韓国の雇用構造は、完全に破壊された。文政権が、強力に推進する大幅な最低賃金引き上げ策が原因である。低所得層を守る主旨で行なわれた最賃大幅引き上げが、逆に低所得層を追い詰めている。何とも矛楯した話だが、いかんともし難い。韓国経済の「自滅」の日が迫ってくるだけであろう。

 

『朝鮮日報』(11月13日付)は、「景気悪化の韓国、来年以降さらに強まるリストラの嵐」と題する社説を掲載した。

 

(1)「景気悪化が続く中、来年の最低賃金10.9%追加引き上げを前に、韓国の中小企業などではリストラの嵐が本格化している。今年の79月期に中小企業などを退職した失業手当受給者はすでに49万人を上回っているが、これは1年前の同じ時期に比べて7.5%も多く、統計を取り始めてから最大の増加幅だ。人件費を減らさないと廃業するしかない企業がまずは熟練度の低い若い従業員から人員の整理を進めているからだ」

 

今年の7~9月期の失業手当受給者は、すでに49万人を上回った。前年同期比7.5%増という最大の増加幅である。企業が、最低賃金大幅引き上げに対応できず、やむなくリストラしている結果だ。若い人たちが解雇の対象である。革新を名乗る政権が、リストラを促進する経済政策を行なっている。正統な経済知識の欠如がもたらした「人災」である。

 

(2)「中小企業だけではない。LGディスプレー、大宇建設、未来アセット生命、現代カードといった大手企業も希望退職を募るやり方で人員の整理を進めている。今雇用の現場では20年前のアジア通貨危機、あるいは10年前のリーマン・ショックと同じレベルの大量失業に対する危機感が高まっている。かつて経済副首相を務めたある政治家は「今の経済危機はこれから大量失業という形で表れてくるだろう」と警告したが、これが現実となりつつあるのだ」

 

大企業まで希望退職を始めている。これから襲う不況に身構えている結果だ。「文不況」とでも名付けられよう。過去の経済危機に匹敵する危機感が高まっているという。

 

「文不況」については、私の「メルマガ5号」(11月15日発行)で特集する。

 

(3)「雇用が減少する根本的な原因は経済の低成長だ。昨年韓国の経済成長率は3%台を記録したが、今これに急ブレーキがかかり今年は2%台の真ん中か前半にまで落ち込む見通しだ。ここ1年半の間に政府が成長よりも分配、経済の活性化よりも経済の民主化に力を入れる政策を進めたことが大きく影響しており、さらに政府は大企業の収益を半強制的に中小企業に配分する法律の制定まで進めている。市場経済を採用する国では想像もできない事態だが、同じような状況は他にも次々と起こっている。労働者寄りで反企業的な政策によって企業や自営業者、さらに一般家庭の不安が高まり、影響で経済心理が萎縮し、これが大量リストラにつながる悪の循環が今目前に迫っているのだ」。

 

文大統領による「成長より公正な分配を」という主張は、誰にも快い響きだ。日本の民主党もこう言って政権の座についた。惨憺たる結果に終わったが、文政権も同じ道を歩んでいる。公正な分配を実現するには、それにふさわしい成長が前提である。その成長策とは裏腹に、反企業主義に基づき企業虐めを続けている。痩せた鶏は、大きな卵を生めないのだ。