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中国政府は、人々の心の問題にまで土足で踏み込む横暴を働いている。河南省では十字架の強制撤去を進めているが、何を恐れているのか。

 

中国政府が、これまでキリスト教を政府の管理下に置いてきた理由は、信者が海外勢力と連携するのでないか、という点にある。最近の米中貿易戦争が激化の気配を反映し、キリスト教信者が団結して反政府運動を始めるのでないか、と勘ぐっているのであろう。米中貿易戦争がキリスト教に飛び火した感じだ。脆い基盤の上に成り立つ中国共産党の存在を証明しているような話である。

 

『大紀元』(9月11日付)は、「牧師300人異例の声明 中国当局のキリスト教弾圧を批判」と題する記事を掲載した。

 

(1)「米『ラジオ・フリーアジア』放送局の報道によると、95日明け方6時頃、数十人の制服を着た公安、政府の職員が突然河南省南陽市の光彩教会に突入し、十字架を強制的撤去し、教会内の音響、楽器、聖書などの物品も持ち去った。同日明け方、南陽市の古城井樓教会、桐寨鋪鎮惠小營教会と東王集鎮邱坡教会も光彩教会と同じく弾圧行為を受けた。駆けつけた一部のキリスト教信者が当局の乱暴な行為を阻止しようとしたが、公安に拘束された」

 

十字架を強制的撤去し、教会内の音響、楽器、聖書などの物品も持ち去ったとは、驚くべき振る舞いだ。まさに、神をも恐れぬ所行であるが、無信仰の者が行なう蛮行であろう。

 

(2)「河南省では、今年2月から当局が公認しない『家庭教』」の取り締まりが始まったが、最近になってキリスト教全体への弾圧がエスカレートしている。香港『明報』は、河南省永城市のある牧師の話を引用し、河南省で今は十字架が全て消え、政府が公認す『三自教会』も十字架がすべて撤去されたと報じた。河南省で4000カ所以上の教会から十字架が撤去されたと牧師は推測した。米国在住の中国出身の劉貽牧師は、このほど『ボイス・オブ・アメリカ』(VOA)に対して、河南当局は地方キリスト教教会の合併を計画していると語った。現地の複数の牧師からの話によると、恐らく3分の2の教会が閉鎖されるだろう」

 

中国固有の宗教と言えば、道教ぐらいで世界の宗教とは異質のものだ。来世を信じることなく、ただ、長寿と経済的な豊かさを祈るものだ。「心の安らぎ」を求めることと無縁である。こういう社会に育った中国人には、キリスト教などの信仰について深く考えるようなことはありえない。極めて即物的な行動を取るのは当然だ。気の毒な人々であろう。

 

(3)「河南だけでなく、北京、安徽、江西などでも近頃、宗教抑圧事件が相次いで起きた。『家庭教会』と『三自教会』の十字架などは、地方政府が『違法建築』として多数撤去した。劉貽牧師は、8月末にTwitterで、河南省の安陽、安徽省の馬鞍山などの地区で、当局が一部のキリスト教信者に信仰を放棄する声明または承諾書の署名を強要したと投稿した。北京のキリスト教『家庭教会』長老の徐氏はそれについて新唐人テレビ局(本部=米NY)に対して、この承諾書は本人のほか、家族の署名も強要していると指摘し『「まるで文化大革命時代に逆戻りのようだ」と話した」。

 

三自教会とは、中国政府が公認したキリスト教である。外部との関係を絶つことを条件に認められた経緯がある。その教会の十字架も違法建築という名目で撤去されている。こうした馬鹿げたことを行なう中国政府が、世界覇権など言い出すことに矛楯を感じないだろうか。世界覇権を握ったら、世界中の宗教を全て禁止するつもりだろうか。身震いするほどの勘違い政府と言うほかない。国粋主義に煽られた習近平氏の盲動であろうか。

 

(4)「今月1日付けで、中国各地の29人の家庭教会の牧師と長老は、ネットに実名で当局の弾圧を非難する声明を出した。署名数は910日現在、300人以上に増えている。声明によると、『改正宗教事務条例』が施行された20182月以降、地方政府はキリスト教会を抑圧し『その横暴ぶりは、文化大革命以来だった』と批判した」。

 

牧師と長老が、実名で政府の弾圧を非難する声明を出したことは、逮捕を覚悟であろう。受難である。この問題は、大きな社会不安を呼び込む契機になる危険性を帯びているように思える。