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韓国の出生率の急低下は深刻である。一人の女性が出産する子どもの数を示す「合計特殊出生率」が今年に入って1人を割って世界最悪の事態になっている。日本の1.4人も少なくて、政府はこれを1.8人まで引き上げると奮闘中だ。

 

それほど、出生率低下は国家の将来を左右する重要問題である。韓国の場合、日本以上に難問に直面している理由は、家賃制度にあることがおぼろげながら分ってきた。ならば、この家賃制度を変えれば良いのだ。それが、すぐにできないところが韓国の悩みである。儒教社会ゆえに、過去からの仕来りが重い足かせになっている。なんとも不合理な話である。

 

『朝鮮日報』(9月24日付)は、コラム「結婚放棄世代」を掲載した。筆者は、同紙の朴恩鎬(パク・ウンホ)論説委員だ。

 

(1)「韓国は2015年の時点で2049歳の女性の37%が独身だった。2000年は27%だった。昨年の結婚数264500件は人口1000人当たり5.2件で、1970年の統計開始以来最低となった。「韓国消滅」という事態を防ぐには、非婚人口・晩婚人口をまず減らすべきだという分析がある。ソウル大学のイ・チョルヒ教授が2016年に配偶者のいる女性を調査したところ、平均で2.23人を出産していた。これは2000年の1.7人よりもむしろ増えている数値だ。つまり、「結婚→出産」という流れはより強まっているのだ」

 

ここで重要な点が指摘されている。結婚した女性の子どもの数は、2000年の1.7人から2016年には2.23人へ増えていることだ。結婚しても子どもを持ちたがらない。そういう通説は否定されている。ところが、20~49歳の出産可能世代が37%も独身である。これは、相性がいい男性に巡りあえず結婚ができないことを示唆している。

 

(2)「深刻なのは、独身男女が結婚を避ける理由がますます増え、しかも強くなっているということだ。本紙「少子化」取材チームが会った3035歳の非正規職未婚男性は「ソウルで暮らすには、『伝貰』(チョンセ=住宅賃貸時に高額の保証金を大家に預け運用してもらう代わりに、月額賃料を支払わない賃貸契約)も2億ウォン(約2000万円)以上必要だ。そんなお金をいつ貯めろと言うのか」と嘆いた。それなりの企業に正社員として就職するのも夢のまた夢だ。青年失業率はますます悪化している。「最近は金持ちの家の子しか結婚できない」とまで言われている。結婚が特権になってしまったら、その国に希望はない」

 

韓国男性は、結婚問題についてどう考えているのか。結婚願望は強いものの、住宅問題がネックで結婚できない。そういう事情が浮かび上がってきた。韓国では、「伝貰」(チョンセ)という昔からの貸家制度がある。住宅賃貸時に高額の保証金を大家に預け運用してもらう代わりに、月額賃料を支払わない賃貸契約だ。その保証金が、なんと2億ウォン(約2000万円)以上も必要というから驚く。この「伝貰」が、結婚を邪魔しているならば止めればいいのだ。それができないところに悩みがある。

 

韓国の最大の問題はここにある。過去からの習慣を変えられないのだ。これぞ儒教社会の落し穴であるが、儒教は空気となって韓国社会を強制しているのであろう。韓国男子は、結婚するにはそれなりの資産を貯めないと、女性に結婚を申し込めない。「男子の威厳」とやらに縛られているのだろう。好きな女性がいれば、「愛情第一」で家庭を持てば良いのだ。その勇気が、韓国社会の仕来りによって邪魔されている。なんとも、不思議な社会に思える。