文大統領は11月1日、来年度の予算案を説明する施政方針演説で、「所得主導成長」を初めとするこれまでの経済運営基調を維持していく方針を明確にした。文大統領は、「共に豊かに暮らそう」という表現を11回も繰り返したという。その通りである。人間は豊かな生活を送れる権利を持っている。問題は、政策がそれをいかに正しく実現するかだ。

 

文大統領は、登山が趣味である。高山に登るには、登山道を歩くことである。文氏は、最短距離を理由に、登山道を外れた崖道をよじ登っていることに気付かないのだ。まさに「経済トンチンカン」である。こういうリーダーに率いられた韓国国民は、「共に豊かに暮らそう」という目標の達成は不可能。遭難は確実である。

 

景気動向指数の「一致指数」は、4月から連続6ヶ月下降し続けている。韓国の景気判断では、この局面をもって「不況期入り」と公式判断している。これに従えば、韓国経済は10月から不況期に突入した。

 

文氏は、弁護士出身である。今回の韓国大法院(最高裁判所)が、日本徴用工裁判に見せた「時空を超えた判決」は、浮き世離れした現実無視の最たるケースである。実は、文氏にもこういう思潮傾向が見られる。現実から逃避した空想に生きている。国民が豊かになるには、先ず生産性を上げ、その上で分配率を引上げることが「正規の登山法」なのだ。

 

『朝鮮日報』(11月2日付)は、「不況の最中に分配訴えた文大統領施政方針演説」と題する社説を掲載した。

 

(1)「文在寅(ムン・ジェイン)大統領は国会で来年度予算案を説明する施政方針演説を行い、「所得主導成長」をはじめとするこれまでの経済運営基調を維持していく方針を明確にした。文大統領を「共に豊かに暮らす包容国家」を国家目標とし、そのために「所得主導成長、革新成長、公正競争を中心とした政策基調が続けられなければならない」と述べた。文大統領は35分間の演説の相当部分を分配、二極化、不平等などいわゆる公正経済問題に割いた」

 

「所得主導成長」には、甘い響きがある。高い所得を生むには、「分配が先か」「生産性を上げるが先か」という根本問題がある。文氏は、反企業主義者である。「生産性」を上げると、企業が悪巧みをして私服を肥やすに違いない。それを防ぐには、先に最低賃金を大幅に引き上げて労働者の権利を確保する。こういう発想法に従っているのであろう。この方法を採用して大失敗したのがフランスである。仏政府は、OECDから忠告を受け、すぐに最賃引上幅を圧縮した。生産性上昇に見合ったペースに戻し、「景気の乱調」は収まった。韓国は、すでにOECDとIMFから警告を受けている。だが、「崖道登山」を強行しているのだ。墜落死は確実であろう。

 

(2)「文大統領は「共に豊かに暮らそう」という表現を11回繰り返した。共に豊かに暮らすことは全ての国々の目標だ。ところが、共に豊かに暮らす道を見つけた国は豊かになり、おかしな道を歩んだ国は豊かにはならない。現在の文大統領は韓国をどちらの道に導いているだろうか。豊かになる道に向かっていると自信を持って言えるか。文大統領の就任以降、所得分配はさらに悪化している」

 

韓国国民は、こういう夢想を好む大統領を選んだのだ。反対ならば、もう一度「ロウソクデモ」をやって意思を示すほかない。