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中国の「一帯一路」計画は、ロシアの裏庭である中央アジアへ触手を延ばした。これが、ロシアを強く刺激している。ロシア政府は、この問題で表面的に沈黙しているが、ロシアメディアによって痛烈な中国批判を行なっている。私のブログでも取り上げた。

 

ロシアは常々、中国の膨張政策に不信感を強めてきた。その中国は、ロシアにとって数少ない友好国であるため発言を控えてきた。今回のベトナムへの10億米ドルの武器輸出計画は、中国への無言の反発を示している。ベトナムが、中国によって南シナ海の自国領の島嶼を奪取されているからだ。そのベトナムへの武器輸出は、「反中」へのテコ入れである。米国が、台湾へ武器を輸出すると同じ形だ。

 

習近平氏は、これまでの拡張政策があちこちで綻びを見せている。側近に、名うての国粋主義者を呼び寄せ、その意見を取り入れてきた結末が周辺国との軋轢増大だ。21世紀の世界で、前世紀の遺物である国粋主義をひけらかすこと自体、自殺行為である。習氏の外交路線は、転換点を迎えている。

 

『大紀元』(9月10日付)は、「ロシア、ベトナムに10億米ドルの最新兵器を輸出する計画」と題する記事を掲載した。

 

(1)「ロシア政府は、長年の友好国であるベトナムに、10億米ドル以上の最新兵器を輸出する予定であることを明かした。両国はむこう3年間軍事合同演習を実施する計画がある。ロシアからの武器供給は、中国と関係国によるつばぜり合いが続く南シナ海にまで影響が拡大すると考えられている。ロシア国営タス通信によると、セルゲイ・ショイグ国防相は、ロシアとベトナムが今春に結んだ軍事技術協力協定に基づいて、10億米ドル以上の武器を受注したと述べた」

 

中国経済が、不動産バブルの事実上の崩壊と過剰債務の後遺症に苦しむ上に、米国との貿易戦争に突入し最悪事態を迎えている。周辺国は、この「大蛇」の中国が、次第に衰弱する前兆を感じ取っているのであろう。習近平氏による一連の超強気外交が招いた失策である。

 

(2)「この報道は、ベトナム首脳グエン・フー・チョン中央委員会書記長の96日から8日までの訪ロ期間中に報じられた。政権与党ベトナム共産党は、プーチン大統領の会談後の7日に発表した声明の中で『両国は軍事関係の発展を継続するというコミットメントを改めて確認した』と記した。ロシアはベトナムの最大の武器輸入相手国で、ベトナムに新型ミサイル艇、潜水艦、フリゲート艦、戦闘機、対艦ミサイル、戦車など、陸海軍に必要な装備と兵器を輸出している」

 

中国にとっては、ベトナムとロシアが軍事的に結びつきを強化していることに安閑としていられなくなっている。元はといえば、中国の蒔いた種である。北ベトナム領の島嶼を軍事的に奪取したからだ。中国が、いかなる美辞麗句を並べて、この侵略行為を正統化しようとしても無駄である。だいたい、南シナ海の9割が中国領海という噓八百は、日本の満州占領と同様に根拠のない侵略である。習氏は、歴史にその悪名を残すであろう。