中国では、「不動産信仰」が根強く、住宅が投機対象になっている。最近の調査では、5000万戸が、値上がり期待で空き家になっているという。だが、住宅の実需は尻つぼみになってきた。この先、値下がり期待が強まれば一気に売りに出されるはず。その時期が迫っている。

 

『ブルームバーグ』(11月9日付)は、「中国の住宅の5軒に1軒は空き家、全体で5000万戸余り」と題する記事を掲載した。

 

(1)「住宅は居住するためのものであるべきだと主張する習近平中国国家主席のスローガンは、聞き流されているようだ。中国全体で数千万戸に上るアパートや家が空き家となっている。調査を行った四川省成都市の西南財経大学の甘犁教授によると、中国の都市部の住宅のうち空き家は約22%であることが近く公表される研究結果に示されており、5000万戸余りに上るという」

 

主要国空き家率は下記の通りである。

日本 13.5%

台湾 14.2%

米国 12.7%

中国 22.4%

 

中国の空き家率が、際だって高い。中国では、内装をしないままで住宅を売買する。だから、空き家でも新築並みの値段で売却可能だ。固定資産税がない国である。住宅投機を奨励しているようなものだ。多くが、共産党幹部が持ち主。固定資産税がかからないので、長期保有が可能である。

 

(2)「政策当局者にとって悪夢のシナリオは、不動産市場が傾き始めた場合に空き家所有者が物件売却を急ぐ展開で、価格下落の悪循環を招きかねないという。2017年の調査に基づく最新データでは、政府の不動産投機抑制策も十分に奏功していないことが示唆されている。甘教授は、『空き家率がこれほど高い国はほかにない』と述べ、『不動産市場で亀裂が表面化した場合、売りに出される住宅が洪水のように中国に打撃を与えるだろう』と述べた」

 

住宅価格は最近、変調が起っている。本格的な値下がりに転じれば、空き家の5000万戸が売り手として不動産市場へ登場する。市況は一気に崩落して修羅場と化す。その時期は近い。中国の金融状況が切迫しているからだ。外貨流出と人民元投機が重なって騒然となるだろう。住宅価格が無傷であるはずがない。