中国が笛や太鼓で人気を煽ってきた「一帯一路」プロジェクトが、「債務漬け」によって主権さえ失いかねない実例が出るに及んで人気急落である。中国の言いなりでインフラ投資を実施すると、不採算工事が多く工事費の返済もままならなくなる。最後は、担保を取られる「高利貸し商法」の穴に落込むのだ。

 

先頃のAPEC(アジア太平洋経済協力会議)では、米国ペンス副大統領が600億ドルのインフラ投資計画を発表した。その席で、中国の「一帯一路」について「債務漬け」にして主権を奪うと強烈に批判。これが影響したのか、APEC宣言とりまとめ段階では、中国を除いたすべての国が、米国の主張に賛成する事態となった。これに不満をもった中国外交官が、パプアニューギニア外務大臣室に乱入する騒ぎを起こしたほど。こうして、APEC宣言は見送られたのである。

 

中国の「一帯一路」が馬脚を現したと言える。日米が共同で1000億ドルの資金をAPEC諸国に提供する案が提示されるほか、EU(欧州連合)も、来年春にはアジアでのインフラ投資計画を発表する。こうなると、中国の「一帯一路」の魅力は大幅にダウンする。すでに多くの国が、「一帯一路」プロジェクトの返上・縮小を申し出てきた。

 

『大紀元』(11月22日付)は、「不安と懸念、混乱を広げる中国「一帯一路」停止や見直しは300億ドルに」と題する記事を掲載した。

 

(1)「中国の経済圏構想『一帯一路』と協力関係を結んだ各国では、プロジェクトを見直す動きが活発化している。アジア、中東、アフリカに広がる複数のインフラ計画はこの数週間、関係国政府による停止や再検討が相次ぎ、総計300億ドル(約3兆4000億円)以上が頓挫している」

 

総計300億ドルのプロジェクトが撤回・縮小になった。今後も、この動きは拡大される見通しだ。日米やEUの安い金利で安心して借りられる資金の方が、「一帯一路」より魅力あるからだ。中国もとんだ「伏兵」が現れて地団駄踏んでいるであろう。「設け損ねた」と。中国の認識はこの程度のものと見られる。相手国の利益を優先するのでなく、自国利益優先が中国であるからだ。

 

(2)「米ボイス・オブ・アメリカ(VOA)の取材に答えた、北京大学深圳匯豊商学院の経済学者クリストファー・バルディン氏によると、パキスタン、マレーシア、モルディブなど、いくつかの国における一帯一路関連事業は、選挙や政権交代などにより頓挫した。『これらの国の人々は、中国融資による膨大な負債のレベルを非常に心配している。重要なことは、国内の一部の反中勢力だけが声を上げているのではなく、国全体に懸念が広がっていることだ』。中国国営新華社通信によると、一帯一路によるインフラ融資は数千億米ドルに及ぶ」

 

中国にとって、「一帯一路」は資金的に負担となっていた。「一帯一路によるインフラ融資は数千億米ドルに及ぶ」という記述の通り、この資金調達が困難になっていた。昨年、中国の対外負債は前年よりも5550億ドル増えていた。海外で借金してそれを「一帯一路」で貸し付けていたのだ。貸出金利が高くて当然。「又貸し」であるからだ。

 

対外投資の資金は、経常収支黒字で賄われるのが普通である。中国の昨年の経常黒字は1600億ドル。今年は急減して200億ドル程度の黒字へ減少し、来年は経常赤字が必至である。もはや、対外投資は不可能な事態へ落込む状況へ急変した。「一帯一路」などと言って、「旦那風」を吹かしているゆとりがなくなるのだ。ただの「貧乏国家」

へ逆戻りする。