12月も半ばを過ぎると、来年の経済動向が話題に上がってくる。米国も同じだ。『ウォール・ストリート・ジャーナル』が専門家60人にアンケート調査した。それによると、「米中経済摩擦」が最大の問題と指摘された。だが、肝心の米国経済のピークは2020年と予測している。

 

この二つの結果から浮き上がる点は、中国経済の動向が米国経済に目立った影響を与えないまでも、中国自体にとっては大きな動揺が起こるだろうという結論になりそうだ。

 

中国の金融システムが揺らいでいることは、もはや疑いない事実である。ここで、米国が第3弾の2000億ドル関税25%をかけたら、確実に中国の金融システムは破綻するであろう。破綻した場合、世界のサプライチェーンが複雑に入り組んでいるので、影響する先は極めて大きくなる。こうなると、米国経済にも影響が及ぶ。

 

米国のエコノミストが、来年の米国経済における問題点として、中国を注目する理由がこれである。米国にとって、米中貿易戦争はメドがついた形になった。ちょうど、太平洋戦争で硫黄島が米軍の手に落ち、米軍による本土空襲が可能になった時点で、「日本敗戦」が予見された。米中貿易戦争は、「休戦」が成立した時点で「中国敗北」を中国が認めたようなものである。

 

中国経済が、米国の関税制裁によって徹底的に破壊される局面になると、これはまた米国の望むところではない。米国にとって最も好都合な「勝ち方」は、世界経済を揺るがすような形になる「中国敗北」でない。つまり、100%の勝利でなくてよい。60%以上の勝利を収めれば良い。経済成長率で言えば、一挙に5%割れよりも6%割れ程度に追い込めばそれで十分とするものだ。こう見ると、中国経済は米国の「管理下」に入ったとも言える。

 

不動産バブルに伴う過剰債務と米中貿易戦争の渦が、奇しくも同時期に重なり合っている。これが、破壊力を増幅させる。中国と言うよりも、習近平氏は自らの権力基盤を固めるべく不動産バブルを利用した点で深い罪を負っている。彼が、こうした政治的な色気を出さず、2期10年の国家主席の任期に満足すべきであった。だが、側近の民族主義者にけしかけられて「永久国家主席」という野望を持っに至った。中国経済瓦解の種は、ここから始ったのだ。すべての責任は習近平氏にある。

 

『ウォール・ストリート・ジャーナル』(12月14日付)は、「来年の米経済、米中通商紛争が最大の脅威にーWSJ調査」と題する記事を掲載した。

 

(1)「ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が実施したエコノミスト調査によると、2019年の米経済で最大のリスクとなるのは、米中通商紛争と見方が最も多かった。調査によると、エコノミストの約半数に上る47.3%が米中通商摩擦を最大のリスクと回答。約20%は金融市場の混乱、12.7%は設備投資の減速を挙げた。ドナルド・トランプ米大統領は米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げが、米経済の最大の脅威と述べているが、利上げを最大のリスクとしたのは7.3%にとどまった」

 

約半数のエコノミストは、米中通商紛争が来年の最大のリスクと見ている。米国の対中輸入品への関税引き上げが物価に影響を与えるからだろう。ただ、中国が米国の要求を全て飲めば、3月から正常化への期待もないではない。ただ、その間に、中国の信用機構に重大なひび割れが起こり、経済が混乱して世界貿易に影響を与える事態が発生すれば、別問題になる。

 

(2)「この他、連邦政府の過剰歳出など他のリスクを挙げる回答もいくつかあった。9%程度が最大の脅威は、世界経済減速と答えた。またエコノミストの半分以上が、米経済は2020年にリセッション(景気後退)入りするとの見方を示した。約25%が2021年、10%は来年の景気後退入りを予想した」

 

米国のリセッション入りは、2020年と見るのが多数説である。そのカギは、設備投資の継続性にある。つまり、先行きの見通しが明るいかいなかにかかってくる。

 

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まぐまぐの『マネーボイス』で抜粋が紹介されています。どうぞお読みくださるようお願い申し上げます。

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