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文大統領は社会派弁護士出身である。経済的に恵まれない人のために一生懸命に弁護する。これが、習い性になっているようだ。北朝鮮への経済制裁が解ければ、韓国が北朝鮮を支援する過程で、韓国経済も潤うという演説を先の訪米の際に行なっている。

 

かつて、西ドイツが東ドイツを吸収合併した際、西ドイツがどれだけ財政的な負担が増えたか知らないようだ。西ドイツ(合併後はドイツ)は、約10年も成長率が低下して大変な重荷であった。当時、「これでは合併しなければ良かった」という愚痴も聞かれたのだ。

 

今回の南北の経済交流では、ドイツよりもさらに条件は悪くなる。北の利益は金ファミリーが独占して、民衆には渡らないことだ。韓国は、金ファミリーにせっせと貢ぐ形で、見返りは少ないだろう。北の民衆が豊かになれば、韓国の製品も売れる。だが、北の所得水準が上がる前に金ファミリーが横取りするはずだ。東ドイツでは支配層は一掃されたので、金ファミリーのような存在はなかったのだ。

 

『韓国経済新聞』(9月28日付)は、「対北朝鮮制裁が解除されると韓国経済が新たな活力を得るとの主張」と題する社説を掲載した。

 

(1)「文大統領は米FOXニュースとのインタビューで「北朝鮮の非核化が完了され、制裁が解除されてこそ南北間の本格的な経済協力が可能になり、それは難しい状況に置かれている韓国経済に新しい活力になる」と述べた。米外交協会の演説では「対北朝鮮制裁が解除されたら、韓国は北朝鮮の経済発展のために先導的に努める用意がある」と強調した」

 

後のパラグラフに出てくるが、韓国経済の不信は、最低賃金の大幅引き上げが要因である。いわば、構造的問題であって需要不足で起こった問題ではない。北朝鮮支援は新規需要増を見込むが、それは「焼け石に水」程度のことだ。失業率の改善など起こるはずがない。

 

(2)「今一度考えてみなければならないこともある。南北間の経済協力が本格化さえる場合、韓国が負担しなければならないインフラ支援などの費用が少なくないとの事実も明確にしなければならない。韓国統一部は、2007年10・4宣言の社会間接資本事業履行だけに14兆3000億ウォン(約1兆4578億円)かかると推算した。金融委員会は北朝鮮インフラ投資費用で153兆ウォン(約15兆円)、未来アセット大宇は112兆ウォン(約11兆円)が必要だと推定した」

北のインフラ支援で11兆~15兆円はかかるという。この財政負担が韓国にのしかかかるのだ。鉄鋼やセメント、車両などは売れるとしても、投下資金のどれだけが回収できるのか。例によって、北にむしり取られるに決まっている。甘い計算をしないことだ。

 

(3)「もう一つはっきりしないといけないのは、「難しい状況に置かれている韓国経済」に対する原因診断だ。米国をはじめとする世界主要国は一様に好況を享受しているのに、韓国だけ困難に陥った理由が何なのかをまず冷静かつ謙虚に、率直に省察しなければならない。企業のやる気を奪い、意欲を失わせるような投資と労働、税制など誤った政策で、韓国の経済だけが沈滞のドロ沼に陥ったのであれば、その政策を正すのが急務だ。このような現実から目をそらし、南北経済協力から活路を見出すとの構想は理解し難い」

 

現在の経済政策は、企業虐めに徹している。大企業法人税を引上げる。最低賃金の大幅引き上げをする、という具合だ。これでは、企業が安心して設備投資も行える状況でなく、じっと様子を見るほかない。次期政権も現政権の延長であれば、韓国経済は「死亡宣告」を受けるのも同然である。

 

文政権は、企業家心理に対して全く無理解である。この状況を改善するだけで、韓国経済は上昇軌道に乗れるであろう。北朝鮮支援とは別問題である。