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今朝、下記の目次で発行(有料)しました。よろしくお願い申し上げます。

 

潜在成長率を下回るGDP

労組と市民団体は「紅衛兵」

内需不振で息切れ脆弱経済

文氏の関心は8割が北朝鮮

支持率は株価に連動し下落

 

文在寅(ムン・ジェイン)大統領は、12月11日の国務会議(閣議)で初めて、「雇用と民生指標で困難に直面している」と述べました。その後、雇用労働部(日本の厚生労働省)を訪問し、「雇用問題については、今まで成功していないというのが冷静な評価である」と真情を吐露したそうです。

 

文大統領が、このように最低賃金の大幅引上について、否定的な評価をしたのは雇用危機が表面化してから9カ月目のことです。これまでは、一貫して「最低賃金の大幅引上は成功している」と主張し続けてきたのです。

 

2月の就業者数減少(前年同月比)が発表されたのは3月です。最低賃金を16.4%引上げた1月の翌月には、早くも就業者数の減少に見舞われ、現在までその基調が続いています。誰が見ても、この原因は最低賃金の大幅引上にあります。文政権は、どうしてもこれを認めなかったのです。

 

潜在成長率を下回るGDP

韓国経済は、4~6月期と7~9月期に、年率2.4%台の実質成長率でした。潜在成長率は2.8%程度と見られています。理想的な経済政策は、潜在成長率に見合った実質成長率を実現させることです。韓国政府は、これを放置してきました。現在、失業者が増え失業率が高まって、内需は不振を極めています。

 

潜在成長率とは、労働力や製造設備をフルに活用し、実現できる経済成長率です。韓国経済の現状は、この潜在成長率に届いていません。この差は0.4%ポイントもあり、しわ寄せは高い失業率と製造設備の低稼働率に表れています。人的資源と物的設備が遊休化しているのです。

 

文政権は、「雇用政権」というふれこみで登場しました。失業者を減らし所得を引き上げる政策を一枚看板に上げたのです。その象徴として、「最低賃金の大幅引上」を高く掲げました。この政策のどこが間違ったでしょうか。それは、生産性の上昇を無視して、最低賃金だけを大幅に引き上げる、そのアンバランスにあります。最賃を大幅に引き上げるならば、それに見合った生産性引上げが必要です。この因果関係を無視し、現在の苦境に落込みました。

 

生産性と賃金のアンバランスのもたらす危険性は、内外で指摘され続けました。私も及ばずながら、ブログを通じて指摘してきました。文政権はなぜ、こういう声に耳を貸さなかったのか。そこが最大の問題です。文政権誕生の裏に、次のような事情が働いたからです。

 

労組と市民団体は「紅衛兵」

文在寅政権は、労働組合と市民団体が主要支持基盤です。一昨年12月から始った朴槿惠(パク・クネ)政権弾劾の「ロウソク・デモ」を組織したのは労組と市民団体です。朴槿惠政権は、この「ロウソク・デモ」によって倒れたのも同然でした。この結果、生まれたのが現政権であり、主導権は労組と市民団体が握ったことは間違いありません。

 

文政権は、今年の最低賃金を16.4%引き上げました。これが、韓国経済にどのような混乱をもたらすか、想像もできないほど経済政策に不案内な政権でした。さらに、2019年は10.9%の最低賃金引き上げを決定しています。あと2週間で新年を迎えます。最賃の変更について何らの動きもありません。

 

予定通り最低賃金を引き上げれば、混乱はさらに拡大するでしょう。今なお、政府が重い腰を上げないのは、労組と市民団体の目が光っており、彼らの反対の嵐を想像して、二の足を踏んでいるのでしょう。

 

ここに、労働組合と市民団体は、中国の文化大革命(1966~77年)で猛威を振るった「紅衛兵」という論調もあります。韓国の労組と市民団体はなぜ、「紅衛兵」に喩えられるのか。それは、2期10年間続いた保守党政権を打倒するために、あの寒い冬空の下で「ロウソク・デモ」を組織して朴槿惠政権を弾劾。文在寅政権を樹立させた最大の功労者であるからです。

 

韓国の「紅衛兵」は、こうやって獲得した政権ですので、彼らが長く抱いてきた要求を一挙に実現させるべく動きました。(つづく)