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フィリピンのドゥテルテ大統領は7月に、新憲法の下で2期目再選は目指さないことを明らかにしていた(『ロイター』7月6日付)。理由については、全く触れずにいたので、新憲法制定を機に引退かと思われた。

 

だが、最新ニュースでは「がん検診を告白」ということで衝撃が広がっている。

 

『日本経済新聞 電子版』(10月5日付)は、「フィリピン大統領、がん検査受診を告白」と題する記事を掲載した。

 

(1)「フィリピンのドゥテルテ大統領は4日夜の演説でがんの検査を受けたと明かした。『検査結果を待っているが、もしがんであれば、がんだと明らかにする』と述べた。3日の閣議などを欠席し、健康不安が浮上していた。ドゥテルテ氏は3週間前に消化器と結腸の内視鏡検査を受けたと説明。『もし、がん(の進行状況)がステージ3なら、治療はしない。苦痛を長引かせたくない』と語った。ロケ大統領報道官は、ドゥテルテ氏が3日の閣議を欠席した際に『休暇を取っているだけだ』と話していた。ドゥテルテ氏は73歳で、過去にも何度か、健康不安がささやかれた経緯がある」

 

状況証拠から言えば、ガンの恐れが強そうだ。

   3週間前に消化器と結腸の内視鏡検査を受けた。

   10月3日の閣議を欠席するということは、「再検査」で緊急を要した。

   がん(の進行状況)がステージ3とまで、具体的に病状の進行状態を医師から告げられた。

   過去にも何度か、健康不安がささやかれた。

 

大統領の病状は、フィリピン政治と直結する。フィリピンは、南シナ海の領有をめぐって中国と常設仲裁裁判所で争ってきたが、全面勝訴の判決を得た。その直後に大統領に就任したドゥテルテ氏は、一転して中国と和解の道を選んだ。その際、中国はフィリピンへ240億ドル(約2兆7000億円)の投資を約束した。あれから2年。当時計画された案件のほとんどが実現していないことが今年9月に判明。ドゥテルテ大統領が、これといった成果なしにフィリピンの主権を弱体化させた、という懸念が比国民の間で高まっていた。その矢先に起こった大統領の健康不安である。国民が、どのような対応を迫るのか。早期の辞任要求となれば、混乱は免れない。

 

大統領選が行なわれる事態となれば、最大の関心事は中国問題である。

 

『ブルームバーグ』(9月16日付)は、「中国寄りドゥテルテ大統領への懸念、フィリピン国民の間で高まる」と題する記事を掲載していた。

 

(2)「ドゥテルテ大統領は2016年10月に北京を訪問した際、27の協定に署名。中国は90億ドルのソフトローン(低利融資)に加え、鉄道や港湾、採鉱プロジェクトなどに対する150億ドルの直接投資を約束した。期限は定められなかった。フィリピンのペルニア国家経済開発庁長官によれば、以降、中国との間で実現した借款協定は、首都マニラ北部における7300万ドル相当の灌漑(かんがい)プロジェクト1件のみだ。マニラではこのほかに、中国が資金援助する2件の橋梁(きょうりょう)建設が7月に始まった。日本など他国から援助を受ける場合と比べ、中国からの融資手続きは「より時間がかかるようだ」とペルニア長官は話す」

 

ドゥテルテ氏は2016年10月に北京を訪問し、27の協定(実施時期未定)に署名した。その後、中国の実施したプロジェクトは1件のみ。中国が、「一帯一路」に賭ける熱意とは異なり冷淡な振る舞いを見せている。フィリピンが、米国の同盟国であるからだ。

 

(3)「調査会社ソーシャル・ウェザー・ステーションズが6月に実施した調査によると、フィリピン人の中国に対する信頼度は、ドゥテルテ氏が大統領に選ばれる前の16年4月以降で最低水準まで急落した。調査に回答した10人中9人近くが、フィリピンは中国に対して南シナ海における自国の権利を強く主張すべきだと述べた。比シンクタンク、ADRストラトベース・インスティテュートのリチャード・ヘイドリアン氏は『投資協定を歓迎する高揚感の波が去ると、私たちは中国による計画が大幅に誇張されたものだったことに気が付いた。日本や欧米諸国は今後も、フィリピンにおける外国投資の主要な担い手であり続けるだろう』と述べた」

 

フィリピン人の中国に対する信頼度は急落している。10人中9人近くが、フィリピンは中国に対して南シナ海における自国の権利を強く主張すべきだとしている。これは当然、「ドゥテルテ批判」となっているだろう。仮に、ドゥテルテ大統領の早期退陣となれば、「反中国」大統領が出現するであろう。中国にとっては、また頭の痛い問題が起こるはずだ。