米国は、2000億ドル関税発動の最終調整を終えた。いつ発動されるか時間の問題となっている。ところが、中国のIT製品に関税をかけることで、逆に米国の次世代移動通信システムの「5G」コストが上昇して、米企業にしわ寄せが来るという問題が明らかになった。これまでは、2000億ドル関税の発動が、米IT企業を守るとしてきた。想定外の事態が起こりそうだという。
『ウォール・ストリート・ジャーナル』(9月8日付)は、「対中関税は5G開発を妨げる、 米ハイテク大手が主張」と題する記事を掲載した。
「5G」問題は、米国が絶対に中国の後塵を拝してはならぬという国家的な課題である。中国へ経済制裁を加えている理由もここにある。ところが、「上手の手から水が漏る」の喩え通り、とんだ落し穴にはまり込みそうだ。
(1)「米大手ハイテク数社は第5世代移動通信システム(5G)で主導的な立場をとることを目指すトランプ政権の優先課題の一つを引き合いに出し、2000億ドル(約22兆円)相当の中国製品に追加関税を発動する方針に異を唱えた。半導体大手インテル、ネットワーク機器大手シスコシステムズ、パソコン大手デル・テクノロジーズなどのハイテク企業は米国で5Gサービスを本格展開する上で欠かせない製品への関税上乗せ阻止を目的に、米通商代表部(USTR)の説得を試みている」
米国の「5G」製品に不可欠の部品が、中国からの輸入に頼っているという。その部品に高関税をかけられると、米国の「5G」製品はコスト高で不利になるというもの。対中経済制裁の主旨に反するのだ。
(2)「インテルは6日遅くにUSTRに提出した文書の中で、その追加関税計画は5Gネットワークの構築に必要な製品のコストを引き上げることで『米国経済が当該技術を導入するペースを鈍化させ、米国の企業や関連機関は、同様の関税の対象にはなっていない、中国以外の外国の競合他社に後れを取ることになる』と主張した」
米国は、こういう深刻な事態に陥るのを防がなければならない。米IT企業は、折角の対中制裁が米国通信企業の足下を揺さぶる事態を避けるよう、米国政府に申し立てている。
(3)「追加関税は、5G技術でリーダーシップをとるというトランプ政権が掲げた目標に反しているようだ。トランプ政権は3月、シンガポール半導体大手ブロードコムが米クアルコムを1170億ドルで買収する計画を阻止している。外国企業による米企業への投資を審査する対米外国投資委員会(CFIUS)が、この買収案についてクアルコムの5G技術の開発を阻害する可能性があるとの懸念を表明したためだ。当時、トランプ政権は5G技術での主導的地位の確保を国家安全保障上の重要課題としていた」。
米国政府が、シンガポール半導体大手ブロードコムが、米クアルコムを1170億ドルで買収する計画を阻止した理由は、「5G」技術の発展に不利ということだった。これほどまでに、「5G」を重視されている。
(4)「USTRは追加関税の対象となる製品を最終的に決定する前に意見公募を行っている。リンジー・ウォルターズ大統領副報道官によると、トランプ政権が求めているのは中国が新たな5G市場で公正に競争することだという。『具体的なことについて最終決断はなされていない』と副報道官は述べた」
米国政府は、米IT企業の申し入れを認めるのであろう。
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