ファーウェイ副会長の逮捕で、中国政府の中は二派に分かれて「闘論」を繰り広げているという。このことからもファーウェイという企業が、中国最高指導部と密接な関係のあることを証明している。人民解放軍の別働隊というイメージが間違っていなかったのだ。

 

中国の内部問題については、私のメルマガ11号「米トランプに追い込まれた中国、習近平の座に揺らぎはないか」を読んでいただきたい。

 

『ブルームバーグ』(12月7日付)は、「中国、対米報復巡り政府内で意見が二分、華為CFO逮捕で-関係者」と題する記事を掲載した。

 

(1)「中国では華為技術(ファーウェイ・テクノロジーズ)の孟晩舟最高財務責任者(CFO)逮捕をきっかけに、米国との貿易交渉を継続するべきか、2つの問題を結びつけて報復するべきか論争が起きている。(ブルームバーグが)5つの政府機関に務める合計7人から匿名を条件に話を聞いたところ、経済重視派と国家安全保障を担当する部署との間で、意見が二分している。前者は2つの問題を切り離すべきだと考えているが、後者は米国に対してもっと強力に押し返すよう望んでいる」

 

(2)「経済重視派は、貿易協議が決裂すれば華為CFO逮捕以上の痛手を中国経済が被ると懸念する。トランプ米大統領は協議が90日以内にまとまらない場合、2000億ドル(約22兆5800億円)相当の中国からの輸入品に25%の追加関税を課す方針を示している。最悪の場合には中国からのすべての輸入品に25%の追加関税が適用される事態になりかねず、ブルームバーグ・エコノミクスの試算によると、中国の経済成長率は2019年に5%と、今年の6.6%から急減速する」

 

経済重視派と安全保障派が、ファーウェイ副会長逮捕に対して、真逆の意見を持っているという。経済重視派は、ここで米国と決裂したならば即、2000億ドルの関税が25%に引き上げられる。それを避けるため、中国は貿易交渉のテーブルについた。こういういきさつを考えれば、「決裂」などはあり得ない選択である。

 

(3)「安保問題に関わる担当者らの視点は異なる。習近平国家主席は譲歩しすぎ、弱いリーダーとの印象を与えているとの見方だ。こうした一派は、逮捕は取引材料を増やそうと米国が打ってきた一手にすぎないとし、中国は米国企業に打撃を与える措置で反撃するべきだと主張している」

 

安保派は、人民解放軍である。彼らにとって、ファーウェイは「親戚同様」の関係である。ファーウェイ製品に秘かに仕組まれている「バックドア」が、ユーザー情報を北京へ集めている。その貴重な情報収集先が「一大事」である以上、米国へ一太刀浴びせろという直情径行論である。これは、軍人特有の短絡論である。まさか、習近平氏がこの安保派に取り込まれることはないだろう。ただ、習氏は根っからの民族主義者である。「中華再興」などと言っている御仁だ。安保派に鞍替えする懸念はゼロと言わないまでも、劉鶴副首相の尽力に期待するほかない。

 

(4)「少なくも公には2つの問題を切り離すのが、当面中国が取る姿勢だ。中国外務省の耿爽報道官は7日、米企業に対して中国が報復措置を打ち出すとの臆測を打ち消し、『中国は国内の外国人の法的権利と利益を常に保護する』と述べた」

 

中国が仮に、米国企業に報復する事態になったら、躊躇なく「中国締め出し」に動き出すべきだろう。こういう事態になれば、中国はWTO(世界貿易機関)の規則改定作業で不利な立場に立たされる。

 

メルマガ8号 「日本に背を向ける韓国、来たるべき経済危機をどう克服するのか?」が、『マネーボイス』で紹介

まぐまぐの『マネーボイス』で抜粋が紹介されています。どうぞお読みくださるようお願い申し上げます。

https://www.mag2.com/p/money/590125

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