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米中貿易戦争は、新たな段階へ進む。米国の対中関税第3弾は、2000億ドル相当の製品に科すもの。9月24日から発動される。中国からのモノの輸入額のほぼ半分に追加関税が科されるのだ。中国は、これに対して「報復関税を科す」と発表した。

 

米国の第3弾が、中国経済に与える影響は大きなものが予想されている。家具や電気製品という耐久財にまで網が広げられたので、関連業界はこの落ち込みを内需でカバーすることは不可能である。すでに、関税引き上げが発動されたロボットや半導体の生産は、大幅に落込んでいる。家電や家具も同じく減産を余儀なくされよう。

 

中国政府は、こうした犠牲を払っても「中国製造2025」の産業高度化政策を守り抜く姿勢を見せている。だが、米国は中国による技術窃取に一段と警戒の目を向けている。FBI(連邦捜査局)長官は、中国の産業スパイ摘発を最大の目標にすると発表している。また。中国人留学生の数も絞るほか、米国内で開かれる国際学会への出席も拒むなど、敵対意識が前面に出てきた。「技術冷戦」という言葉が登場しているほどだ。

 

米国に同調して、日欧が中国のWTO違反による産業化政策に目を光らせている。

 

『日本経済新聞』(9月18日付)は、「WTO高まる改革機運、貿易戦争歯止めとなるか 中国の不公正是正求める」と題する記事を掲載した。

 

(1)「欧州連合(EU)が7月に作成した報告書『世界貿易機関(WTO)の近代化に向けた提案』が通商関係者の間に出回っている。(1)ルールづくり(2)透明性(3)紛争解決――の3分野で改革案を提示する内容だ。EUのトゥスク大統領は『あらゆる国がWTO改革に積極的に貢献してほしい』と呼びかける」

 

EUは、中国と経済的な結びつきも強いところから、米中の間に立って調整しようという動きも見せている。その場合でも、軸足は西側の民主主義の立場を堅持する。EUは、WTO改革で中国をいかに引き込むか腐心している。「総論賛成・各論反対」で我田引水という得意技を持つ中国だけに抜本的な解決は難しいという悲観論も多い。と言って、トランプ流の関税率引き上げに同調するとも言いがたい。微妙な立場である。

 

(2)「EUが念頭に置くのは世界第2の経済大国となった中国だ。中国政府は重点産業に補助金を支給したり、国有銀行を通じて低利で融資したりするなど手厚い優遇措置をとり、鉄鋼や石炭などの過剰生産を招いたとされる。輸出攻勢を受ける他国からは『市場原理をゆがめている』との不満が強いが、現行のWTOには規律するルールはない。加盟国は貿易関連措置をWTOに報告する義務があるが、『中国はほとんどの政策で補助金の内容を開示していない』(WTO事務局)。EUは『政府機関』の範囲を含めた補助金の定義の見直しや、禁止事項の拡大など透明性の向上を求める」

 

現在の中国が行なっている産業政策は、明らかにWTO違反である。だが、これを是正させるルールがないという弱点を抱えている。まさか、中国のようなルール違反常習国が現れると想定していなかったのだ。中国は、この穴をまんまと突いてきた。一説では、中国はWTOルールを研究し尽くしており、抜け穴を熟知している。「上に政策あれば、下に対策あり」という抜け穴探しの国である。中国にとってルールは、破るためにあるという感覚である。暴力団的な発想法である。

 

(3)「もう一つの大きな課題が知的財産権の保護だ。中国は外国企業の直接投資を認可する条件として技術移転を強制することが少なくないが、WTOには効果的に取り締まる手段がない」

 

中国は、強制的な技術移転を求める国だ。これは、改革開放(1978年)以来、一貫して続く技術窃取である。日本企業も随分、この遣り方に泣かされてきた。日本の場合、戦争責任を絡めてきたという。日本企業が渋ると、戦争責任論を声高に言い募って脅迫に等しいことを行なった。悪質な相手である。

 

(4)「7月、スイス・ジュネーブのWTO本部での会合で、米国のシェイ大使は、『WTOは問題に対応できていない』と訴えた。トランプ政権がいらだちを強めるのも、中国の不公正な貿易慣行だ。『米国が中国のWTO加盟を支持したのは明らかに誤りだった』。2018年1月、米通商代表部(USTR)は年次報告書でこう断じ、『中国では開かれた貿易体制の導入が進んでいない。WTOルールが市場をゆがめる行為を抑制するには十分ではないのは明らかだ』とも指摘した」

 

米国が怒るように、中国は箸にも棒にもかからない、三百代言の国である。それが、美辞麗句を並べて、まともなことを発言するから、関係者の怒りは沸点に達する。北朝鮮と同類と見れば間違いないであろう。一筋縄で行かないことを広く認識すべきだ。