米国内で、今回の中間選挙をめぐる評価はいろいろある。一つ共通しているのは、「トランプ敗北」でないことだ。株価上昇は、トランプ敗北でなかったことの安堵感が表れたのかもしれない。次に紹介する見方は、トランプ氏がこれまでの自由奔放戦略から軌道修正するとの期待感を見せたものだ。

 

『ブルームバーグ』(11月8日付)は、「米ねじれ議会は世界市場に最良の結果ーJPモルガンのコラノビッチ氏」と題する記事を掲載した。

 

(1)「中間選挙が米国に「ねじれ」議会をもたらしたのは、世界の市場にとって最良の結果だった。JPモルガン・チェースのストラテジスト、マルコ・コラノビッチ氏が7日のリポートでこのような見方を示した。この結果によって貿易を巡る緊張が緩和され、年末に向けた相場上昇につながる可能性があると同氏はみている」

 

ここで取り上げた見方は、株価だけ上がれば良い、という「罫線屋」的発想である。米国や世界にとって、何が重要かという視点が完全に欠落している。

 

(2)「この考え方は、上下両院とも共和党が維持するのが最良の結果だと考えていた一部のアナリストらとは正反対の見方だ。コラノビッチ氏は、トランプ政権の昨年の政策は親ビジネスだったが、今年は貿易戦争や保護主義など「強いアンチビジネス」政策になったと指摘。従って、共和党が勝利すれば貿易戦争の肯定と見なされかねなかったと分析した」

 

なぜ、貿易戦争が起ったのか。そういう原因に踏み込まない点で視野が狭い。

 

(3)「トランプ大統領は、議会に頼れず米連邦準備制度理事会(FRB)の緩和策にも期待できないとなると、「景気の勢いを維持するために自分の権限でできることをしなければならなくなる。つまり、景気にマイナスの貿易戦争をやめることになる」とコラノビッチ氏は記述した」

 

株価さえ上がれば、それで満足である。世界秩序がどうなろうと関知しない。そういう認識が表明されている。何か、米国版「守銭奴」というイメージである。