米通商法301条は、広汎な調査権を持っている。現在は、知財権侵害や保護主義の実態調査に基づき、中国へ改善策を突き付けている。ただ、中国がこれに応じないので、高関税で対抗しているところだ。

 

米国は、さらに奥手を使う動きを見せている。ネットメディア・インサイド『USトレード』は1111日に消息筋の話として、米国が301条に基づき中国労働者の権利と労働条件に関する調査を行うと報じた。この消息筋は、米通商代表部ロバート・ライトハイザー部長について「経験豊かな政治家であり、下院で支持される貿易政策を模索している。301条はその道具として使えるだろう」と述べたという。

 

米下院は、民主党が多数派を占めることになった。中国の労働問題は、民主党にとってうってつけのテーマである。米通商代表部が、民主党を味方につけるには、中国の労働問題を俎上に乗せることが必要であろう。米国が、どこまでも中国を追い詰める戦略の一端を窺わせている。

 

『大紀元』(11月12日付)は、「米通商部、中国での労働者権利の調査を検討か」と題する記事を掲載した。

 

(1)「1974年に施行した米国貿易法の第301条は次の労働条件を「不公平な貿易慣行」と定めている。
1
、労働者に結社(組合)の権利を与えない 
2
、労働組合の権利と集団交渉権を拒否する 
3
、強迫的あるいは強制労働が認められている 
4
、児童労働や最低年齢の規定がない
5
、最低賃金、労働時間、労働環境の安全や健康基準が定められていない」

 

共産党政権が、労働者の権利を侵害しているとは、これ以上ない皮肉であろう。

 

(2)「別の情報筋によると、米通商代表部は新たな自由貿易協定の枠組みと労働規定について議会の賛成を得る準備をしている。ジョージ・W・ブッシュ政権時代、米国労働組合連合は通商代表部に対して、中国政府は国内労働者を搾取し不公平な貿易条件を作り出しているとして、300以上の案件について調査するよう申し入れた。しかし、通商部は調査を行わなかった。米議会の中国問題に関する連邦議会・行政府委員会(GU)は10月に発表した年次報告書で、中国における労働条件について批判した。同委員会は2000年に設置され、中国中央政府の人権と法治を監視している」

 

ジョージ・W・ブッシュ政権時代、米国労働組合連合は通商代表部に対して、中国政府は国内労働者を搾取し不公平な貿易条件を作り出しているとして、300以上の案件について調査するよう求めていた。当時の米通商代表部は政府の意向を反映して、調査もせずに放置していた。米議会の中国問題に関する連邦議会・行政府委員会(GU)は現在、10月に発表した年次報告書で中国における労働条件について批判している。こういう状況変化から見れば、米国が中国の労働問題を調査する公算が強まったと言えよう。中国には、難題がもう一つ加わる。