11月の輸出高の伸び率は急速に鈍化した。これまで、私は機会あるごとに中国の経常収支の赤字懸念問題を取り上げてきた。その危険性が、一段と迫っているように思える。

 

1~9月までの経常収支は、128億ドルの赤字である。この赤字分を10~12月の3ヶ月で埋めて、2018年の通年でどれだけの経常黒字を計上できるのか。あるいは、経常赤字のままなのか、瀬戸際にきている。この問題は、人民元相場動向を左右する重要な要素である。単なる数字遊びではない。先ず、この点を認識していただきたい。今後の米中貿易戦争の行方にも大きな影響を与えるはずだ。

 

1~11月の貿易黒字は、2996億ドルである。ここから2018年の貿易黒字を推測すると、3268億ドルである。前年実績は、4195億ドルである。今年は、昨年よりも貿易黒字が927億ドルも減る計算である。これだけ、貿易黒字が減った場合、経常収支にどのような影響を与えるか。

 

経常収支の計算では、①貿易収支、②所得収支、③サービス収支の3つが主として影響を与える。中国の場合、②と③が大赤字である。②では、中国へ進出している外資系企業が利益を上げて本国へ送金したり、特許料の支払いも嵩んでいる。③では、中国人の外国旅行が盛んで「爆買い」でカネを使っている。

 

要するに、相当な貿易黒字を稼ぎ出さない限り、②と③の大赤字を消せない宿命を負っている。こうなると、貿易黒字の減少が経常収支に大きな蔭を落とす構造になっている。ところが、今年の貿易黒字は927億ドルも減るというのが、私の試算である。仮に、②と③に増減がなく昨年並とすれば、経常収支は1~9月の経常赤字128億ドルを消して、若干の経常黒字を出す可能性もある。だが、②と③で赤字が膨らめば、通年の経常収支は赤字転落になりかねない。極めて、微妙な局面に来ている。来年は確実に経常赤字転落である。

 

世界のGDP2位の中国が、経常赤字になった場合、世界経済に与える衝撃を考えておくべきだ。しかもなお、貿易戦争の渦中にあるとすれば、「中国敗北」は決定的である。中国経済「不敗神話」を信じている向きがあるとすれば、早急に「改宗」を勧めたいと思う。

 

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