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中国の「一帯一路」」が、世界銀行のシンポジュームのテーマになるほど「時の問題」になったのは、弱小国への「債務漬け」だけでなかった。「一帯一路」プロジェクトの受注はオープンにするとの約束を破り、全体の85%を中国国有企業が受注したことへの批判である。

 

これでは、仰々しく「一帯一路国際シンポジューム」という名前を付け、主要国を集めた会議など開く必要はないのだ。中国は、このように「一帯一路」を売名行為に使い、実際の受注は中国企業に請け負わせる裏工作をしていた。

 

『ウォール・ストリート・ジャーナル』(2017年5月15日付)は、「『一帯一路』に大きく賭ける欧米企業」と題する記事を掲載していた。

 

(4)「中国のインフラプロジェクト『一帯一路』は欧米企業にとって巨大なビジネスチャンスを提供する。ただしそれは、中国や対象地域で既に深い関係を築いている場合だ。プロジェクトの対象はアジア、アフリカ、欧州の国々にわたり、道路や港、パイプライン、その他のインフラに対する投資は9000億ドル(約102兆円)を超える見通し。請負業者や納入業者の選定に関して、中国政府からの情報が不足していることに、一部で批判も出ている」

 

欧米企業は当初、「一帯一路」の巨大プロジェクトへの期待が大きかった。プロジェクトの実施範囲が、アジア、アフリカ、欧州の国々にわたり、道路や港、パイプライン、その他のインフラに対する投資は9000億ドル(約102兆円)を超える見通しであったからだ。この巨額プロジェクトに目を奪われて、日本のメディアも「一帯一路」に参加すべしと沸き立ったものだ。だが、中国の行動パターと中国経済の置かれた深刻な過剰生産実態から見て、受注を他国に渡す度量を持つはずがない。私は、こういう視点からブログで反対し続けた。結果は、中国の「独り占め」に終わって、世界中から総スカンを食っている。

 

(5)「習近平国家主席は(2017年)5月14日に北京で開幕した『一帯一路サミット』で、中国が自由貿易を促進する姿勢を示し、新たに1000億ドル超を拠出することを表明した。2013年に立ち上げられた一帯一路プロジェクトは、中国と中央アジア、アフリカ、中東、欧州を結ぶシルクロードを復活させ、中国が同国からの輸出をしやすくすることが狙いだ。ハネウェル・インターナショナル、ゼネラル・エレクトリック (GE)、キャタピラーといった国際企業は、一帯一路プロジェクトに参加する計画を進めている。こうした企業は中国政府と確たる関係を築いており、恩恵を被る態勢にある」

 

昨年5月のシンポジュームで習氏は、新たに1000億ドル超を拠出することを表明した。これで、国際企業はますます受注への期待を深めた。今になって見れば、全て中国の「空手形」であった。裏切られた感じであろう。

 

中国は2017年、対外融資のために5000億ドルの債務を増やしている。経常収支の黒字減少も原因で、2017年の対外純資産残高は、それまでの2位(1位は日本)の座をドイツに譲り3位へと後退した。このように、中国の懐事情は悪化している。もはや、習氏の言うように大盤振る舞いできる状態でなくなった。今後は、ますますこの傾向が強まっていくはずだ。金融的に見て、「一帯一路」は縮小せざるを得ない事態に突入している。

 

(6)「一部企業は、資金調達面では欧米企業よりも中国勢が有利だとみている。中国工商銀行 (ICBC)は、中国企業への融資を優先していると述べ、その多くは既に顧客だと説明。ロンドン拠点の幹部は『欧米の銀行より有利な取引を提示できる』と述べた。そのためシーメンスは、プロジェクト入札時には共同資金調達や協調融資を提案すると幹部は話す」

 

欧米企業は、「一帯一路」プロジェクトの入札が、純粋な経済要因だけで決まると予想していた。実態は、全く異なっていたのだ。中国政府の「債務漬け」という閉鎖的な手法がとられ、オープンな入札などあり得なかった。商談は、「密室の取引」である。政治的経済的な力関係で決められたのである。これでは、欧米企業の参入できる余地などあろうはずがない。ならば、なぜ「一帯一路」国際シンポジュームなど開催したのか。見栄を張ったのであろう。

 

米国は、中国による「一帯一路」戦略の歪みを是正させるべく、「一帯一路」に対抗する新組織を立ち上げることになった。

 

『ウォール・ストリート・ジャーナル』(9月3日付)は、「『一帯一路』に対抗、米が開発融資で新組織」と題する記事を掲載した。

 

(7)「米議会では中国に対抗し、世界の開発案件で米国の役割を拡大するための立法化作業が大詰めを迎えている。法案は、あまり知られていない複数の政府機関を集約し、新組織として600億ドル(約6兆7000億円)の開発融資を行う権限を付与する内容だ。融資枠は、国際開発案件を従来担ってきた海外民間投資公社(OPIC)の倍以上の水準に引き上げた。トランプ政権も法案を支持しており、今夏には下院を賛成多数で通過。上院が成立に向けた最大の正念場となっている」

 

米議会は有名無実化している複数の政府機関を集約し、新組織として600億ドル(約6兆7000億円)の開発融資を行う権限を付与する内容だ。金額的には少ないが、これを土台にして融資規模の拡大を目指すとしている。このニュースに対して、中国外交部報道官は、せせら笑いをして、「言葉だけでなく実行せよ」と挑発した。米国の底力を弁えない「寝言」に聞える。この中国は、日本へ「一帯一路」の資金的SOSを打っている。それを忘れた言動である。

 

(8)「新たな機関は、幅広い権限を付与されており、世界の大型インフラ整備や開発プロジェクト向け融資で、中国と真っ向から対決する。法案成立への機運が高まっている背景には、すべての道を中国へと向かわせ、世界貿易の流れを塗り替えようと壮大な野心を抱く中国に対し、与野党問わず懸念が高まっていることがある。中国は2013年に一帯一路の計画を発表して以降、世界の高速道路や鉄道、港湾建設などに数兆ドルを投じる構えを見せている」

 

中国が、数兆ドルに及ぶ資金を投入するというのは、単なるアドバルーンである。実現不可能だ。日本に資金援助を求めていることが、「一帯一路」破綻の前兆である。だが、中国は米国の覇権を狙っていることを明らかにした以上、中国に遅れをとる訳にはいかない。そういう「意地」が、米国を動かしている。