人民元の対ドル相場の下落が加速化している。中国当局は、為替相場を対米貿易摩擦の切り札に使わないと繰り返すが、じりじりと1ドル=7元に向かっている。10月31日23時10分の相場は1ドル=6.9761元である。中国人民銀行は31日、元の対ドルでの基準値を1ドル=6.9646元に設定した。基準値としては、2008年5月以降の安値水準である。朝の基準値は、23時ではさらに売られている。

 

10月の製造業PMI(購買担当者景気指数)が発表された。9月よりも.さらに悪化して50.2となった。2016年7月以来の低水準で、9月の50.8から急激な落込みである。PMIは、50以上は好況、50以下は不況という判断基準である。10月の50.2は、50スレスレの数値で、11月のPMIは50を割り込むであろう。そうなれば、「中国不況入り」とう認識が一気に高まる。

 

注目に新規輸出受注を示すサブ指数は46.9である。9月の48.0から低下し、5カ月連続で50を下回ったまま。中国の輸出はこれまで、米国の関税引き上げを回避するため企業が出荷を前倒ししたので、堅調さを維持してきた。だが、前記の新規輸出受注を示すサブ指数46.9が示す通り、今後数カ月間に輸出額は、輸出受注サブ指数の低下のように急減する懸念が強い。人民元相場は、製造業PMIの悪化を反映したものだ。

 

『大紀元』(10月31日付)は、「人民元1ドル=7元大台が目前に、急落阻止に外貨準備を活用か」と題する記事を掲載した。

 

(1)「スイス銀行(UBS)はこのほど、元相場について短期的に1ドル=7元台で、2019年末の人民元は1ドル=7.3元の水準まで下落すると予測した。主因は、米中貿易戦、中国の景気鈍化、緩和的な金融・財政政策と、経常収支の悪化があげられる。UBSは、中国経済減速で19年の国内総生産(GDP)成長率は今年の6.5%前後から6%に低下すれば、1ドル=7.5元台まで元安は一気に進むとして、元安阻止で外貨準備の活用は無意義だと示唆した」。

 

UBSは人民元相場の低落を予想している。理由は、次の4点である。

    米中貿易戦=来年から本格的な影響が出る。

    中国の景気鈍化=来年のGDPは6.2%程度まで低下する。

    緩和的な金融・財政政策=預金準備率引き下げや減税実施。

    経常収支の悪化=来年の経常収支赤字は輸出減から当然起る。外貨準備高の取り崩し始る。中国政府が「一帯一路」に及び腰になっている最大の要因は、経常収支赤字を恐れていることだ。

 

GDPは、今年の6.5%前後から来年6%に低下すれば、1ドル=7.5元台まで元安が一気に進むと見ている。この予測の的中率はかなり高いであろう。中国経済はこれまで、無駄なインフラ投資に支えられて実勢悪を糊塗してきた。だが、米中貿易戦争でダメ押しを受ける。年貢の納め時を迎えるのだ。