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韓国経済は、これからどのような道を歩む積もりだろうか。従来の主力は、自動車と半導体であった。これらの二業種に明らかな変調の兆しが見える。

 

自動車は脱落しかけている。労働組合の賃金攻勢によって高い賃金コスト体質に陥っている。現代自動車の売上高営業利益率は、すでに5%を割り込んでおり「再起不能」に近い限界状況に直面している。

 

残るは半導体である。半導体市況は大きな山谷を描く特色がある。装置産業ゆえに、一度設備が完成すると、生産過剰に落ち込み市況は急落する。これによって、設備投資が手控えられると、品薄となって市況高騰に見舞われる。これを機に再び設備投資すると、また過剰設備化して、市況が急落する。この繰り返しだ。現状は、半導体市況が急上昇して「我が世の春を謳歌」しているが、そろそろ峠に差し掛かっている。市況急落説が出てきたのだ。

 

『朝鮮日報』(9月28日付)は、「韓国経済支える半導体、価格急落予測」と題する記事を掲載した。

 

この記事は、やや専門的な記述が多いので、私のコメントだけでも読んでいただければと思う。かつての経済記者としての「勘」を取り戻して書きたい。

 

(1)「韓国経済を唯一支えてきたメモリー半導体市場にも警告音が鳴り響いている。主要製品のNAND型フラッシュメモリーの価格が今年1012月期から急落すると予想されるからだ。半導体の市場調査会社である台湾のDRAMエクスチェンジは26日、1012月期のDRAM平均価格が79月期に比べ5%下落すると予想した。下落幅は当初予測(13%)を上回るものだ。半導体市場の分析担当者、エイブリル・ウー氏は「メモリーの需要が減少し、供給不足が解消され、DRAM価格が予想よりも落ち込む」と予想した」

 

世界の半導体では、量的にはメモリー半導体が圧倒的なシェアを持つ。いわゆる量産品であるため、幅広い需要先を持っているからだ。それだけに市況変動が激しい。非メモリー半導体は、システム半導体と呼ばれており特殊分野、例えば全自動運転車などは、システム半導体が多用される。韓国は、この分野が未発達である。1990年代から2000年代にかけて、日本の半導体が世界市場を制したが、日米半導体調整で力を失い、韓国に席を譲った。ただ、システム半導体では技術力を蓄えている。

 

10~12月期のDRAM平均価格が7~9月期に比べ5%も下落すると予想されている。下落幅は当初予測(13%)を上回るもので、これが半導体市況の本格的下落の根拠とされている。

 

(2)「半導体価格の下落で、韓国の2大半導体メーカーであるサムスン電子とSKハイニックスの業績も1012月期から低迷するとの見方が支配的だ。これに先立ち、ゴールドマン・サックス、モルガン・スタンレーなど世界の主な投資銀行も、世界のメモリー半導体需要が減少し、在庫が増え、価格圧力が強まるとし、1012月から業界の景気が低迷するとの予想を相次いで示した。DRAMの場合、大口の取引先に供給する場合に適用される固定取引価格は横ばいだが、短期取引価格であるスポット価格は今年上半期から下落に転じた。8ギガビットDRAMのスポット価格は今年1月時点で9.65ドルだったが、27日には7.34米ドルと24%下落した。スポット価格の下落が進めば、固定取引価格も下落が避けられない」

 

市況製品の価格は、スポット価格と固定取引価格に分けられる。スポットは、短期的な需給変動を反映するが、固定取引価格は長期の売買契約に基づくので固定される。ただ、スポット価格が需給を反映するので、固定取引価格のシグナルになる。そのスポット価格が、今年上半期から下落しているのだ。半導体の需給関係が、すでに緩和に向かっている証拠である。この点を軽視してはならない。固定取引価格の下落は不可避となった。半導体業界からは、パソコン、サーバー、モバイル用メモリー半導体の需要が同時に減少し、値下がりが予想よりも急激なものになるとの分析が聞かれる。

 

(3)「半導体市場が低迷すると、韓国の輸出にも打撃が懸念される。韓国の輸出全体に占める半導体の割合は2015年の11.9%から今年は21%にまで高まった。しかし、半導体価格が低下すれば、輸出額が大幅に減少し、半導体設備・素材メーカーにも悪影響が及ぶ。IT業界関係者は「韓国経済と輸出を唯一支える半導体の景気が悪化すれば、経済全般に打撃が心配される」と話した」

 

半導体市況の下落は、韓国の輸出に影響をもたらす。輸出全体に占める半導体の割合は2015年の11.9%から今年は1~8月で22.5%に高まった。しかし、半導体価格が低下すれば、輸出高の大幅減少は避けられない。既述の通り、自動車産業が輝きを失ってきた現在、半導体輸出高が減少に転じれば、韓国輸出は総崩れとなる。文政権に、その対応があるとは思えない。来年の韓国経済は相当の危機感に直面するであろう。今から、それを確実に予想できる。