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中国政府は最近の通達によって、地方政府の資金調達機関である「地方融資平台」の倒産を容認する方針を明らかにした。ただ、この地方融資平台の資金を補強する手段として、「混合所有制改革」(国有企業への民間企業の資本参入)を推進していくとも強調している。民間企業からの出資で、地方融資平台の資金繰りを付ける。こういう「便法」が浮上しているのだ。国有企業が、すでに惨憺たる状況に追い込まれており、習近平氏が描いた国有企業中心の産業構造にヒビが入った形だ。

 

『大紀元』(9月25日付)は、「中国、地方債務を民間に転嫁か、傘下投資会社の破たんを容認する方針」と題する記事を掲載した。

 

(6)「中国当局はこのほど、債務超過に陥った地方政府傘下の投資会社を清算し破産させる方針を明らかにした。当局のこの政策が新たな金融・社会的不安を引き起こす恐れが大きい。当局は13日、各地方政府に対して『国有企業の資産負債の制約を強化する指導意見』(以下、指導意見)を通達した。なかでは、『深刻な債務超過に陥り、償還能力を失った地方政府融資平台企業に対して、法に基づき破産重整または清算を実施す』と記された。破産重整は、中国の3種類の法的倒産続きのうちの1種類だ。日本の会社更生手続きに相当する」

 

地方政府は当初、債券発行を認められないにもかかわらず、経済成長維持のためにインフラや不動産の開発を積極的に行った。その財源確保のために、法の抜け穴として「地方融資平台」(融資プラットホーム)と呼ばれる投資会社を設立した。地方政府は、国債や土地使用権、国有企業の株式などを担保に、銀行や債券市場から資金を調達した。銀行の場合、地方融資平台への与信資金を、個人向けの資産運用商品、いわゆる理財商品を販売して投資家から集めた。

 

このように、地方政府と銀行は、「地方融資平台」を間に入れて資金調達しインフラ投資を支えた。だが、不採算事業ゆえに収益性は低く、借入金返済の段階で行き詰まった。中央政府は、この「地方融資平台」を倒産させるとの通達を出したのだ。金融情勢は大きく揺さぶられている。金融機関の破産は、「一波万波」の喩え通りに信用機構そのものを毀損する。安易に考えていると、中国経済の命取りになるだろう。

 

(7)「中央当局は、融資平台の負債について地方政府の債務と認めていないため、地方政府の『隠れ債務』と見なされている。その全容がいまだ不明だ。経済ニュースサイト『華爾街見聞』は今年2月に、長江産業経済研究院の調査報告について、融資平台1870社の2016年末までの負債規模が30兆2700億元(約484兆3200億円)に達したと報じた。さらに、金融情報サイト『和訊網』(8月23日)によると、清華大学経済管理学院の白重恩・院長が率いる研究チームの調査では、17年6月末まで、融資平台の債務残高が47兆元(約752兆円)であることが明らかになった。しかし、これはまだ地方政府の『隠れ債務』の一部にすぎない」

 

中国政府は、無責任である。地方政府に財政資金手当もせずにインフラ投資をさせながら、「地方融資平台」による債務は認めないという虫の良さに驚く。インフラ投資によるGDP押上げ効果は、習近平氏の手柄にした。資金調達については、「隠れ債務」で預かり知らぬという仕打ちだ。「一帯一路」で弱小国を食い物にしている構図とピッタリである。清朝時代の流儀を真似ているに違いない。

 

(8)「中国のセルフメディア『掃雷小組』が今年2月中旬に掲載した記事によると、中国当局は各地の隠れ債務規模の実状について調査を乗り出した後、危険な水準にあるとの結果を得たという。『掃雷小組』は、全国地方政府の隠れ債務が、少なくとも公表された数値の4倍であると試算した」

 

全国地方政府の「隠れ債務」は、少なくも公表債務の4倍はあると見ている。中国財政部(財務省)が7月に発表した統計によると、今年6月末まで、全国の地方政府の債務残高が16兆8000億元(約268兆8000億円)である。「隠れ債務」が公表債務の少なくも4倍とすれば、1072兆円に達する。公表と隠れ分の債務を合計すると、1600兆円強の債務総額だ。習近平氏は、この天文学的な地方政府の債務総額に対して、「知らなかった」「責任はない」と言えない立場だ。習氏は、無理矢理にインフラ投資でGDPを押上げた責任があるからだ。

 

地方融資平台を救済するために、民間企業の資金を取り入れる「混合所有制改革」を制度化している。アリババ系のアリペイが強引に「銀聯」へ合併させられたケースが続出するのだろう。これでは、民間企業の活力を奪うことになる。ますます、中国経済の将来は暗澹たるものになろう。