a0070_000250_m

中国経済は、気の毒なほど逆回転を始めた。市民は、不動産バブルに急かされるように、高騰する住宅を手に入れようと争ってきた。今、気付いたら膨大な家計債務が残り、月々の支払いに汲汲としている状態になっている。このバブルが、ここ10年も続いてきたのだ。中国の家計は債務型に変わってしまった。

 

これまで中国国民は、世界一の貯蓄好きと言われてきた。国の社会保障に期待できない以上、自分の身は自分で守るスタイルが確立していた。不動産バブルは、そういう生活スタイルを全て押し流して、借金依存型に作り替えた。

 

『サーチナ』(9月26日付)は、「日本の家庭の貯蓄額がスゴイ、それとは真逆の中国の現状」と題する記事を掲載した。

 

(1)「中国メディアの『点資訊』(9月23日付)は、日本の家庭の貯蓄額の多さと、それとは真逆の中国の現状に関する記事を掲載した。中国は貯蓄ゼロ世帯が全体の55%以上も占めているという。中国では富裕層と貯蓄のない家庭との格差が大きく、全体の10%ほどの世帯が国民全体の75%の貯蓄を所有しているという。35%の世帯は比較的貯蓄がある中間層で全体の25%を所有し、残りの55%の世帯が「貯蓄ゼロ」であるとしている」

要約すると、次のようなる。

    10%の世帯は、全体の75%の貯蓄を所有

    35%の世帯は中間層で、全体の25%を所有

    55%の世帯が貯蓄ゼロ

 

10%の世帯が複数の住宅を投機目的で所有している。35%の中間層が、住宅価格の先高観に踊らされて多額の住宅ローンを組み、支払いで四苦八苦している。個人消費の堅実な担い手になるべき中間層が、住宅ローンの負担にあえいでいる。55%の世帯は農村家庭であろう。彼らには、住宅を購入する余力はない。

 

(2)「中国における金融機関の預金残高増加率は、2018年6月に過去40年で最低となった。96年に50%超えを記録して以来、2008年の金融危機を境に下がり、今年6月は8.4%にまで落ち込んだ。民間の貯蓄部門に限ると、08年から18年の10年間で、増加率が08年の18%から18年の7%までに下落している。今年中にはマイナスになるとも言われている」

 

金融機関の預金残高増加率が、2018年6月に過去40年で最低となった背景には、預金金利の低位固定化が災いしている。2%台の預金金利では、消費者物価上昇率を差し引けば実質金利は「ゼロ同然」になる。そこで、非金融機関の発行する金融商品(理財商品)に預金が流出していることは疑いない。また、インターネット金融の「P2P」に預けられてもいる。

 

だが、ここへ来て極めて憂慮すべきことが起こっている。政府が、非金融機関の倒産を認めたことだ。すでに、「P2P」では倒産が多発しており小口で投資した人々の中には、虎の子を全て失い、失望の余り自殺するという痛ましい犠牲者が出ている。要するに、最後まで銀行に残っていた預金は安全としても、高利を求めて流出した預金については、どれだけ、手元に戻るか疑問符がつくほど、信用危機の状態になっている。

 

 

中国では、モバイル金融が異常な発展を見せた。この裏には、銀行に預金口座がないという人々が利用した側面もある。従来の「金融難民」が群がったのだ。「アリペイ」があれだけの急発展をとげて、中国の金融システムに収まらなくなったのは、金融難民の存在抜きには考えられない。そのアリペイは、クレジットカードの銀聯と合併させられた。政府の意図は不明だが、銀聯に多額の未回収金が発生しているための「穴埋め」役をさせられているのだろうか。

 

『ウォール・ストリート・ジャーナル』(9月25日付)は、「中国の消費は減速しているのか?」と題する記事を掲載した。

 

(3)「中国の電子商取引最大手のアリババグループが始めた年に1度の買い物イベント、1111日の『独身の日』セールがいよいよ6週間後に迫っている。ところが、現地のチャットルームは中国の『消費降級』の話題で盛り上がっている。『降級』という言葉が示唆するほど深刻ではないが、やはり懸念するべきだろう。中国の消費者はいくつかの痛みに直面しようとしている。米国との貿易戦争によって労働集約型の輸出セクターは打撃を受ける可能性が高く、自動車のようなセクターは税制優遇措置が失効したことで苦戦してきた」

 

例年の11月11日の「独身の日」のビッグセールの売上高が話題に上がっている。今年は、「降級」というのが大方の見方だという。どれだけ減るのか、関心の的だ。この日の売上高で方向性は見えるだろうが、厳密なものではない。「感触」程度だろう。