのだ。これが、産業強国の裏に隠された装置である。汚い手を使って、世界のトップに立ったところで利益はわずか。補助金を外したら一本立ちできるだろうか。心許ない。やっぱり、独立独歩は時期尚早に思う。