文大統領の最新の世論調査では、支持率は45%、不支持率44%とほぼ並んだ。これに危機感を募らせるのは文政権だけでない。文氏を支持するメディアも危機感をあらわにしている。これまでの文氏は、腰が低いことで人気を得てきた。だが、先のG20サミットの帰途、機内での記者懇談会で「経済問題は答えない」と煙幕を張って、保守派メディアから一斉に批判の声が上がった。

 

この情景に対して、革新派メディアは顔を曇らせている。あの腰の低い文氏がどうしたのだ、という戸惑いである。そこで、「大統領の声を聞きたい」という記事になった。

 

『ハンギョレ』(12月12日付)は、「大統領の率直な声を聞きたい」というコラムを掲載した。筆者は、同紙のパク・チャンス論説委員室長である。

 

(1)「しばらく前に文在寅大統領の国外歴訪中、大統領専用機内で記者懇談会を開いたのが論議になった。 歴訪中だから外交事案の質問だけ受けるとしたのだが、保守メディアは『不都合で不快な質問を封じ込める一方通行』『疎通でなく不通』と非難した。 国民との疎通が必ずしも記者会見である必要はない。 しかも日増しにマスコミの地位と影響力は落ちている。記者会見にしろラジオ演説にしろ、または『国民との対話』にしろ、重要なのは国民が核心懸案を直接尋ねて大統領の返答を聞くことだ。 大統領府広報首席や広報官を通して、または視覚的なデジタル資料で伝える大統領の『お言』は、干からびた花と同じでいくら整えて美しく飾っても感動を呼び起こしにくい」

 

文大統領の支持率低下は、記者懇談会で記者の質問を経済問題以外にしたことが原因ではない。失業率上昇を解決出来ない執政能力に疑問符がついているからだ。こういう本質論をズバリ衝く記事を書くことが求められている。

 

(2)「文大統領は今年5月「就任1年の記者会見」をしなかった。 4月に劇的に板門店(パンムンジョム)南北首脳会談を行ない、6月には朝米首脳会談を控えて朝鮮半島情勢が薄氷を踏むような時期だったので、記者会見がないのを誰も意に介さなかった。 だが、今は違う。 支持率は50%の線を行き来して、今後経済状況はどうなるのか多くの人が心配している。 ろうそくの広場に共に立っていた勢力は分化し、ろうそくの精神に逆らう反動の動きは明確になりつつある。 このような時期に、働き口が増えなくて失望している若者に、ろうそく集会で提起された社会変化の要求を今どのように実現しつつあるのか尋ねる会社員に、大統領府がスタート初期の緊張と初心を大事に保っているのかと鋭利なまなざしを送る人々に、大統領はどんな話をするだろうか。 今、大統領の声を直接聞きたいと思うのはそのような理由からだ」

 

国民が不安であるのは、最低賃金の大幅引上を行い、自営業者の経営が著しく困難になっていること。それがまた、若者の失業率が跳ね上がらせていること。こういう点について、問題の本質を捉えず、「所得主導成長論」などの空想経済論を大真面目に語ってきた、その欺瞞性に失望しているにちがいない。空虚な言葉を聞くことよりも、最低賃金の大幅引上を撤回することが問われている。

 

「進歩派メディア」と言っても、この程度のことしか書けないことが、さらに失望感を高めている。文氏の支持率低下は、文氏を支持してきたメディアの信頼感低下を招いているはずだ。新聞発行部数にも影響が出ているであろう。