日産自動車の西川広人社長兼最高経営責任者(CEO)は26日午前、社内向けの説明会で「ルノーとの提携関係は対等ではない」と述べ、関係を見直す意向を示したという。説明会に出席した社員が明らかにした。日本経済新聞11月26日夕刊が伝えた。

 

仏ルノーは日産に43%を出資する一方、日産からルノーへの出資比率は15%で議決権がない状態だ。これでは、日産がルノーに占領させているようなもの。日産社内の士気は上がらない。今春、ルノー技術陣が日産技術陣と顔合わせしたが、「占領軍気取り」で命令したとして、顰蹙を買ったという。技術レベルは、ルノー側が低いだけに一層の不満を招いた。

 

『ブルームバーグ』(11月23日付)は、「日産自、ルノーとの資本構成見直しも、アライアンス持続でー関係者」と題する記事を掲載した。

 

(1)「日産自動車は仏ルノーとの資本構成を再検討する可能性を示した。カルロス・ゴーン容疑者の会長職を解いた後のアライアンスのあり方を考える。事情に詳しい関係者は23日、匿名を条件にアライアンスの進め方、体制の在り方、資本構成も当然もう1回考え直すこともあると述べた。ゴーン容疑者の会長職解任を全会一致で決めた22日の取締役会ではアライアンスの重要性について再確認した。関係者は、アライアンスを持続可能にするため基本的なことからきっちり見直すと語った。その際には三菱自動車を含めた3社の理解を共有する」

 

約20年前、ルノーと日産の力関係で決められた出資比率と議決権の有無が、今なお踏襲されていることは不合理である。現在の勢力関係に見合った出資比率と議決権に訂正することが、アライアンス(ルノー・日産・三菱の連合体)を維持し発展させる前提条件だろう。

 

フランス政府は、現状維持を狙っている。日産・三菱の産み出す蜜を狙っているが、それはいつまで続くはずがない。先に、日仏の閣僚が会談して、互いにアライアンスへの介入を控えることで合意した。これは、日本が先手を打って日産主導権確立への後押しと見られる。フランス政府の介入を抑えて、企業同士の交渉になれば、力関係からみて日産に有利な条件が引き出せるという思惑かもしれない。

 

(2)「日産自の西川広人社長兼最高経営責任者(CEO)は22日、ルノーとの資本構成について『今は現状の安定化が一番』と答えていた。現在はルノーが日産自に43.4%を出資して議決権があるのに対し、日産自はルノーに15%出資するが議決権はない。日本の会社法では日産自が出資比率を25%に上げるとルノーの議決権が消滅する。また日産自が増資してもルノーの出資比率が下がり、影響力も低下する。SBI証券の遠藤功治企業調査部長は、ルノーと日産自の資本関係について『売上高も利益もルノーより大きい日産自がルノーに支配される不均衡は是正する必要がある』と述べた。同時にルノーが日産自の議決権を持たない形については『ルノー筆頭株主であるフランス政府の理解が得にくく難しいのではないか』との見方を示した」

 

日産とルノーの関係を安定させるには、現在の力関係に合わせた改訂しかない。世界2位の販売実績を持つアライアンスを崩壊させてはもったいない話である。日本に、トヨタとアライアンスの2大自動車グループが存在すれば事実上、日本が世界の自動車業界を制することになる。このチャンスを生かして、日産にアライアンスの支配権を持たせる工夫をすべきだ。